衛生動物(05a)節足動物 昆虫綱 双翅目
(c)2011, Lab. Sci. Rural Life, Kobe, Japan. (田園科学室)
Ref. 810810 イヨシロオビアブ |
イヨシロオビアブ 【アブ科Tabanidae】 |
Hirosia iyoensis |
(双翅目Diptera、昆虫綱 Insecta、節足動物門Arthropoda) |
(c)2011, ABA, Lab. Sci. Rural Life, Kobe, Japan. (田園科学室) |
![]() 図1:イヨシロオビアブ(吸血中)。1981年8月10日 富山県、福光町。 |
![]() 図2:イヨシロオビアブ(吸血痕)。 同左。 |
イヨシロオビアブ、多数が激しく吸血 (10 August 1981. Revised on 3 February 2011. ABA, Lab. Sci. Rural Life, Kobe, Japan.) |
|
イヨシロオビアブは、日本産アブの中で、1、2位を争うほど激しい吸血行動を示す。北陸、東北、北海道の豪雪の山地へ、お盆の前後(8月中旬)に迷い込むと大変な吸血被害にあう。 活動は、朝夕の薄明時に最も盛んであるが、日中でも木陰や渓流では激しく人や動物を襲う。 多数のアブ、少なくとも数十匹のアブが一気に集まって来る。肌露出部はもちろん、頭髪や衣服の隙間に潜り込み、また薄手の衣服ならその上からでも、素早く一斉に吸血を始める。 試みにイヌを連れて行ったが、たちまち狂乱状態になった。 アブは吸血のとき、蚊のように、針を刺込んで吸うのではない。アブの口器は、一般に、(1)皮膚を切る道具と、(2)舐めて吸う道具の2つで構成されている。 刺咬の際は酷く痛い。吸血量も蚊の比ではない。 このアブの幼虫は、森林の落ち葉の下や腐葉土層にいて、昆虫やミミズの類などの生物を捕食しながら育つ。2年で成虫になり、交尾。1回目は無吸血で産卵、2回目の産卵に備えて卵形成の栄養を得ようとヒト・クマ・ウサギ等の哺乳動物を激しく襲い吸血する。 幸い、寄生虫や病原菌の伝播には関わっていないと思われる。 |
|
Ref. 080904 シナハマダラカ |
シナハマダラカ 【カ科Culicidae】 |
Anopheles sinensis |
(双翅目Diptera、昆虫綱 Insecta、節足動物門Arthropoda) |
(c)2011, ABA, Lab. Sci. Rural Life, Kobe, Japan. (田園科学室) |
![]() 図1:シナハマダラカ。2008年9月4日、神戸市西区。 |
シナハマダラカ、マラリアの媒介蚊 (4 September 2008. Revised on 3 February 2011. ABA, Lab. Sci. Rural Life, Kobe, Japan. |
シナハマダラカは、夏から初秋にかけて、日本の多くの水田で発生するありふれた蚊である。壁等に静止する時、吸血の時、いずれも尾部を高く持ち上げた姿勢を保つ。 現在は刺咬症(虫刺され)をおこすだけだが、原虫性の熱病「マラリア」の媒介蚊として有名。実際、過去に日本で、三日熱マラリアを媒介していた。将来、地球環境の変化などで日本にマラリアが流行することになれば、この蚊が再び媒介の主役になるのは疑いない。 マラリアのほか象皮病などをおこす線虫の1種「バンクロフト糸状虫」の媒介蚊としても知られる。 幼虫(ボウフラ)は、水田のような広水面の水に棲息。狭い水面やドブには棲息しない。 イエカ(族)、ヤブカ(族)の幼虫が尾端の呼吸管(サイフォン)の末端を水面に出して倒立姿勢で呼吸するのに対し、本種などハマダラカ(族)の蚊は水面に平行(水平)の姿勢で浮かび背面の呼吸管で呼吸する。 日本の稲作では、水田の水を盛夏(7月下旬、土用のころ)にすべて落として地面をひび割れるまで干す「中干し(土用干し)」が行われていて、これが本種の爆発的増加の抑制に貢献しているようだ。 |
Ref. 0908331 アカイエカ |
アカイエカ 【カ科Culicidae】 |
Culex pipiens pallens |
(双翅目Diptera、昆虫綱 Insecta、節足動物門Arthropoda) |
(c)2011, ABA, Lab. Sci. Rural Life, Kobe, Japan. (田園科学室) |
![]() 図1:アカイエカ(吸血中)。2009年8月31日、神戸市西区。 |
アカイエカ、糸状虫の媒介蚊 (31 August 2009. Revised on 3 February 2011. ABA, Lab. Sci. Rural Life, Kobe, Japan. |
アカイエカは刺咬症(虫刺され)のほか、寄生虫性疾患やウイルス性疾患に関係している。夜間や薄明時に活動性が高いが、建物内等暗所では日中でも吸血に来る。 生活排水が交じる水(ドブ)が主な発生源。静止時、吸血時ともに体をほぼ水平か尾部をやや下げた姿勢に保ち、ハマダラカのように尾部を高々と上げることはない。 寄生性線虫の1種イヌ糸状虫(通称犬フィラリア)の雌雄成虫は犬の心臓付近の血管に寄生している。成虫が産んだミクロフイラリアとよばれる微小な幼虫は末梢血に現れ、吸血によって蚊の体内へ移行、体内で一定の成長を経てほかの犬への感染機会を待つ。 幼虫保有蚊が、犬でなくヒトを刺した場合、ヒト体内で幼虫が成虫になることはないが、幼虫が肺の血管に梗塞をおこしたり、ほかの組織・臓器に移行したりする。 犬のイヌ糸状虫保有率は高く、30%前後ともいわれ、犬の主要死亡原因の1つになっている。防蚊対策や犬へのフィラリア予防薬の投与を行って、犬やヒトへの感染を防ぎたい。 ウイルス性疾患、日本脳炎を媒介することもあるが、その主要な媒介蚊はコガタアカイエカである。 |
Ref. 090520オオクロヤブカ |
オオクロヤブカ 【カ科Culicidae】 |
Aedes subalbatus |
(双翅目Diptera、昆虫綱 Insecta、節足動物門Arthropoda) |
(c)2011, ABA, Lab. Sci. Rural Life, Kobe, Japan. (田園科学室) |
![]() 図1:オオクロヤブカ(静止)。2009年5月20日、神戸市西区。 |
オオクロヤブカ、大型の吸血蚊 (20 May 2009. Revised on 3 February 2011. ABA, Lab. Sci. Rural Life, Kobe, Japan. |
ヒトに対して、オオクロヤブカは刺咬症(虫刺され)以上の害はおこさないが、蚊の巨大さに恐怖を感じるヒト少なくない。 主に、汲み取り式の便池、ヒト屋や家畜の糞尿が交じる水に発生する。特に、キャンプ場の便所などにはしばしいば発生、そのような便所で用便中に見たり刺されたりすることが多い。 「此処の蚊は大きい」「今年の蚊は大きい」「巨大蚊を見た、温暖化のせいかも知れない」などの話は、多くの場合、この蚊を見た印象が元になっていると思う。 |
Ref. 080831 ヒトスジシマカ |
ヒトスジシマカ 【カ科Culicidae】 |
Aedes albopictus |
(双翅目Diptera、昆虫綱 Insecta、節足動物門Arthropoda) |
(c)2011, ABA, Lab. Sci. Rural Life, Kobe, Japan. (田園科学室) |
![]() 図1:ヒトスジシマカ(吸血中)。2008年8月31日、神戸市西区。 |
ヒトスジシマカ、デング熱やイヌ糸状虫を媒介 (31 August 2009. Revised on 3 February 2011. ABA, Lab. Sci. Rural Life, Kobe, Japan.) |
ヒトスジシマカは、胸背中央に1本の明瞭な白線、その後方にM字形の白紋がある。脚や腹に白帯や白紋があり、肌上で叩き潰すと白黒の鱗粉が鮮やかに転写される。 ヒトのウイルス性の疾患「デング熱」の媒介蚊として有名。また、アカイエカ、トウゴウヤブカ、などとともにイヌ糸状虫の媒介蚊としても知られる(アカイエカの項参照)。 狭水域に好んで発生する。空き缶、竹の切り株、墓の花筒、野積みの古タイヤ、庭や寺社の手洗い水、ごみ捨て場のゴミや地面の水たまりなどは絶好の発生源。 現在、生活排水の流れ込むドブが少なくなって、それを好むアカイエカが減少傾向にあるが、ゴミの不法投棄や野積みが増えて本種は減少どころか増加が疑われる地域もある。 |
Ref. 801122 ツェツェバエ |
ツェツェバエ sp. 【イエバエ科Muscidae】 |
Glossina sp. |
(双翅目Diptera、昆虫綱 Insecta、節足動物門Arthropoda) |
(c)2011, ABA, Lab. Sci. Rural Life, Kobe, Japan. (田園科学室) |
![]() 図1:ツェツェバエ。1980年11月22日、ナイジェリア、オヨ州。。 |
ツェツェバエ、アフリカ睡眠病を媒介 (22 November 1080. Revised on 4 February 2011.ABA, Lab. Sci. Rural Life, Kobe, Japan. ) |
アフリカ睡眠病は原虫性疾患で鞭毛虫類のガンビア・トリパノソーマによるものとローデシア・トリパノソーマによるものの2種類がある。 図1のツェツェバエは、未同定であるが、ガンビア・トリパノソーマが分布する西アフリカ赤道沿いの国、ナイジェリアで採集したもの。 熱帯雨林帯の高速道路脇の湿地帯に立った際、音もなく飛来、周回後、足の背側にとまって吸血した。 ツェツェバエGlossina属には20種ほどの種類が知られるが、ガンビア・トリパノソーマの媒介には主としてG. palpalisが関係しているという。 |