衛生動物(02a)軟体動物門
(c)2011, Lab. Sci. Rural Life, Kobe, Japan. (田園科学室)
Ref. 100416 ホタルイカ |
ホタルイカ 【ホタルイカモドキ科 Enoploteuthidae】 |
Watasenia scintillans (Berry, 1911) |
(スルメイカ亜目Oegospida, ツツイカ目Teuthida, 頭足綱 Cephalopoda, 軟体動物門 Mollusca) |
(c)2010, Lab. Sci. Rural Life, Kobe, Japan. (田園科学室) |
図1:ホタルイカ(市販、生)。2010年4月16日、神戸市西区の店舗で購入。 なお、この店舗の品から線虫は検出されなかった。 |
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ホタルイカ、旋尾線虫の中間宿主 (16 April 2010. ABA, Lab. Sci. Rural Life, Kobe, Japan.) |
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ホタルイカは、従来ボイル品がほとんどであったが、ここ数年、生が神戸でも普通に店頭で購入できるようになった。この傾向は全国的なもので、ホタルイカ生食の機会は飛躍的に増えたはず。 富山湾での漁獲が有名。夕刻に手網を携えイカを掬いに行く家族で漁港の波止が賑わうこともしばしば、という。しかし実は兵庫県が水揚げ日本一。 このイカが美味なことは有名。しかし、このイカは旋尾線虫(Type10)の中間宿主。ヒトが偶然幼虫を保有する個体を摂食した場合、幼虫が皮下を移動して皮膚爬行症を、また腸に寄生して嘔吐・腹痛、を招くことが知られる。 生食する場合、内蔵を除いてよく水洗。完全を期すなら、数日冷凍後解凍して調理。もちろん、幼虫は加熱調理で簡単に死滅する。 なお、旋尾線虫の生活史(発育や生活の全過程)は未だわかっていない。 |
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Ref. 100325 スルメイカ |
スルメイカ 【アカイカ科 Ommastrephidae】 |
Todarodes pacificus (Steenstrup, 1880) |
(スルメイカ亜目Oegospida, ツツイカ目Teuthida, 頭足綱 Cephalopoda, 軟体動物門 Mollusca) |
(c)2010, Lab. Sci. Rural Life, Kobe, Japan. (田園科学室) |
図1:スルメイカ(市販、生)。2010年3月25日、山口県産。注:寄生虫は検出されませんでした。 |
スルメイカ、アニサキスの待機宿主 (25 March 2010. ABA. Lab. Sci. Rural Life, Kobe, Japan.) |
図1のスルメイカの包装ラベルに以下の記述があった。 「寄生虫がついている場合があります。加熱調理すれば問題がありませんが、生食調理の場合はとり除いて下さい」…と。良心的で、歓迎すべき表示。 スルメイカは、多数あるアニサキスの中間宿主の一つ。アニサキスはアニサキス症をおこすAnisakis属やPseudoterranova属(ともにアニサキス亜科)線虫の総称。成虫は海産哺乳類(イルカ、クジラ)の胃に寄生、即ちそれらが終宿主。 スルメイカからは検出される幼虫は、Anisakis physeteris の場合が多いという。 終宿主の糞便とともに排出された虫卵は、海中で第2期幼虫が孵化、中間宿主であるオキアミ等に摂り込まれ、感染型の第3期幼虫に成長、終宿主に摂り込まれるのを待つ。 オキアミが魚やイカに捕食された場合、また魚が魚やイカに捕食された場合、幼虫が新しい宿主の体内で次の段階へ成長することはない。即ち、感染型の第3期幼虫のまま経過する。 したがって、魚やイカはオキアミ同様にアニサキスの「中間宿主」であるが、ほとんどの場合「延長中間宿主」または「待機宿主」に位置付けられる。 |
Ref. 050619 マダコ |
マダコ 【マダコ科 Octopodidae】 |
Octopus vulgaris |
(マダコ亜目Incirrina, 八腕目Octopoda, 頭足綱 Cephalopoda, 軟体動物門 Mollusca) |
(c)2011, Lab. Sci. Rural Life, Kobe, Japan. (田園科学室) |
図1:マダコ。2005年6月19日、仮屋 (淡路、兵庫県) |
図2:マダコ。8本の腕の中央に 口がある。 |
マダコ (19 June 2005. Revised on 26 January 2011. ABA, Lab. Sci. Rural Life, Kobe, Japan.) |
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マダコは、食用に最も賞用されるタコ。釣りや捕獲は、地元漁師さんたちの許可か了解が必要。 足は通称で、学術上は腕、腕は頭上にある。膨らんでいる部分は頭でなく胴。8本の腕中央に口があり、内部に鋭い口器、通称「カラス・トンビ」がある。 生きたタコを取り扱い中、また弄んでいると、咬みつくことがある。瞬時の痛みはかなり強い。過去に体験した限りでは、その痛み以上の被害はなかった。 文献的には、後部唾液腺には毒成分が検出され、傷が腫れたり熱を持ったりすることがあるという。もちろん、食用にする上での問題は全くないので誤解なく。 |
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Ref. 100403 カワニナ |
カワニナ 【カワニナ科Pleuroceridae】 |
Semisulcospira libertina (Gould, 1859) |
( 前鰓目Prosobranchiata, 腹足綱 Gastropoda, 軟体動物門 Mollusca) |
(c)2010, Lab. Sci. Rural Life, Kobe, Japan. (田園科学室) |
図1:カワニナ。神戸市西区、明石川支流、栄谷川、2010年4月3日。 |
カワニナ、多くの複世代吸虫の第1中間宿主 (3 April 2010. ABA,Lab. Sci. Rural Life, Kobe, Japan. ) |
カワニナは、横川吸虫、ウエステルマン肺吸虫など多くの複世代吸虫の第1中間宿主として知られる。また、ゲンジボタルの幼虫に捕食されることでも有名。 本来は、適度に綺麗で適度に汚れている水域、おおむね河川中流域に多産する。しかし、農薬散布や市街化による汚染・汚濁・容赦のない護岸工事などで本来の棲息域に姿が見えず、代わって上流・支流・細流に辛うじて見られるような危機的状態の河川も数多い。 昔、「カワニナを食べると寄生虫が付いているので危ない」という話が世間に広まっていて、年寄りから伝え聞いた若い人にその正誤を訊かれることがある。 上記吸虫は第2中間宿主の魚やカニ体内で感染型(メタセルカリア)に成長しない限りヒトに感染できないので、その話は誤りである。 |
Ref. 110123 ミヤイリガイ |
ミヤイリガイ 【イツマデガイ科】 |
Oncomelania hupensis nosophora |
(前鰓目Prosobranchiata, 腹足綱 Gastropoda, 軟体動物門 Mollusca) |
(c)2011, Lab. Sci. Rural Life, Kobe, Japan. (田園科学室) |
図1:ミヤイリガイ(1年以上の古い貝)。1990年3月30日付、 「筑後川流域の日本住血吸虫病安全宣言記念」として製作さ れた標本(久留米大学医学部寄生虫学講座製作) |
ミヤイリガイ、日本住血吸虫の中間宿主 (23 January 2011. ABA, Lab. Sci. Rural Life, Kobe, Japan. ) |
ミヤイリガイは、湿地の泥を棲息場所とする殻高8oほどの小形の淡水産巻貝。 日本住血吸虫の中間宿主として知られる。即ち、貝から水中へ遊出した吸虫の幼虫「セルカリア」がヒトなどの哺乳動物へ経皮感染する。 住血吸虫症を無くするために、さまざまな努力が為されたが、灌漑用水のコンクリート化などの農業インフラの改良、住血吸虫症撲滅の医学的・公衆衛生的取り組みなどが奏功して日本国内の日本住血吸虫症はほぼ無くなった。 九州の筑後川流域についても1990年3月30日に「日本住血吸虫病安全宣言」がなされ、久留米大学のご厚意で図1の標本に接する機会を得た。 なお、国外(中国、フィリピン、インドネシア)には依然多数の患者がいる、とされる。 |
Ref. 120122 バイ(外国産、インド洋?) |
バイ(外国産、インド洋?) 【バイ科Babyloniidae】 |
Babylonia sp. |
(吸腔目Sorbeoconcha, 腹足綱 Gastropoda, 軟体動物門 Mollusca) |
(c)2012, Lab. Sci. Rural Life, Kobe, Japan. (田園科学室) |
図1:バイ(外国種、インド洋?)。2012年1月22日、仕出し弁当に入っていた2個体。 |
日本の海にバイは普通に生息、釣りの外道で釣鈎にかかることは珍しくなかった。1970年代に、太平洋岸の鹿島港付近、日本海側の上越〜富山付近の漁港周辺ではしばしば掛かった記憶がある。 しかし、それは過去のこと。激減して、今や国産のものは高級食材になり、現在仕出し料理や弁当に使われているバイはほぼ例外なく海外産で、近年はインド洋産が多いという。 文献的には、我が国太平洋側の一部地域でネオスルガトキシンによる食中毒、日本海側の一部地域でテトロドトキシンによる中毒のあったことが知られている。 なお、弁当等の輸入貝による中毒は、その例を知らない。 |
Ref. 120129 アフリカマイマイ(日本) |
アフリカマイマイ(日本) 【アフリカマイマイ科Achatinidae】 |
Achatina fulica |
(柄眼亜目Stylommatophora, 有肺目Pulmonata, 腹足綱 Gastropoda, 軟体動物門 Mollusca) |
(c)2012, Lab. Sci. Rural Life, Kobe, Japan. (田園科学室) |
図1:アフリカマイマイ(日本)、東アフリカ原産のAchatina fulica。 2011年8月23日、T. Sasai氏採集。田園科学室に恵与いただいた標本。 |
アフリカマイマイ(日本)、広東住血線虫の中間宿主 (Written on January 29, 2012. (c)2012, ABA, Lab. Sci. Rural Life, Kobe, Japan. ) |
大型の陸産巻貝(マイマイ、カタツムリ)。日本では、沖縄、奄美、小笠原に棲む。 植物、腐植、ときに腐肉を食べる。農作物に大害をおよぼすため、植物防疫法で地域外への移動が禁止されている。 広東住血線虫の中間宿主。筋肉中に感染型幼虫が寄生、これがヒトに経口感染して広東住血線虫症(好酸球性髄膜脳炎)をおこす。 経口感染を避けるため、以下に注意する。 (1)生食 (2)貝の調理・破損により汚染された食べ物 (3)貝の死骸等で汚染された野菜 なお外来生物法(通称)にいう「注意が要る外来生物」に準じる種の1つとされるが、その理由は農業・環境への影響であって寄生虫の存在が理由ではない。 東アフリア原産。元来、食用として養殖のため持ち込まれたが、現在は食用にする習慣は失われている。 |
Ref. 120129 アフリカマイマイ(アフリカ) |
アフリカマイマイ(アフリカ) 【アフリカマイマイ科Achatinidae】 |
Achatinidae g. sp. |
(柄眼亜目Stylommatophora, 有肺目Pulmonata, 腹足綱 Gastropoda, 軟体動物門 Mollusca) |
(c)2012, Lab. Sci. Rural Life, Kobe, Japan. (田園科学室) |
図1:アフリカマイマイ(アフリカ)。販売風景、ナイジェリアの露店、1982年。 |
アフリカマイマイ(アフリカ)、試食 (Written on January 29, 2012. (c)2012, ABA, Lab. Sci. Rural Life, Kobe, Japan. ) |
ナイジェリア(西アフリカ)の露店でアフリカマイマイをみつけたので、買って調理してみた。 日本(沖縄)のアフリカマイマイAchatina fulica は東アフリカ原産の種で、「食用として移入・養殖」され後に野生化したもの。しかし、戦争とその前後の食糧難の時代はともかく、食用としての地位を確立できなかった。 その理由は、「不味」と想像されるが、沖縄ではその筋肉中に高率に、かつ多数の、広東住血線虫の感染型幼虫が見出されることを実際に調べて知っていたため、怖くて「不味」を確認する勇気はなかった。 しかし、実際に食品として普通に売られている場面に遭遇すれば、調理・味見して、「食品になりえなかった理由を知りたい」という衝動を抑えることができなかった。 結果は、塩茹で、極めて不味。湯通し後のシチュウ、これも不味。やや泥臭い。台所で十分な調理器具とスパイス・調味料を与えられればともかく、もう一度調理したい・食べたいと思わせる要素は1つもなかった。 なお、アフリカには日本に移入された東アフリカの種Achatina fulicaのほかに、西アフリカの種Achatina achatina、とArchachatina marginanata が知られるが、形態を精査しなかったので、ここでは種名を後2者のどちらだったか、結論を保留、種名をAchatinidae g. sp.と記すにとどめる。 |
Ref. 080329 チャコウラナメクジ |
チャコウラナメクジ |
Limax marginatus |
(柄眼亜目Stylommatophora, 有肺目Pulmonata, 腹足綱 Gastropoda, 軟体動物門 Mollusca) |
(c)2011, Lab. Sci. Rural Life, Kobe, Japan. (田園科学室) |
図1:チャコウラナメクジ。2008年3月29日、神戸市西区。 |
チャコウラナメクジ、広東住血線虫の中間宿主 (29 March 2008. Revised on 26 January 2011. ABA, Lab. Sci. Rural Life, Kobe, Japan. ) |
広東住血線虫の中間宿主としてはアフリカマイマイが最重要種であるが、分布は奄美・沖縄・小笠原などに限られる。本州においては、本種チャコウラナメクジが重要。 広東住血線虫の幼虫は、筋肉中にトグロを巻いた形で寄生している。この幼虫がヒトに入ると好酸球性髄膜脳炎に至ることがある。 兵庫県下で、調査のために本種を採集して回っていた時、播州のある町で、喉の薬として生きたまま飲むという人に出会った。話には聞いていたが、これには驚いた。 感染防止のため、生食はもちろん、素手で弄んだり、潰したりするのは避けたほうがよい。触ったら、石鹸等で念入りに洗うこと。 |
Ref. 110703 ムラサキイガイ |
ムラサキイガイ 【イガイ科Mytilidae】 |
Mytilus galloprovicialis Lamarck, 1819 |
(イガイ目Mytiloidea, 斧足綱Bivalvia, 軟体動物門 Mollusca) |
(c)2011, Lab. Sci. Rural Life, Kobe, Japan. (田園科学室) |
図1:ムラサキイガイ。2011年7月3日、兵庫県淡路市。 |
ムラサキイガイ、麻痺性貝毒の危険 (3 July 2011. ABA. Lab. Sci. Rural Life, Kobe, Japan.) |
プランクトン食。麻痺性貝毒を産生するプランクトンによって速やかに毒化される。 干潮時、岸壁、ロープ、タイヤ等の人工物にぎっしり盛り上がるように付いているのが見られる。 釣り人はこの貝の小型のものを釣餌にしてチヌ(クロダイ)やコブダイなどを「落とし込み」と称する釣法で釣る。 同属他種(ヨーロッパイガイ)や本種が、ムール貝として賞味されるというが、必ず市販品を買って食すること。 世界に広く分布を広げた野生の本種は、上記毒化により危険。決して食べないこと。 |
Ref. 100324 アサリ |
アサリ 【マルスダレガイ科Veneridae】 |
Ruditapes phylipipinarum (A. Adams et Reeve, 1850) |
(斧足綱Bivalvia, 軟体動物門 Mollusca) |
(c)2011, Lab. Sci. Rural Life, Kobe, Japan. (田園科学室) |
図1:アサリ(市販、生)。2010年3月24日、愛知県産。これら市販品で 貝毒による食中毒になることはまずない。 |
アサリ、季節・地域の貝毒情報に注意 (24 March 2010. ABA. Lab. Sci. Rural Life, Kobe, Japan.) |
アサリは、季節により地域により貝毒を持ち、食中毒の原因になることがある。但し、市販品による中毒はまず無いので安心してよい。 注意が要るのは、潮干狩り。貝毒(麻痺性貝毒・下痢性貝毒)について、各地域自治体の試験・研究機関が「貝毒情報」をweb上に発信している。また新聞等で報道されるので確認の上でかけること。 兵庫県の場合、水産技術センターが、アサリについては3月〜6月、マガキについては10月〜3月の期間、貝毒および毒化原因となるプランクトン数種について監視、発表している。 なお、麻痺性貝毒、下痢性貝毒はともに(1)水溶性、(2)安定で加熱調理しても分解されない。 |
Ref. 110201 マガキ |
マガキ 【イボタガキ科Ostreidae】 |
Crassostrea gias (Thunberg, 1793) |
(ウグイスガイ目Pterioidea, 斧足綱Bivalvia, 軟体動物門 Mollusca) |
(c)2011, Lab. Sci. Rural Life, Kobe, Japan. (田園科学室) |
図1:マガキ(市販、生)。2011年2月1日、兵庫県産。 |
マガキ、生食用と加熱調理用の使い分けを (1 February 2011. Lab. Sci. Rural Life, Kobe, Japan.) |
カキといえば通常は本種、マガキ。ほぼ全部が養殖されたもの。 殻付の生産量は2010年度農水省統計によると全国で209,200t。広島が圧倒的に多く105,900t、以下宮城48100t、岡山18300t、岩手13200t、兵庫5600tなど。 ごく最近まで、ノロウイルス(古い名は小型球形ウイルス)感染による食中毒の元凶・主犯のごとく言われていたが、近年のノロウイルスの大流行を経て、本種(マガキ)の感染源としての役割は考えられていたほど大きくないと認識されるようになった。 とはいえ、以下の事を改めておぼえておきたい。 よく知られているように、本種(マガキ)が消費者にわたる際には「生食用」と「加熱調理用」の表示がなされている。 生食用と表示されたものは、特別な基準に従って生産・処理されたもの、加熱調理用は通常の生産・処理されたもの。ごく大まかにはそう考えればよい。 綺麗な海で育った、汚い海で育った、などという区分ではない。まして加熱用を「汚染されている」「日が経っている」「傷みかけている」「下級品である」などと考えるのは大間違いである。 殻付きを「生きているのだからこれ以上新鮮・清潔なものはない」と過信する、これも間違い。殻付きで直売所や鮮魚店・食品店の店頭に並ぶものの大部分は「加熱調理用」である。焼いて食べるなど、「加熱」を厳に守りたい。 |