田園科学室
ダイコンの栽培(詳細1)
(c)2005-2009, ABA, Lab. Sci. Rural Life, Kobe, JPN (田園科学室)
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060828a 播種(例1) |
ダイコンの播種(例1)('06年08月28日) |
(c)2006, ABA, Lab. Sci. Rural Life, Kobe, Japan (田園科学室) |
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1、播種 |
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播種とは種播きのことですが、ここでは準備や種播き後の黒寒冷紗被覆を含めた一連の作業について述べます。 |
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昔、ダイコンの播種といえば、畝(うね)立て後1-2条の播き床に散水して播種、覆土し、発芽後に何回かにわたって間引きを行って、最終的に20-30cm間隔に整えるのが普通でした。 |
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しかし種が高価になった現在、そのような方法では経費がかかり過ぎます。間引きや除草に要する労力もできるだけ抑えなければ採算割れになります。 |
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現在、田園科学室では、2列、各10cm間隔で1粒ずつ点播、後に間引きで20cm間隔に調整しています。抑草の意味で、黒マルチを掛けた畝で栽培しています。 |
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作業手順は以下の通りです。 |
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(1)畝立て、(2)黒マルチ掛け、(3)穴あけ、(4)注水、(5)播種、(6)覆土、(7)黒寒冷紗被覆。 |

図1:播種の準備。畝立て、畝整形後、黒マルチを掛けます。 |
2、準備 |
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播種の準備は以下のように行います。 |
(1)畝立て |
(1)堆肥、有機石灰、肥料を撒布、耕運して、畝(うね)を立てます。
(2)備中鍬(左)、鍬(上)レーキ(下)で畝の形を整えます(断面を台形に)。
(3)播種後まもなく秋梅雨になるので、排水路を整備しないと、水に浸かったダイコンは下半分が腐り、商品価値が全く無くなります。
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(2)マルチ掛け |
(4)三角ホーで、畝の両際にマルチングのフィルムの裾をとめる浅い溝を掘ります。
(5)断面の台形を、極端に言うとΩ形に覆うイメージで溝を掘ります。
(5)フィルムをピンと張るには、最も暑くフィルムが伸び切った時間帯に張ります。
(6)フィルムの裾は、鍬を用いて土で止めます。
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(3)穴あけ |
(7)尖らせた棒の先でマルチをつついて穴をあけます。
(8)穴は1畝に2列、各10cm間隔であけます。
(9)穴の直径が3-4cm、深さが4cm程度になるように指でえぐり直します。
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(4)注水 |
(10)薬缶(やかん)、またはホースで各穴100-200ml程度注水します。
(11)幼児の場合は、紙コップで1穴ごとに注水すると確実です(図2)。
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図2:穴開けと注水。マルチング・フィルムに2列、10cm間隔で穴を空け、各穴に紙コップで水(約100-200ml)を注ぎます。こうすると、棒でつついて開けた穴が深すぎても、適当に埋まり、全ての穴の深さがほぼ揃います。
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3、播種 |
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最近のタイコン種子は、防虫性や保存性を与えるためにコーティングされています。子供に播種をさせる場合、手の汗で溶けると有害な場合もあるので紙コップに入れて渡します。 |
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10cm間隔の穴の中央へ、丁寧に1粒ずつ、種を落とし込みます。
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本葉が展開してから、別項で述べるように間引きを行って、20-30cm間隔で太らせるのでそのことを念頭に置いて播種の作業を進めます。 |

図3:種を穴へ落とし込みます。10cm間隔の穴に1粒ずつです。
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3、覆土 |
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覆土とは、種や球根を発芽させるために土で覆うことです。 |
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植物の成長には光・温度・湿度(水)の3条件が必要ですが、発芽は2条件。温度と湿度を確実に保つために土の布団をかけるのです。 |
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したがって、ふんわり柔らかい土が最良。土篩(つちふるい)で篩った畑土を使います。また、被せた後に強く押さえないよう、注意します。 |
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覆土は、厚さ2-3cmを目安に、紙コップで土を掬って、1穴ずつ被せます(図5)。 |
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*昔の条播きのように潤沢に種を使えるなら、畝間の谷の土を鍬で掬って被せられるのですが、現在では1粒1粒を丁寧に扱うために、土を篩うことを勧めています。 |

図5:覆土(ふくど)をします。篩(ふるい)を通したサラサラの土を1cmぐらいの厚さに、穴の1つ1つへ入れます。決して押さえてはいけません。
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4、黒寒冷紗被覆 |
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播種後に黒寒冷紗で被覆するのは第1に暑さを和らげ保湿するためです(図6)。 |
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神戸の播種適期は8月下旬〜9月上旬。連日30℃を超す残暑と乾燥が続いていますから、遮光して涼しく湿潤に保ってやります。 |
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害虫の産卵を妨げたり遅らせたりする効果もあります。 |
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最近は、犬の踏み荒らしの害を防ぐ(図7)、人慣れ(家畜化)した鳥類の食害を防ぐという重要な役割が加わりました。 |
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寒冷紗を掛けた後の散水は、ホースに如雨露状のノズルを付けて行います。 |
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寒冷紗は本葉が2枚出揃ったら外し、大急ぎで楊枝やピンセットでハバチやガの幼虫を取り除きます。そこからが、追肥と害虫防除、ダイコン栽培の成否を決める2週間になります。 |

図6:最後に寒冷紗をかけます。以後の水遣りは、如雨露(じょうろ)状の散水ノズルを用い、寒冷紗の上から行います。最初は1日2回、以後1回、本葉が出たら、適宜日(間隔)を空けます。本葉が2枚展開したら寒冷紗は除き、大急ぎで害虫を爪楊枝やピンセットで除きます。
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図7 :犬による踏み荒らし。播種前日までに準備を行った場合、散歩中の犬による踏み荒らし(フィルムの破れ)が避けられません。なるべくなら、昼過ぎまでに準備を整え、夕方早い目に播種をして、寒冷紗等で被覆するのが良策です。
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080912a 播種(例2) |
ダイコンの播種(例2)注意事項('08年09月12日) |
(c)2008, ABA, Lab. Sci. Rural Life, Kobe, Japan (田園科学室) |

図1:園児、ダイコンの播種。'08年9月13日、この日は35人
の園児がダイコンの種まきに挑戦しました。
1、播種における注意事項 |
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播種の詳細については前項(ダイコンの播種、例1)で述べました。ここでは注意事項についてだけ述べます。 |
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ダイコンの播種に限らないことですが、畝の間に子供たちが入って作業をする場合に必ず守らねばならないことが、いくつかあります。 |
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中でも重要なのは、次の3つです。 |
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(1)畝を跨がない |
畝を跨ぐことは大人であっても失敗が多いものです。黒マルチが掛けてある場合はそれを破ることがしばしば。 |
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部分的なひきつりを招き、種の上にあった穴が横へ移動して、芽が出ても上に空がない状態になります。すでに芽を出している作物は、千切れてしまいます。 |
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(2)畝間(谷)を歩く回数を最小限に |
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農家が播種を行う場合、準備を整えて以後人が谷を歩く機会は注水、播種、覆土、寒冷紗掛けの4(多くても6回)だけです。 |
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これが35人の子供の作業になると、機会はその35倍、つまり140回(または210回)になります。谷間は踏み固められ、空気は通わず、水が浸透しなくなります。 |
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当然、作物の発育に影響します。土が乾燥しきっている場合はともかく、湿潤な状態なら、後で日干し煉瓦にようになりますから、三角ホー等で谷を掘り返してやる必要があります。 |
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(3)膝で畝の肩を圧しない |
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これは、畝を崩し固くするので、根の発育を妨げます。 |

a:畝立て。 |

b:マルチング。 |

c:穴あけ、注水。 |

d:播種、覆土。 |
図2:播種の手順は例年どおり。施肥、耕運の後畝立て、マルチングの
後10cm間隔で穴あけして穴毎に注水、1粒ずつ播種、篩った土で約2cm
覆土。このあと黒色寒冷紗でトンネル状に覆いました。 |
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050916a 追肥 |
ダイコンの追肥('05年09月16日) |
(c)2005, ABA, Lab. Sci. Rural Life, Kobe, Japan (田園科学室) |

図1:先ずマルチングのフィルム(黒マルチ)を切り取ります。畝中央に幅は鍬の幅、長さ1m程度の開口を作ります。
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1、追肥 |
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ダイコンは成長の早い作物です。すくすく遅滞なく育ったダイコンは柔らかく美味しいものです。 |
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しかし、最初から畝にたくさんの肥料を入れる、つまり元肥をやり過ぎると必ずしもすくすくとは育ってくれません。 |
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元肥はほどほどにして、適期を見逃さず追肥をする方法が一般的です。田園科学室でも本葉4枚が展開したころに追肥を行っています。 |
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追肥は、牛糞堆肥(バーク堆肥)を主にして、若干の有機入り化成を自家配合して施用しています。 |
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2、手順 |
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追肥は次のような手順で行います。 |
(1)黒マルチを、畝中央(列と列の間)で、幅は鍬の幅、長さは90-100cm程度切り取ります。
(2) ここに三角ホー(三角鍬)などを用いて、追肥を入れる溝を浅く掘ります。
(3) 次に、長辺に沿ってマルチングの下に指で土を軽く掻き込んでダイコンの葉の付け根までの徒長した白い根の部分が埋まって隠れるようにします。
(4) この土寄せで、ダイコンは風が吹いても倒れたり曲がったりし難くなります。
(5)土寄せの作業が済んだ後、有機入り化成肥料を薄く播き、堆肥で覆います。
(6)鍬で畝間(谷)の土を掬い取って、堆肥の上に被せ、鍬で軽く圧します。
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間引きが必要なら、溝に追肥を撒くまでに済ませます。肥料で汚れない良質の間引き菜がとれます。 |
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虫(芯食い虫やアオムシ)の除去は土寄せ後に行うとダイコンを折ってしまうような失敗が少なくなります。 |

図2:追肥は畝中央の溝へ入れます。 先ず油粕、魚粉、有機入り化成肥料などの粉状/粒状肥料を葉に当たらないように注意して撒きます。その後でバーク堆肥などを積み上げ、その上を谷から鍬で掬い取った土で覆います(覆土)。 |
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051119a 収穫 |
ダイコンの播種('05年11月19日) |
(c)2005, ABA, Lab. Sci. Rural Life, Kobe, Japan (田園科学室) |

図1:大根の収穫。ダイコンは品種によって収穫時期が異なります。「耐病総太り」の場合、
播種後69日が標準ですが、それは8月末〜9月初旬に播種し場合のことです。
この時季から1週間遅れて播種し場合は収穫は約半月遅くなると覚悟した
ほうが良いでしょう。なお、元肥が強すぎた場合は破裂などで商品価値が
低い大根になりがちなので、元肥を薄く、適期を過たず追肥を施す
のが良い大根を得る最大のコツです。
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