田園科学室
イネの栽培(詳細2

農家の仕事作物とその栽培例イネの栽培(目次)詳細1・詳細 2


収穫041004a
収穫・コンバインハーベスター(2004年10月04日)
(c)2004, ABA, Lab. Sci. Rural Life, Kobe, Japan (田園科学室)

1、コンバインによる収穫
 今日、稲の収穫はコンバインで行われるのが普通です。
 コンバイン(正確にはコンバイン・ハーベスター)は、刈り取り機、脱穀機、藁処理(裁断)機が複合(コンバイン)された収穫機(ハーベスター)のことです。
 ゴム製のキャタピラー(無限軌道)を備え、軟弱な土地でも走行できます。操縦桿と足踏みベダルで運転、作業をします。
 エンジンは座席下にあり、運転席の後方に籾を貯めるタンクを備えています。籾はタンクから籾袋に落ちる仕組みだったのですが、ここ数年のうちに長い筒でトラックの荷台に排出するものが主流になってきました。
 田園科学室では、まだ従来の型、袋に落ちるものを使っています。

’04/10/04コンバインで稲刈り(開始)

図1:コンバインで稲刈りを開始。2004年は、台風の上陸が相次ぎましたが、幸い全ての田圃で倒伏を免れました。当地では今年から推奨品種がドントコイからキヌヒカリに変りましたが、村内の稲刈りは例年通り9/23〜30の適期に行われたので、この田圃だけがポツンと取り残され、「遅いなあ」と近所の噂になってしまいました。

コンバイン・ハーベスター

図2:コンバイン・ハーベスター。刈り取り機、脱穀機、藁処理(裁断)機が複合(コンバイン)された収穫機(ハーベスター)。前方で稲を引き起こし、刈り取って、左奥へチェーンで搬送、脱穀し、籾を運転席後方のタンクに溜め、タンクの籾は下の袋に落下します。ワラは切断されて後から排出されます。
2、四隅刈り
 コンバインを田圃に入れる前に、田圃の四隅の稲を手で刈り取っておきます。曲り階段に踊り場を設けるように、コンバインの転回場所を作ってやるのです。
 コンバインは左回り(反時計回り)に進むのが原則ですから、それを考えに入れて鉤括弧(¬)形に刈ります。刈ったイネは畔に並べ、最後にコンバインを横付けして脱穀にかけます。

3、注意
 四隅で方向転換する時には、必ず刈取動作を止め、刈取機を上げてから転回します。
 刈取はゆっくり行うほうが無難です。欲張って刈取機の幅一杯に、頬張るようにイネを銜えさせての高速刈取は機械が詰るもと(原因)になります。
 田圃の地面の硬軟に注意を払いながら刈取をするのも大事なことです。軟らかいところでは刈取機が稲株を引き起こそうとして、地面から引き抜いてしまうことがあります。
 株の引き抜きが起こると脱穀機に小石や砂が入り、これが籾に混じって、精米の段階までついて回るので厄介です。
 それを避けるには、軟らかい場所に近づくにつれて、徐々に刈取位置を高くしてゆきます。また、急な方向や刈取高さの修正も株を引き抜く原因になるので、レバー操作は慎重確実に行います。

コンバインで刈った跡

図3:コンバインで刈った跡。藁は細かく裁断して機械の後方から排出されます。不要物と思っている人が多いようですが、最も大切な有機資材の一つです。なお、藁を裁断せず、そのまま排出することも可能です。

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乾燥050928a
乾燥・籾の乾燥と保存(2005年09月08日)
(c)2005, ABA, Lab. Sci. Rural Life, Kobe, Japan (田園科学室)

図1:乾燥機(左)と操作パネル(右)。乾燥は14.9%で終了。

1、籾の乾燥
 収穫、即ち刈取、脱穀して得た籾は、そのままでは保存も籾摺り(玄米への加工)もできません。湿度が高いため、カビが生え変質します。また、僅かな力で割れてしまいます。
 つまり、籾の乾燥は、米の保存性、加工性、ひいては食味など品質を保つために不可欠の作業なのです。
 昔は、刈取った稲を稲木で支えた竹竿に架けて日に干し、さらに脱穀後の籾をムシロに広げて日に干していました。
 しかし、今日では、出荷にあたって厳密な湿度の指定があり、14.7%とか14.9%など0.1%単位の管理が求められています。
 田園科学室では、乾燥機を用い、穀物湿度を14.9%に設定して乾燥を行っています。

2、乾燥機による乾燥
 乾燥機へ穀物投入口から穀物を入れることを張り込みと言います。籾を張り込むと同時に、先ず常温下で籾を機内で循環させながら送風して蒸れないように、また表面の露等の湿気を除くようにします。
 数時間後にバーナーに点火し、穀物湿度と張り込み量に応じた熱風温度でできるだけゆっくりと、通常12時間以上かけて乾燥させます(図1)。
 この乾燥間に、相当多量のほこり、つまり籾の柄、禾(のぎ)、毛などが熱風とは別に排出される仕組みになっています。
 バーナーに点火後の15分間と以後1〜2時間おきの点検は欠かせませんが、湿度が設定値にまで下がると自動停止してくれるので、昔の天日干しの苦労を知る者には夢のようです。
  *自動停止のための組み込み湿度計は、別の穀物湿度計を用いて補正します。
 乾燥が終わった籾は、排出筒を経て袋詰めにして保管します(図2)。
 保管は、気温の下がる11月初旬までは品質低下が少ない籾の状態で行い、気温が低下すれば籾摺りして玄米保管に切り替えて冬を越し、早春の気温上昇前に冷蔵庫へ移します。

図2:乾燥が終わった籾は、袋詰めにして保存します。気温が15℃を下回る11月初旬に籾摺りを行って玄米にします。気温の低下を籾のままで待つのは品質保持のための工夫です。

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籾擦061115a
籾摺り(もみすり)(2006年11月15日)
(c)2006, ABA, Lab. Sci. Rural Life, Kobe, Japan (田園科学室)

図1:籾摺機と米選機。左の袋は乾燥籾の袋。袋から籾を注ぎ入れている部分が投入口(ホッパー)。その直下にある四角い箱の内部に2つのゴムローラーがあります。籾が載った斜めの浅い箱の部分が揺動装置。右の緑の機械が米選機。左上から流し込まれた玄米のうち未熟なものは下の筵に落ち、充実したものは右端の黒い桶で受けます。右の紙袋は玄米を30kgずつ詰めたものです。
1、籾摺り(もみすり)
 籾摺りとは、籾摺機(図1左)を使って、籾を玄米に加工する工程です。僅かに回転速度の異なる2つのゴムローラーの隙間に籾を通すと、速度差で籾殻が外れ、玄米が現れます。
 全粒が綺麗に籾殻を除かれるようにローラーの隙間を調整するのですが、少量の籾が残って混じるので、それを揺動装置にかけて分別します(図1左の機械の斜めになった浅い箱が揺動装置)。
 揺動装置を通った玄米は接続した米選機(図1右)へ送られ、摺り損なった籾は再度ローラーへ戻る仕組みになっています。

2、米選機(べいせんき)
    *選米機の呼び名は洗米機と紛らわしいので、ここでは使いません。
 米選機に入った玄米は、未熟な玄米と充実した玄米に篩い分けられます。未熟なものは途中で下に落ち(図1右下のむしろ)、充実したものは後端の排出口から出てきます(図1右端の黒い桶)。
 充実した玄米は、30kgずつ専用の紙袋に詰められ、冬季は倉庫内で、早春以後は冷蔵庫内で保存されます。
 未熟な玄米は、過去にはお菓子や味噌のような加工用に重宝されたのですが、今日では専ら家畜飼料用になっています

図2:籾殻は籾殻袋へ集めて、そのまま有機資材として、また燻炭にして田畑へ入れたり、芋の越冬保存に用いたり、さまざまな用途があります。
3、籾殻(もみがら)
 籾を摺って玄米を取り出すと、当然、大量の籾殻が出ます。これは有機資材として田畑に投入するほか、燻炭に加工して各種野菜の栽培に利用しています。
 籾殻は、今日のようにプラスチック資材が無い時代には、断熱材としても重要でした。
 例えば、藁と組み合わせて温床の壁面を構成したり、床下に穴を掘ってサツマイモを越冬させる場面で使われるなど、していました。
 田園科学室では、今日でも、サツマイモの温床や越冬に、籾殻を重宝しています。

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