溝草(排水路清掃)、解説と実例1
(c)2006, ABA, Lab. Sci. Rural Life, Kobe, Japan. (田園科学室)

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溝草(排水路清掃)解説と実例1('06年05月12日)
(c)2006, ABA, Lab. Sci. Rural Life, Kobe, Japan

1、溝草とは
 溝草の字義は溝の草を除くことですが、個々の農地への給・排水路(溝、みぞ)清掃の意味で使われてきました。給水が埋設パイプラインになった現在、自動的に意味が変わり、専ら排水路清掃だけを指すようになっています。

排水路の雑草の繁茂

図1:排水路、雑草の繁茂。水路を塞ぐ植物はアメリカセンダングサや外来のイネ科雑草等です。矩面にはヨモギ、セイダカアワダチソウ等が生えてきます。
2、作業の分担
 溝草を行うのは昔から個人、個々の農地の所有者でした。しかし田植直前に全域の水路が清掃されていなければ水が滞って多くの人に迷惑がかかるため、数日から1週間の短い期間に集中して行われるので、実質的には村の共同作業です。
 昔は、各田畑への給水路がある一方で、排水は上の田から下の田へ次々流れ下って川に至る流下式が多かったので、個人が分担する範囲は自分の田畑に至る給水路上流側がほとんどでした。今は自分の田畑に接する排水路だけを清掃します。
3、溝草の必要性
 放っておくと排水路は雑草の 根が密生して、分厚い絨毯状になって、水路(溝)を塞ぎ、底面を覆ってしまいます。春から初夏にはイネ科の外来種(牧草)が多く、秋にはアメリカセンダングサが優占種になるケースがほとんどです。
 矩(のり)面には、ブロックの隙間からヨモギ、セイダカアワダチソウ等が生えてきます。
 最低でも年2回、5月と8月の排水路清掃は欠かせません。

排水路、清掃(溝草)の後

図2:排水路、清掃後(上の隣接箇所)。排水の効率ばかりを考えないで、多くの生き物との共存も考えてみると、重労働も案外楽しい。
4、溝草の実際
雑草は、溝の底に砂利や泥が溜まった場所、そして溝の側面下部に溜まった土砂とそこに生える苔のあたりに生え始め、やがて水耕栽培の作物の根のように、厚さ20cm以上に及ぶ分厚い絨毯のようになり溝を完全に塞いでしまいます。
 流れてきた土砂が、発達した根の塊の前に溜まるのでこれを除きます。また砂泥が根の隙間に入り込んでいるので、根の塊ごと抜いて運び出します。1つの塊が10kg、20kgと重く、重労働になります。
5、水路に生き物を…
 排水路に雑草が繁茂した場合、そこには多くの生物(カメ、ヘビ、カエル、トカゲ…)が棲み着いて、まるで昔の田溝のようになります。
 排水効率を考えるなら、 間断なく清掃するのが一番。しかし、雑草の繁茂と清掃を交互に繰り返す程度、年2回の清掃程度にとどめれば、それらの生物と溝を共有できるかな、と考えながら作業しています。

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