知らぬが仏

土曜日の夜。週休二日制と言う非常にありがたいシステムの導入により、

現役学生である未来は大抵お隣りさんであり兄弟でもある刹那の家に遊びに訪れていた。

この日も例に違わず、「最近学校で流行ってるの!」と、人気のある

心理テストの本を得意げに出し甲斐家の面々を相手に設問を始めたのだ。

当然魔界にあるはずも無い娯楽に使い魔達や、ルシファーも意外と乗り気な風で

終始穏やかにゲームは進行していた。

「・・・じゃ、次はこれね。貴方は歯医者です。虫歯の治療を嫌がってる

子供がいるとしたらどうしますか?――ベールはどうする?」

少しの猶予を置いて、未来は横隣りの使い魔・ベールに向く。

「うーん、その子嫌がってるんでしょう?泣き止むまで待ってあげるわ」

にっこりと笑顔で応える。普段から思いやりのあるベールらしい答えである。

それじゃ仕事になんねぇよ、との現実的な突っ込みは性別と種族に免じてご容赦いただきたい。

「クールはどう?」

「そうだな。俺はあんまり気が長い方じゃないからな、その子供の好きな物を与えて

恐怖感を和らげてやればいいんじゃないか?」

教科書通りの全く以って真っ当な答えである。

さすがに数々の英雄に付き従えて来ただけのことはある。

「それじゃ、お父さんは?」

少し俯いた顔を上げて、ルシファーは視線を戻した。懸命に答える姿勢が伺えるのだが、

天使と悪魔族の頂点に立つ人物だと思うと中々に微笑ましいお姿である。

「・・・仮に私が治癒する立場であれば、悪化していく疾患である事実を教えてやりたい、

病魔の害を知ることが出来れば自ずと必要性を知ることになる」

それでこそ魔界の王と言うべきであろう。

未来は予想以上に重みのある発言に苦笑いを浮かべながら、刹那の肩を突付いた。

「そ・・・それで刹那は?」

「―――泣こうが喚こうが関係ない。力尽くで押さえつけて椅子に縛り付けて、

それでも抵抗したら口抉じ開けてでもやる」

部屋は水を打ったように静まり返り、金縛りにでも掛かったように、皆一様に硬直した。

クールは呆れて小さな溜息を吐いている。

仕えている主人の暴挙は今に始まったことではないようである。

おもむろにルシファーの手を取り未来は思わず貰い泣きをしてしまった。

「苦労……かけるわね」

「どうした、未来?何か辛いことでもあったのか?」

その傍らでは、相変わらず表情の動かない刹那が少し不思議そうな顔をしたとかしなかったとか。

 

勿論答えは、「その気の無い相手(恋人)を口説く時の貴方の取る行動」でした。

合掌。

 

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