test11
カチャカチャと配線をつなぎ、クルクルとドライバーでねじを回す。
その作業が楽しいのか楽しくないのか、夏樹の顔からは分からない。
「先カラ、何をしてイマスカ?」
「語尾がおかしい。」
質問に答えず、手元を止めることなく夏樹が返す。
言われた白清は少し考えると、再び口を開く。
「シテイルノデスカ?」
「魔導機制作。」
「その丸い円盤が?」
今度はセディールが疑問を持った。ナーシスも側で成り行きを見守っている
夏樹が持っているのは、馬車の車輪ぐらいの大きさの円盤で、裏表共にビッシリと
文字が刻み込まれており、真ん中に魔石がはめ込まれていた、
「仕事はどうした。」
「休憩に入ったの、はい、近所のおばさんからの差し入れのお菓子。」
セディールは相変わらず愛想のない夏樹にムッとしながらも、菓子を差し出す。
「アリガトウ。」
「どういたしまして。」
行為に没頭している夏樹をよそに、白清が礼を言いながら菓子をつまんだ。
最後のネジを締め終えると、夏樹は立ち上がり、円盤をいろいろな角度で眺め、外見の異常は無いか確認した。
「んで、その円盤、なんなの?」
「名前はまだ無い、つくったばっかりのうえに、実験してみないとな。」
そう言って夏樹は、立ったまま円盤から手を離した。
円盤は平面を地面に向けたまま、まっすぐ落ちていく。
“ヴォン”
地面すれすれで、魔石が光り円盤が浮いた。
「え?」
「「?」」
三人の反応をよそに、夏樹は円盤の上に乗る。
円盤は夏樹の体重で一瞬沈むが、再び浮き上がり地面と10センチの間を作った。
「何?ただ浮くだけなの??」
浮くという行為は、浮遊術を使えば、珍しくもない。
セディールの言葉に、チラリと視線を向けただけで、夏樹は応えることなく、
円盤に乗ったまま、今度は踵の方に体重を持っていく、すると円盤もそれにならい後ろに傾き・・・。
“ギュン”
「え!?」
「「あ!?」」
円盤が真っ直ぐ素早い動きで滑るように動いた。
そのまま、夏樹は円盤の傾きを変えていき、再び戻ってくると、円盤から降りた。
「すっご〜い、何それ、何それ!」
「風の魔石と浮遊の魔石、魔法学古代文字の応用、その他諸々、そんなところだ。」
「それじゃあ、分からないわよ。」
「説明しても、無理。構造が複雑だ。」
「これ、どうするんですか?」
珍しく、自分から興味を示したナーシスが聞いた。
「別にどうもしない、ただ試してみたかっただけだ。」
「売ったりとかしないの?子供とか喜ぶわよ。」
「こんな村じゃ取り合いになるだけだ、ガキは健康的に走らせておけ、それに・・・。」
興味なさそうに夏樹が応えている間に、白清が円盤に乗ったが・・・。
“ギュン”
「っ!?」
バランスを崩して落ちた。
「・・・バランスをとるのが難しいからな、危ないぞ。」
「早く言ってホシカッタデス。」
浮遊間から振り払われた、慣れない感覚にクラクラしながら白清が言う。
「私も乗って良い!?」
「ケガをしても良いんならな。」
「大丈夫、大丈夫。」
「オレも、もう一度やりたいデス。」
「今度は私が先〜。」
そうやって、円盤で遊び始めた二人を眺めながらナーシスが口を開く。
「危ないから、子供にはさわらせたくない、ということですか?」
「危機管理も出来ない奴に持たせる気はないということだ、俺に責任がまわってこられて
も困るからな。」
「・・・・・子供が好きなんですか?」
「好きではないな。」
「嫌いでもないと?」
「何故だ?」
「いえ、何となくです、彼女たちが楽しそうだから。楽しめるものを作れるのは、
楽しむことを知っていないと、出来ないと思いますが。」
「俺が楽しむのは、作るまでの経過だ、後はどうでも良い。」
「でも楽しそうです。」
「ガキなんだろ。」
「子供に与えたくなかったんじゃないですか。」
「忠告はした。」
「でしたね。」
そこまで言ってナーシスはセディールと白清の元に向かっていった。
夏樹はそれを眺めながら、差し入れの菓子に手を着けた。
「あー、何お前ら楽しそうなことやってんだよ!」
村に戻ってきたレスタ達が見たのは、宙に浮く円盤に乗ったメンバー。
今まで、薬草の手入れか、野菜との戦闘か、毒に対する抵抗を作るためなのか分からない作業をし続けてきた、
こっちに比べて随分楽しそうだ。
「私たちも昼で仕事が終わったのよ、これはついさっきから!」
セディールがそう言ったとき、そちらの意識が向いたせいかバランスを崩し、
落ちそうになる。
「きゃっ!」
側にいて順番待ちをしていた白清が、素早く抱き留め、難を逃れた。
「あ〜、びっくりした、ありがとう。」
「ドウイタシマシテ。」
「あれ、白清、いつのまに喋れるようになったんだ?」
分かりにくい喋り方から、一変している様子にレスタが聞く。
「夏樹さんに教わったんだって、ここ最近、仕事の合間に頑張ってたんだから。」
「お前が威張るなよ。」
白清が言う前に、代わりに説明したセディールにレスタが返した。
「ところで、これは何ですか?」
円盤を興味深げに身ながらデパスが聞く。
「夏樹さんが作ったの、バランスをとるのが難しいんだけどね。
もう、あんたが急に声なんかかけるから、危なかったじゃない!」
「俺のせいかよ!戻ってきたら、お前らが遊んでいるからだろ!」
「私たちだってちゃんと仕事してたわよ!」
「帰ってきた早々ケンカはやめてください。」
言い合いを始める二人にデパスが仲裁をなす。
その様子に、ナーシスはため息をつき、白清は呑気に眺めていた。
「戻ってきた早々、喧しい連中だ。」
離れたところで、また様子を眺めている夏樹が言った。
「良いんじゃない、ケンカするほど仲が良いってことでさ。
それよりも、どういう風の吹き回しだよ。」
どこか面白そうな顔をしたリュートが聞く。
「何がだ。」
「白清の言語教育。お前、人にものを教えるのは面倒だから嫌だ、て毎回言ってた
じゃねえか。」
「此村はお人好しが多いんだよ。」
「お前がお人好しなら、この世は騙されまくりのお人好し軍団だぜ。」
皮肉は通じることなく通り過ぎた。
「俺は関係ない、村の連中が白清に協力しただけだ。」
「ほお。で、どうよ、あいつら見て。」
元々、ただの軽い興味だったのか、それ以上追求せず、話題を変える。
「能力的には問題なし、あとは人格的問題だろうが、あのぶんじゃ、特に気にするまでも
ないだろう。あのパーティー内ならな。」
「個性強いからねえ。」
「お前に言われたくないだろ。」
「俺じゃなくて、俺たちだろ、ブラックワルツなんだし〜。」
「巻き込むな。」
「見かけじゃ、一番黒いのになあ。」
「腹が黒いお前らほどじゃない、もう一人はどうした。」
「あいつなら閉じこもって、薬いじりしているぜ、代理人が来てるけど。」
その言葉に、夏樹が後ろに視線を移すと、カルマが立っていた。
早く言えというような目でリュートを見てから、立ち上がる。
「久しぶりだな。」
「そっちは相変わらずのようで。何か用か。」
「預かりものだ。」
そう言って、渡してきたのは一握りの石だ。
「魔石か?」
夏樹の手の中の石をのぞき込みながらリュートが言った。
「今回の報酬だ、ただ働きをお前のためにするきはないからな、あいつに感謝しろ。」
魔石を一通り眺めながら、夏樹が返す
「もっとボランティア精神もとうぜ。」
「お前は、思いやりの精神を持て。」
「あ、あの人、格好いい〜。」
「お前、ああいうのタイプなわけ?」
今度は、三人の様子を眺め始めた、生徒達。
セディールがカルマの顔を確認して言った言葉に、レスタが眉を寄せながら言った。
「良いなあ、あんな人がいたんなら、そっちに言ってもよかったかも。」
「やめとけ。」
「何でよ、見込みない、て言いたいわけ。」
一刀両断されたレスタの言葉に、ムッとしながらセディールが返す。
「いや、見込みすらない。」
「何ですって!」
思わず、レスタの襟元をつかむセディール。
「勘違いすんな、お前が悪いからとは言ってねえだろ・・・
それもあるだろうけど(ボソリ)」
「何か言った!」
「言ってねよ、とにかく、あの人に気のある雰囲気見せても無理。な、デパス。」
「え?・・ええ、そうですね、まず気づかないでしょうし。」
いきなり話を回されて、戸惑いながらデパスが頷く。
「やってみないと分からないじゃない。それにそんなところが可愛いのよ〜。」
「・・・・・・可愛いか?あんな190代の図体でかい男が。」
「うるさいわね、身長低いからて僻んでんじゃないわよ!」
「んだと、テメエ!」
「まあ、まあ、まあ。」
「二人、落ち着ク。」
くってかかろうとする二人をデパスと白清がおさえる。
「だいたい、あそこはデカイ奴が多いんだよ、夏樹さんだって教官超してるし、
白清とならんで違和感ないじゃねえか。俺のは平均なんだよ。
それから、鈍いのもあるだろうけど、お前じゃ、“教官がつれてきた学園の生徒”
だけしか、見られねえよ。」
「そのままですよ。」
レスタの台詞に思わずデパスが返してしまった。
「まあ、分からないでもないですけどね、あの雰囲気は・・・。」
「だよなあ、あれはちょっとなあ・・・。」
二人が思い出して、どう反応して良いのか悩み始める。
「何よ、何かあったの?もう相手いるとか??」
「どうなんだろうな?」
「僕に振らないでください、微妙すぎて分からないんです。」
「だよな、微妙すぎるよな。」
「だから、何なのよ!」
ハッキリしない二人にセディールはイライラし始めた。
「短気、ヨクナイ。」
「私は短気じゃないわよ!」
白清の言葉に、セディールはムッとして返す。
「スミマセン(汗)」
「(十分、短気だけど)」
ナーシスはその様子を見て、小さくため息をついた。
「俺らが言ったところ、ブラックワルツの最後がいるところだったんだよ。
んで、そこのディルスさんの元で、あのカルマさんが働いているんだけど・・・。」
「まあ、主人に忠誠だということです、カルマさんたぶん主人第一思考ですよ、あれは。」
「だな、あれは、どうみてもそう・・・なんだけどなあ。」
「僕は限度があるなんてしりませんけどね。」
「俺も、騎士の忠誠なんて分かんねえよ。」
再度二人で考え込んでしまう。
「なに、すっごく美人とか?」
「いや、男だし、顔ははっきりししねえし、性格も微妙。
でも美人さんなら、同じように働いている人がいるから、外見的魅力は諦めろ、
あれで見慣れているだろうから、お前、外見で言ったら無理。」
「いい加減、怒るわよ。」
手のひらに、魔法力を溜ながら、セディールが言った。
「とにかく、諦めろ、お前じゃあの人の思考は読めん、一週間いた俺らでも不可能だった。」
「何、性格に問題あるの?」
「いや、面倒見良いし、責任感もちゃんとある、教官より数倍人は出来ている。」
「それじゃあ、何が問題なのよ!」
「説明するのが難しいんだよ、微妙すぎて。」
「微妙、微妙、てそればっかりじゃない、あんたN○VAウサギ!」
「わけわかんねえ!」
「何してんだあいつら。」
相変わらず、ギャアギャアと五月蠅い、五人組(中心はレスタとセディール)に、あきれ
夏樹が呟く。
「仲がよくて結構じゃねえか。」
「俺はこれで失礼する。」
「帰るのか?今から戻ったら真夜中だろ。」
レスタとの時と違い、きちんと対応する夏樹。
「心配はいらん、向こうの方が落ち着くだけだ。」
その言葉に、もうどうでもいいと思いながら、夏樹は返す。
「ま、“気をつけて”の言葉もいらねえだろうしな、じゃあな。」
「またな〜。」
「ああ。」
手を軽く挙げ、村を出て行くカルマを背に、リュートが呟く。
「なあ、ノロケじゃねえよな、あの台詞。」
疲れても良いから、あそこに戻っておきたい、というのは、
どう言った思いがあるからなのか。
「知るか。」
おそらく、言ってもどうしようもないだろう、そう言うことは言わないとことに限る、
と夏樹は考え、そう帰しただけだった。
空の真上から少し傾いた太陽が、相変わらず、暑い日差しが照り注いでいた。