test10

 

「何で、薬草園の手入れの手伝いで、レベルUPな気分が味わえてんだろうな。」

周囲にある食用野菜に気を配りながら、レスタがボソリと呟いた。

「本当にね、待機中の攻撃力が随分あがりましたよ。」

本来、通常攻撃ではあまり意味のない魔術師のはずのデパスも同意する。

「おまけに最近、毒に対して体が強くなったような気がするぜ。」

「食事で出される野菜が、実は動物性タンパク質も豊富な食用野菜だと言われても、

 平気ですね。」

そんな爽やかとは言えない会話を続ける二人。その目はどこか悟りを開いていた。

「やはり一週間が限界だな。」

二人の様子を眺めながらリュートが言う。

「一週間保ったなら上出来だろ、思ったより助かったぜ。」

相変わらず液体を試験管に移す作業を続けながらディルスが返した。

「レスタの奴も協調性も出てきたみたいだし、デパスは自己主張ができはじめたし、

 いやあ、友情、て素晴らしいな。」

「足の引っ張り合いが不利益にしかならないと覚えたんだろ。」

「冷めたこと言うなよ、青春は暑く行こうぜ〜。」

「わけわかんねえよ。」

そんな会話をしていると、ドアをノックする音が響いた。

「耶麻です。」

「入れ。」

「昼食の準備が出来ましたが。」

「ああ、分かった。」

一礼して耶麻が出て行く。

「今日の食事当番は耶麻か〜、和食だと良いなあ。」

「遠慮しろ。」

そんな会話を続けている一方・・・。

 

「おーい、昼だぞ〜。」

「「はーい。」」

御影の声に応え、レスタとデパスは立ち上がり、腰を伸ばす。

「今日は昼は自由だとよ。」

「「え!?」」

続けざまに言われた御影の言葉に思わず反応し、二人同時に御影の方を向いた。

「思ったより作業が進んでいるから、今日は昼から自由だと、夕方前の水まきだけ

 忘れるなとさ。」

「マジっすか!?」

「マジです。」

頷く御影に、レスタとデパスはガッツポーズをした。

「ほれ、とっとと泥落として、飯食いに行くぞ。」

その姿に苦笑しながら御影が言った。

「俺、カルマさんに剣の稽古でもしてもらおうかな。」

剣と性格をかっているのか、レスタが呟く(教官の俺は無視かよbyリュート)。

「僕は折角なので薬草学を調べてみましょう、ここの本凄いんです。」

「へえ。」

住めば都で、それなりにはやれているらしい。

 

「今日の仕事を言うぞ。」

「今日は何?地下室にすむ大蛇狩り?屋根裏にすむ大蜘蛛狩り?

墓地の住み着くゾンビ狩り?もう何でも来いよ、出来れば美形な吸血鬼が良いぐらい。」

本来、アンデット系に有効な白魔法が得意なデパスと違い、物質的攻撃主体の魔法が得意なセディールが、言い放つ、

ここ最近、信仰心のあまり無い彼女だが、大幅に白魔法の能力が上がっていた。

隣に立つナーシスと白清は黙ってそれを見届けるぐらいだ。少々疲労が顔に出てきている。

「気持ちいいぐらいやけくそで結構、教会は今日から改装工事だ、で、お前らは、此村の

 幼稚園で子供の遊び相手か、俺と一緒に、家々の修理作業だ、どっちか選べ。」

「どっちも苦手〜。」

「神父の除霊に付き合うか?」

「子供の世話に行きたいです!」

アンデット系モンスターは平気でも幽霊が苦手なのは相変わらずのようだ。

「我言葉通不。」

「私も子供相手は苦手なんだけど・・・・・まあ、修理作業も得意ではないから、

 どちらでも良いわ。」

「我修理作業行良可?」

「・・・・・・ええ、それじゃあそうしましょう。」

結局、同じようなパターンになってしまい、それで不満があるわけではないが、

ナーシスは少しため息をついてしまった。

「お姉ちゃ〜ん、かくれんぼしよ〜。」

「お姉ちゃ〜ん、ご本読んで〜。」

「お姉ちゃ〜ん、ボールが木に引っかっちゃったよ〜。」

「お姉ちゃ〜ん・・・・」

「お姉ちゃ〜ん・・・・」

絶え間なく続く子供の声に、二人はだんだん疲れてくる。

「子供って、何でこんなに元気なのかしら。」

お昼寝の時間になり、ようやく落ち着けたところでセディールが呟いた。

「疲れた。」

ボソリとナーシスも呟く。

「珍しいわね、あなたがそう言うなんて。」

普段は何があっても、愚痴一つこぼさないナーシスの台詞にセディールが言う。

「子供は苦手なのよ。」

ナーシスにしてみれば、肉体的な疲労より、精神的な疲労の方が大きかった、これならば

夏樹の方について行った方がよかったかもしれないと思った。

「その割にはしっかり、相手してあげてたじゃない。」

「仕方ないわよ、課題なんだから。」

そうでなければ、こんな事はしない。

「でも、それだけじゃあ、子供が自分からよってくるとは思わないけど。」

「あなたこそ、疲れたという割には楽しそうだったけど。」

セディールの言葉に、ナーシスは、これ以上の追求を避けるように、話を振る。

「ん〜、疲れるけど、子供は嫌いじゃないし、私の家の近所も子供が多かったから、

 そう言う事に慣れているのかもねえ、見ていて飽きないわよ。」

「そう。」

「ナーシスには弟とか妹とかいないの?」

「ええ、私は末っ子だから。兄が一人いるぐらい。」

「へえ、美形?」

「さあ、身内にそういうこと考えたことないから。」

「そう、でもナーシスに似ているなら、きっと美形よね。」

「それ、ほめ言葉?」

「そのつもりよ。」

セディールのサラリとした台詞にナーシスは苦笑する。

「ねえ、あなた達。」

そこへ、幼稚園の先生が声をかけた。

「よかったら、三時のおやつを作るのを手伝ってくれないかしら?」

「うわあ、楽しそう、します!ね、ナーシスもするよね!」

「いや、私は、お菓子とかは・・・作ったことが・・・。」

「なら、尚更やっておこう、何事も経験よ!」

「それ、あなたが言うことなの?」

普段は面倒くさがってやりたがらないくせに。

「いいの、細かいことは、さ、行きましょ。」

お昼寝から覚めた子供が、お菓子作りの大人の目を盗み、つまみ食いをしようと、

台所へ忍び込むのは、もう少し先。

 

「どうです、直りますかね?」

宿の女主人が夏樹に聞く。

「ああ、壊れている部分だけ直せば、問題ないだろ。」

無惨に穴の開いたドアを見つめ、夏樹が言った。

「原因何?」

「あ?ああ、原因か?子供が遊んでいて、思いっきり蹴っちゃってねえ、

 何にもない家だから、泥棒が入ってもあんまり困らないんだけど、

 さすがに、あのままにしておくのもねえ。」

「一旦、ドアを外すが・・・。」

「ああ、構わないよ、昼間から宿の正面から入る泥棒なんていないだろうからねえ。」

「白清、手伝え。」

「解。」

トントントン

金槌の音が辺りに響き渡る。

「夏樹、我相談有。」

「今、作業中だ。」

「・・・・・・・・・。」

「・・・・・・・・・言ってみろ。」

愛想の無いはずの夏樹が、相手をしてしまうのは、彼が動物好きなのか、白清自体に弱いのか判断しずらい。

「我言葉覚望。」

「それは良い心がけだな。」

本当にそう思っているのか聞いてみたくなるほどの、無感動な声で夏樹が返す。

「夏樹教我望。」

「断る、言語学習なら学園にもあるだろ。」

「学園教官難解。」

「俺は教官じゃない、他を当たれ。」

「夏樹良望。」

「朝の格闘訓練に付き合わされて、これ以上、お前に時間を付き合わされてたまるか。」

「今後格闘訓練入不、代言語教望。」

「だから・・・。」

何故、俺が教官まがいなことをしなければならないのか、と言おうとした時。

「引き受けたらどうだね、先生。」

夏樹の声を遮り、宿の女主人が冷えたお茶を片手に現れた。

「何を言っているか、こうも早口じゃ分からないけど、これだけ必死なんだし、

 あんただって、こういう時以外、ずっと家に閉じこもりっぱなしじゃないかい、

 たまには生きている奴の相手でもしなよ。」

「どう過ごそうと俺の自由だ、俺は人のものを教えるようなタイプじゃない。」

こういった村は、妙にお節介焼きが多い気がすると夏樹は思った。

「愛想のなさを除けば大丈夫だよ。」

どうせ、何を言ってもこの年代の女性には伝わらないのは分かっている、

夏樹はため息をつき、女主人と白清を交互に見やり、やがてため息をついた。

「どうして、俺の周りには俺の面倒を増やしてくれる奴が多いんだろうなあ・・・・。」

「そりゃ、先生が器用だからですよ。ギルドに依頼してもなかなか来てくれないし、

 みんな感謝してますよ。」

「分かったよ、気が向いたときにでも教えてやる。」

「真!?」

「ああ、学校のように優しくは無いがな。」

「我其良、感謝!」

喜ぶ白清に、夏樹はまたため息をついた。

「主人協力感謝!」

「そうかい、それじゃ、お茶でも飲んでゆっくりしていってちょうだい、夕方までに

 直してくれれば良いからね。」

「昼までには直る。」

もうどうでも良いように、お茶を啜りながら夏樹が返した。

こうして今日も、夏の一日が過ぎていく・・・・・。