test09

 

デパスの日記より抜粋―

確かに、教官のおっしゃったことは間違っていませんでした。

“薬草園の手伝い”という課題は、きちんと与えられ、薬草園に連れて行かれました。

しかし、言葉だけでは真実にはならないと、僕は感じました。

薬草園には違いありません、あれだけ立派な薬草園は始めてみました。

しかし、これは手伝いという範囲なのだろうか?

僕はこれから一週間やっていけるのだろうか?

レスタさんの疲労した顔を見ていると、僕は自信がなくなってくる。

 

「それでは、薬草園の作業について、ご説明したいと思います。」

薬草園の入り口で、耶麻がそう言った。

「「よろしくお願いします。」」

とりあえず、礼儀正しくレスタ達は礼をする。

「雑草と薬草の見分けをまずつけてください、間違えて採ってしまっても捨てないで

 ください、それから無断で持って行くのも禁止です。」

「はい。」

「あと、なるべく一人で行動はしないでください、それからレスタさんなら剣を、

 デパスさんはロッドを携帯はしてください。」

「「・・・・・はい?」」

何故、戦闘道具を持ち歩く必要があるのだろうか、と思わず、二人の声に疑問符が付けられる。

「あの、何故、武器携帯が必要なのでしょうか?」

デパスが率直に聞いた。

「護身用です。」

耶麻の応えに、聞きたいのは用途ではなく、理由なのだと二人は心の中で突っ込む。

「な、何に護身するんですか?」

今度はレスタが聞いた。

「・・・薬草園を囲むように置かれている物が見えますか?」

耶麻は質問に答えることなく、薬草園の一部を指す。

「・・・・野菜、か?」

そこにはトマトやピーマンなどの野菜が植えられていた。

「あれが、何か?」

「あれは薬草ではありません。」

それぐらいは分かる。

そこに、足下にネズミが一匹通り抜け、薬草園に向かっていった。

ネズミが薬草の手前、野菜の前に来ると・・・・。

“バクンッ”

「「・・・・・・・・・・食った。」」

ネズミの前にあったトマトから、かなり凶悪な口が出来、素早くネズミを捕らえ、

再び、元のトマトに戻った。

「防犯、および害虫駆除用の食用野菜です、気を抜くと襲ってきますので、

気をつけてください、あと、むやみに近づかないようにしてください。」

淡々と話す耶麻に、防犯という範囲ですむのか、言われなくても近づきたくないと

思う二人。

「では、除草作業と水まきをお願いします、それから・・・。」

耶麻は二人にマスクを差し出した。

「奥にあるのは毒草です、花粉に毒が含まれている場合もあるので、これをしてください、

 しばらくは保ちます。」

「暫くしたらどうしたら良いんでしょうかねえ?」

引きつる顔を押さえながら、レスタは質問する。

「何とかしなさい。」

「・・・・・・・・・。」

物腰は丁寧ながら、先ほどから有無を言わせない威圧感を感じるのは気のせいだろうか。

別の意味で、教官より質が悪いと感じる。

「それでは、私は向こうで作業をしていますので、何かあったらおよびください。」

そう言って、耶麻はとっとと行ってしまった。

「・・・・・・毒草の方、どうする?」

短い沈黙の後、レスタが口を開く。

「とりあえず、危ないと思ったら言ってください、毒回復の呪文唱えます。」

「頼むわ。」

そうして、二人は(特にレスタは珍しく)大人しく作業に移った。

 

「あいつら、俺の時より大人しく言うこと聞いてるじゃねえか。」

「そりゃ、お前と耶麻とじゃ動かし方は違うだろ、無言の威圧はお前には無理。」

「俺だってやれば出来るぞ。」

「沈黙を三分ぐらい保たせれてから言えよ。」

レスタ達の様子を部屋で眺めながらリュートとディルスは話す。

“ギャ〜!!”

「おい、レスタの奴が、植物に襲われてるぞ。」

「食虫植物を植えた覚えはないんだが・・・・・・ああ、ありゃ、ファルムつー、

 植物モンスターだな、薬草狙って現れるんだよ、結界張ってても、地中から入り込む

 やつもいるからなあ。」

「食用野菜が加わり始めたぞ。」

「防犯用だからな、動いて貰わないと困るだろ。」

生徒が襲われていても、慌てることもなく助ける気配もない二人を、カルマはどうしたものかと小さくため息をついた。

“デパス、何とかしろ!”

“火炎魔法が使えません!”

窓の外からは、そんな会話が聞こえる。

「魔法封印結界か?」

「火炎魔法なんか使われて、薬草が台無しになっても困るんでね。

ちなみに大地魔法も畑が滅茶苦茶にされたら困るので無効化。」

「厳しい戦闘条件だな。」

「植物には氷結魔法も有効だということを思い出してくれたら良いんだがねえ。」

真夏の日差しを遮る森の奥深く、薬草園で、熱い農作業が続く。

 

 

「二人は除草作業、もう一人は俺と木材運びだ。」

「もしかして、これ全部引き抜くの〜?」

「もしかしなくても当たり前だ。」

目の前に広がる、青々と茂った草を目の前にセディールが顔をしかめる。

「我木材運担。」

「それじゃあ、私たちは除草作業ね。」

そんな彼女を無視し白清とナーシスは話を進めていた。

「ちょっと〜、私の意見は〜。」

「木材運びしたいの?夏樹さんと一緒に。」

「別にそういうのは無いけど〜。」

夏樹と仕事することのほうが大変そうだと思われていて、失礼な会話ではあるのだが、

夏樹は何も言わず、黙って待っている。

「もう、これじゃあ、薬草園の手伝いと大して変わらないんじゃない?」

「だから労力は同じだって、教官が言ってたでしょ。」

「絶対、蚊に刺される〜。」

「さっさと始めるわよ。」

ウダウダとやる気のないセディールにナーシスが言った。

「注意事項、建物の中には入るな、腐った部分もあって危ないからな、

 それから、井戸と噴水辺りにもだ、あそこら辺はまだしなくて良い。」

「何で〜、どうせ全部刈っちゃうんでしょ〜。」

「質の悪いものが住み着いていてな、引きずり込まれたくなかったら近づくな。」

井戸なら落ちたら危ないとかあるが、“何”に引きずり込まれると言うのだろうか。

「ちょ、それ、どういう・・・。」

「言ったままの意味だ、ギルドに依頼はしているが、こんな田舎町だから、後回しに

 され続けている、まったく使い物にならん。」

答えらしい答えもせず、夏樹は言う。

「おかげで誰も近寄らなくなって、尚更、質が悪くなった、今回、牧師が来てくれるので、

 喜ばしい限りだと、村の奴らは喜んでいた。」

「牧師が来てくれるまで、あのままと言うことですか?」

「この村に、そう言った事が出来る奴がいなくてな、俺は強制撤去しか出来ん、

迷惑をかける奴に向けるほどの寛大な慈悲は無いからな。」

そう言って、さっさと作業に移れと促した。

「寛大どころか、慈悲自体無いんじゃないの。」

草をむしり取りながらセディールがぼやいた。

ナーシスは少し離れたところで、無言で除草作業をしている。

チラリと視線を移せば、夏樹の言っていた井戸が見えた。

古く、当然のごとくボウボウに茂った草が生えている。

暫く見ていると、蝉の鳴き声に混じり、かすかに何か聞こえてくるのに気がついた。

「キャー!!」

「何?!」

いきなり叫び声を上げたセディールの声に反応し、ナーシスは思わず立ち上がり腰に付けていた短剣に手を伸ばす。

「い、井戸、井戸。」

「井戸がどうかしたの?」

泣きそうな顔で迫るセディールを落ち着かせ、ナーシスが聞いた。

「あれよ、あれ、聞こえない?」

「あれ?」

わずかに耳に意識を集中させる。

“ゥ・・・ウ・・・・ウウゥゥ・・ウゥ”

「うめき声?」

「あの井戸からしているのよ〜!」

どうやら夏樹の言っていた、質の悪いものらしい。

「夏樹さんが近づくな、て言ってたんだから、近づかなければ大丈夫よ。」

「いやよ、気持ち悪い。」

ナーシスは、そんなセディールの様子にため息をつく。

「なら、あなたはこっちをやって、私がそっちの方をやっておくから。」

「あ、あまり離れないでよ。」

「ついこの間まで、魔物相手に戦ってたじゃない。」

「魔物と幽霊は別!魔物はさわれるけど、幽霊はさわれないじゃない!

 私、お払いなんて出来ないもん。」

「はいはい。」

炎天下の中、仕事はさっさと済ませたいと考えるナーシスは、セディールを落ち着かせ、

なんとか作業に戻った。

 

 

ナーシスの日記より抜粋―

セディールの意外な一面とでも書いておこう、リュートに言うと、またケンカのタネになりかねないので、黙っておく。

しかし、夏樹氏が戻ってきた時に言った彼女の「慈悲が無くても良いから、撤去させて!」の言葉に、女というものに対して、あきれる。

自分も、女であるいじょう、やはりああいった面があるのかと思うと、気が重い、やはり女同士での作業は私には慣れない。

夏樹氏との作業は私は文句はないが、白清とセディールでは、彼女のサボり癖が出かねないので仕方がない。

明日も除草作業だ、思ったより広い教会だと実感する。