守護霊達の事情(3)
「この式で分かるようにY軸とX軸との関係は・・・「晴夜」」
教師の説明する言葉の合間に晴明が声をかけてきた。
「何だよ。」
音にせず口だけ動かす。
「聞こえぬか?」
「何が?」
授業中に声をかけるなと思いながらも晴明の言いたいことを理解しようとする。
不意に耳に何かが聞こえてきた。集中してみると笛の音だと分かる。
「笛、だな。」
だが、この授業中に笛なんぞ吹く奴はいない。
「・・・・・少し出てくる。」
いっそそのまま消えてくれ。
俺の返事を聞く前に晴明は消えた。
「おい、晴明。」
晴明が消えて暫くすると道満が現れた。
お前ら、守護する奴の側離れて本当に守護霊する気あるのか。
「晴明ならどっか行ったぞ。」
てなわけで、俺の授業の邪魔するな。
「どこへだ?」
「知らねえよ、さっき笛みたいな音が聞こえたら、とっとと行ったぞ。」
「ふむ・・・やはり、な。」
「?」
道満のどこか納得した態度に俺は思わず視線をそちらにやった。
「何かあるのか?」
「いや、なに、まだはっきりとしたわけではないからな。」
そう言うと隣の芦山のいるクラスに壁を抜けて消えていった。
「おい、亜矢部、ちゃんと聞いているのか!」
不意にかかった声に俺はハッとする。
教師が黒板の前で呆れた顔で俺を見ていた。
悪霊かあいつらは・・・。
戻ってきてからの晴明は無口だった。
まあ、それだけなら別に珍しいことでもない。喋るときは喋るが黙るときは黙る奴だ、が。
いかせん、様子がおかしい。なにか深く考え込んで、いつもより人間くさい。
平和なはずが落ち着かないのも理不尽な話だ。
「亜矢部、いるか?」
放課後になり、こんどは芦山がやってきた、後ろには当然道満がいる。
「おう、何だ?」
「バンドの件だけどな、良い線いく奴がいたぞ。」
俺は密かに(大抵の奴は知っているが)バンドを組みたいと思っていた、
俺自身ギターなら弾ける、芦山はベースで気が向けば手伝うというアバウトな状態だ。
まあ、それでもストリートミュージシャンのようなまねごとをやってはいるが・・・。
良い実在が確保できればそれにこしたことはない。
「マジか?」
「私が言うんだから間違いないだろ。」
その自信はどこから出てくるのか一度訪ねてみたいもんだ。
「で、誰なんだ?」
「転校生だよ、さっき音楽室でピアノと五線を交互に見ていた。」
ということは、作曲か何かか・・・。
「ところで晴明、あの笛の主には会えたか?」
道満が晴明に尋ねた。
「いや、向かう途中で笛がやんでしまった。」
「なら、もしかすると会えるかもしれんぞ。」
「何?」
道満の言葉に眉を寄せて反応する、が、道満はそれ以上答えようとしない。
「では、行くとするぞ晴夜。」
おい、勝手に決めるなつーの・・・まあ、今回は俺も興味あるから良いけど。
「お兄ちゃん、どこ行くのよ?」
音楽室に向かう途中で由利と会った。
「別に。」
「寄り道しちゃいけないだ〜、なんなら帰ろうよ。」
「お前は俺と帰りたいんじゃなくて、晴明と帰りたいんだろ。」
「当たり前じゃない、誰が物好きにも自分の兄と帰るのよ、私はブラコンじゃないわよ。」
俺も好きこのんで貴様と帰りたくないわ、このミーハー愚妹。
「音楽室に行くんだよ、とっとと帰れ。」
「え〜、私も行く〜。」
ついてくんな、と言ってもついてくるのがこいつだ・・・こんな奴ばっかか俺の周りは。