ピアス
「ライター持ってない?」
先ほどからゴソゴソとリビングを探し回っていた刹那は、目的の物が見あたらず、
ソファでくつろいでいたルシファーに聞いた。
「あるが、何に使うんだ?」
ジッポライターを渡しながら聞いてみると、一度だけ火をだしながら答える。
「穴、開けるんだよ。」
「穴?」
簡潔すぎる答えに意を得ないでいると、刹那はライターのふたを閉めながら補足した。
「ピアスの穴。」
ああ、成る程と納得すると共に、別の考えが浮かんでくる。
「ピアスをするのか?」
「うん。」
また、随分唐突だと思ったが、もしかしたら急に思い立ったのかもしれない。
彼ならあり得る。
「ピアスなんか持っていたのか?」
「昨日買った。」
昨日と言うあたり、本当に急に思い立ったのだろうか。
「何なら手伝ってくれない?」
冷凍庫から氷を取り出して、刹那は言った。
赤い小さな石のピアスが真っ黒な箱の中で並んでいる。
彼の好みからすれば青色でも選びそうな気がしたのだが……。
「別に、何となく気に入ったから。」
答えは至極簡単だった。
渡された針をライターであぶる。
「ほら、かしてみろ。」
出された右耳に針を当てる、が、思ったより簡単にさせず少し手こずった。
プツと言う感触と共に針が少しずつ入っていく。
「あ。」
刹那が何か言おうとしたとき、血が流れてきた。
「ああ、すまない。」
そう言いながらもピアスを付ける。
流れたままの血と赤いピアスが同化していくように見えた。
思ったよりも似合っている。
「何か拭くもの、ない?」
血を拭った指を見ながら聞いてきた。
「痛かったか?」
耳に手を伸ばしながら聞く、ヌルリとした感触が指にまとわりつく。
「いや、平気。」
拭く物が見つからず、指に付いた血を舐め取る。
チラリと見える舌に、少しずつわき起こる感情があった。
無造作に血の付いた指を差し出す。
刹那は一瞬、ルシファーの顔を見るとその指の血を舐めた。
まるで吸血鬼だと感じる。
赤い血を舐め取る赤い舌、白銀の髪から覗く赤いピアス。
惹きつけられるように耳に残る赤に唇を寄せた。
口の中に広がる鉄とピアスの無機質な表面の感触。
不意に刹那が片腕をゴソゴソと動かし、ピンッという音がした。
何の音かは予想が付く、一枚のコインだ。
「どっち?」
尋ねてくる声に耳に唇をおいたまま答える。
「…………裏。」
正解を答える変わりに小さなため息が聞こえた。
それを合図に僅かに体重をかけて押し倒す。
「まだ片方残ってる。」
テーブルの上に転がる赤いピアス、針、ライター、溶けかけた氷、
それらが中途半端なまま放り出されていた。
「後からちゃんと付ける。」
「今度は失敗は無しね。」
了解の意を込めて口付ける。
まだ微かに血の味がした。
「出来たぞ。」
残りのピアスを付けてやると、気怠そうな体を起こして鏡の前に立つ。
両耳に付いたピアスを確認するように眺めていたが、満足したのか戻ってきた。
それを抱き寄せ髪を撫でる、細い髪のサラサラとした質感が好きだ。
銀色の合間から覗く赤い石。
「似合ってるな。」
そう言うと、視線を挙げて刹那が見てくる。
「父さんも付ける?」
「いや、遠慮しておく。」
いまいち、そう言う物にピンとこない。
ふ〜ん、と納得したのか、してないのかといった声を出しながら刹那はもたれる。
「魔界色に揃えてみようか?」
思いついたようにボソリと言ってきた。
「マーブルランドはどうする?」
「あ、そうか。」
虹色なんて派手すぎだ、二人して少し笑う。
「なら今度、アイスランドの色でも買ってくるとしよう。」
冴え冴えとした青い色。
どこまで揃えられるだろうか?
後書き
私はピアスはやっていないので、穴の開け方すら知りません。
そんな奴が、こんなネタ書くなよ、とも言われかねませんが、
やってみたかったんですよ、ピアスネタ。
CPに関しては、自分の中では今更なのでノーコメント。
というか、過去を見返してコメントのしようが無いのです(汗)