三上と優
by P.蘭◎ さま

10万打記念にいただきました、三上と優です。
当サイト初ビジュアルです!
ふたりのプロフだけでこ〜んな細部までイメージできるなんて素晴らしい!

で、管理人、ちょっとしたSSを付けてみました。
ラブラブあまあまなイラストなのにどうよってお話です。
ご興味のある方だけズズズイっとスクロールしてくださいね♪




























水彩絵の具で塗りつぶしたような澄み渡った青。
果てしなく続く高い空を見上げれば、脳裏に浮かぶのは・・・・・・あの秋の日。





事務所との契約が決まり、優をひとり残して東京へ行くことが多くなってきたころ、突然オフになったことがあり、ためらうことなく朝一番の飛行機で優の元へと戻った。
さわやかな秋晴れのその日、せっかくだからどこかに出かけようと誘ったのに、優はうんとは言わなかった。
行楽日和のこんな日にわざわざ人ごみに飛び込むことはない、ゆっくりのんびり過ごしたいと。
思えば、夜には戻らないといけない強行スケジュールのおれの身体に気を遣ったのだろうが、飛行機の中、意気込んでタウン情報誌の行楽特集を隅から隅までチェックしていたおれは、少しばかり残念だった。
だが、ふたりで一緒に過ごせることには変わりない、場所なんてどこでもいのだと思えばすんなり納得でき、笑って優の提案に頷いた。
それなら庭でランチをとろうと言い出したのはどちらだったのか、今では思い出せない。








テラスにテーブルセットを出そうとしたら、優に止められた。
どうせならピクニック気分でと、ランチボックスにいろんなものを詰めだした優を横目に、おれは大きなレジャーシートを探し出した。
麻野家の庭は結構広く、一角に芝生のスペースがある。
ゴルフが趣味だったという優の父親が、生前、パターの練習をするために芝を敷き詰めたらしい。
そこにシートを敷き、飲み物やらを準備していると、ほどなくランチボックスを手に、優が庭におりてきた。
さすが手際がいいな、と半分褒め、半分からかいながら言えば、冷凍ものばかりだからと、それでも嬉しそうに優は目を伏せた。
唐揚げにウィンナー、少し甘めの卵焼きはおれの好みの味付けだ。
のりを巻いたおむすびの具は、梅とおかか。
澄み切った青空に、ところどころの白い雲。
汗ばむような陽気も、秋風が肌に心地よく、さわやかな気分にさせてくれた。
レジャーシートに座って、おにぎりをほおばりながら唐揚げをつまみ、見慣れた光景のこんな場所でも、ふたりでいることが幸せをもたらしてくれるのだと実感する。
見つめあい語らい、そんな恋人同士なら当たり前のことも、溢れかえる人の中ではおそらくできなかっただろう。
慌しい東京での時間。
誰も待ってはくれないし、ついていかないと置いていかれて困るのは自分自身。
誰も助けてくれないし、真の実力だけが問われる勝負の世界。
もちろん勝つつもりでいたが、全くの別世界に戸惑うのはどうしようもなくて、ひたすらがむしゃらに食らいついていた。








つかの間の休日。
ランチボックスも空になり、以前よりも格段に減っていたふたりの時間を埋めるかのようにたくさん話し、そろそろ話題も尽きたころ、おれはゴロンと寝そべった。
そっと近づいてきた優が、慣れたしぐさでおれの頬や髪を撫でるから、少し甘えてみたくなって優の膝の上に身体を預ければ、後ろからそっと抱きしめられた。
見上げれば、バックに秋空を従え微笑んでいる優。
吸い寄せられるように交わすキス。
誰に憚られることもない、おれたちだけの空間。
流れる穏やかで優しい時間。
身体に感じる愛しい重さと優しいぬくもり。








おれはどっぷり浸かっていた。
背中に感じるぬくもりとは反対に、絡まる指先が少しだけ冷たいことにも。
東京での暮らしを話して聞かすおれに向けられる笑顔の中に、時折浮かぶ淋しげな瞳にも。
おれは気づかなかった。
いや、本当は気づいていたのだ。
気づいて気づかぬふりをしていたのだ。
その先に描いているふたりの夢のような暮らしを得るために、多少の我慢は否めないと思っていたから。








おれは優を愛していた。
ありったけの愛情で守り、幸せを与えていると思っていた。
でも、実際、溢れんばかりの愛で守られていたのは、おれのほうだったのだ。








水彩絵の具で塗りつぶしたような澄み渡った青。
果てしなく続く高い空を見上げれば、脳裏に浮かぶのは・・・・・・あの秋の日。





どこまでも続く青い空を飽きることなく眺めていた、憂いを帯びた・・・・・・優の瞳。