ストーリーイラスト
『男子禁制の令』

BGMは『タブー』でヨロ


物語
みやには亭主がいる。
子供がいるのだから、とりたてておかしな話ではない。
しかしこの亭主、困った事に仕事をしない。
そもそも職業が特殊であるから、働こうにも思う通りにはいかないというのがその原因だ。

さて、S+B乗組員には実は一つだけ鉄の掟がある。
S+B号(仮)男子禁制
というのがそれだ。
好い加減な連中揃いではあるけれど、これだけは皆が皆、忠実に厳守している。
男はモメる!という論理が是である事に全員が納得しており、
秩序は完璧に保たれていた。…そう、あの日までは…

惑星開発事業団体の記念パーティーにホステス要員として雇われ、会場となる未開の惑星への渡航途上の事である。

「『孤島の士』より『木枯の姫』へ、状況は?オーバー」(BGM『ピンク・パンサー』のテーマ)
「『木枯の姫』より『孤島の士』へ、予定通り10秒後に作業完了。オーバー」
「『孤島の士』より『朽木の僧』へ、カウント・ダウン開始。オーバー」
「『朽木の僧』了解。…5・4・3・2・1…」
「突入!」

プスンと音を立て、電動ドアが開く。
驚いて視線を巡らせたみやは、その先に鬼の形相で佇む三人…あも、へる、かえを見付けた。
みやとシーツの間には、一人の男が同じく目を見開いたまま凍り付いている。
そこに言葉は必要なかった。
張り詰めた空気の中、沈黙を打ち破ったのはみやである。
「こ・これっ!旦那!」
S+B号(仮)男子禁制鉄の掟だ。例外は認められない。
「だから何だというつもりなんですかねぇ、みやさんよぅ」
あもが鶴の構えで威嚇する。
「旦那が仕事なくて暇やって言うからホラ、たまには夫婦のナニをナニしようとアレよ…ネ♪」
かえが無言のまま、スラリと真剣を抜いた。
鉄の掟、もはや忘れたとは言わせんぞ」
へるが若い女性層を意識したという新型デザイン電子銃を両手で構え、
「あんな訳のわからん武器で殺されるのは絶対にイヤだ」
とみや夫婦は思った。
「…っちゅうかさぁ、なんで勝手に他人の部屋入って来るかなぁ?その辺、皆さんの常識ってどーなってんスかねえ?!」
そして唐突に、みやがキレた。世間一般にいわゆる逆ギレである。
話をすり替えドローに持ち込もうという作戦だ。その見え透いた魂胆にみや自身、頬を少し紅潮させている。
「!…」
みやのこめかみにかすかな青筋を発見したあもとへるは反射的に後退りした。
コチラのこめかみには対象的に冷たい汗が浮かんでいる。
あもとへるはあきらかに怯えていた。
実はみやが怖いのである。
付き合いの長さの割には、底が知れないところがみやという女にはあった。
何という実感のなさがまた恐ろしさを煽る要因だ。
二人の怯えに気付かない風のかえが口を開いた。
「旦那さんさぁ、もしかして日本人?」
金髪なのにあからさまな日本人顔の男は気だるく視線をそらし
「ハァ」
とだけ答えた。不遜な態度に眉をひそめながら
「あたしアンタの事知ってるわ。火の國・木の葉の里の忍者やろ」
とかえが言い、驚いた様に男は視線をかえへと戻した。
「なんでんな事知ってんの?」
額あてを後頭部にまわすというハイセンスの持ち主・木の葉のファッションリーダーったら俺の事ヨ
って自惚れのイチビリ君のウワサはこっちまで届いてるし」
「て事はアンタも忍者?」
「肯定は出来んけど、まぁ蛇の道は蛇ってね」
かえはニヤリと口の端で笑い、小気味良い音をさせて刀を鞘に収めた。
みやとその旦那の緊張が解れたのが見るからにわかる。
あもとへるが目を丸くして驚き、一同がかえはみや夫婦をよしみで許したと思っていた。
しかし微笑みをたたえベッドから降り立ち、口を開きかけたみやに向かってかえは言った。
「『冷たい方程式』って知ってる?」(参照
お互いに、口元の笑みは消えていた。戸惑いつつもみやは答える。
「モチロン知ってるよ。でもそんなん、この船の燃料とかってあたしが管理してるから、ちゃんと計算して…」
「さっき三人で会議うって、鉄の掟破戒者には島流しの刑って決まってん」
淡々と話すかえの表情には微笑みさえうかがえる。
『冷たい方程式』にのっとって、密航者には島流しって事でエエとこっしょ?」
「でも…そんなん…」
口ごもり目を泳がすみやの言葉を遮り、へるの手元を指差しながらかえは続ける。
「あの変な武器で死刑とどっちがエエ?あの先っぽから丸いビーム出んねんで。フヨフヨ〜って」
島流し!
即答。
「まぁ、安心しぃな。何つーても忍者やから。大丈夫!
満面に笑みを浮かべ軽く言い放つかえに対してみやは既に泣き声だ。
「そら旦那は忍者やから大丈夫!かも知れんけど、あたしはどーなんのよ?!」
大丈夫!
それまで怯えて唯々立ち尽くすのみだったあもとへるが唐突に口をはさんだ。
「みやは恩赦やから!」
恩赦の意味には蒙昧だが、このS+B号にとってみやを失うのがどういう事かというのは一同明白だった。
当の本人ですら怒涛の卒検連続三回落ち再々現はもう絶対にイヤだった。
役立たず』かえの目が二人を睨んでいた。

こうして救難ポッドに旦那を詰め込み島流しの刑は執行された。
「自動操縦でちゃんと地球まで帰れるから大丈夫!
コンピュータの設定を終えたかえが言い、みやももはや刑の執行妨害をしようとは思っていない。
「帰ったらちゃんと仕事すんねんで?!アンタやったら無事に帰れるから大丈夫!な?」
ゆっくりと扉が下り、悲しげな旦那の言葉を残してポッドはS+B号を離れていった。
大丈夫…」

「それにしても…」
嵐が去り、旦那の手土産だという火の國謹製大吟醸を手酌でやりながらへるが言った。
「…攻めやってんなぁ〜」
「…上…やったな」
そうあもが応え、続いてかえが落とした
「あたしも上やで。どっちか言うたら」
かえがみやに怯えないのは、付き合いが長い短いとかが理由ではないんだなと、おぼろげにもあもとへるは気付いたのだった。


解説
冒頭の暗号名で呼び合うシーンは、ドリフっぽいイメージで捉えて下さったら幸いです。
誰がどのコード・ネームか、想像してみるのもまた一興♪
(あと「10秒後に作業完了」って何の?!とか)

しかしムラのある絵だ。
後ろの三人はありゃ何だ?!
どーせモブだから何でもエエよ、ヘラヘラ〜って描いたら本気でヘラヘラな事に。
右端にいるのは、上から木槌で叩かれひしゃげた『リサ・ステグマイヤー』。
……似てる(プッ

さて今回のゲストは、あえて名前は出さんが某・人気忍者漫画の脇役さん。
前回に続き(第四話参照)カエの説明に頼る構成になったけど、
実際にこの漫画をわしはカエから教えて貰ったのよね。
そんでこのキャラにハマったんが去年か一昨年?
同じ頃、みやに三人目出来て、更に旦那さん失業事件とかもあってこのネタ思いついたんやが、
思い付いてから描き上げるまでの長かった事!
腰が重いにも程がある!
しかしまぁ完成して良かったです。御の字★

そういへば、あもとへるがみやを怖がってるってのは実話に近いフィクションよ。
別にそない怯えてないし。なんぼ元ヤン言うても(笑
でも実話に近いってのは、高校時代、一部で彼女が『ルール・ブック』って呼ばれてた事による。
みやが「こうしよう」言うたら何となく皆が従うってのがあって、そっから膨らませてみた。
状況としては『うる星やつら』のラム・ラン・弁天・お雪の関係を意識してみた。
お雪って実はムチャクチャ怖いねん。むっちゃ強いし。でも自分で意識してない天然ちゃん。
で、それを知ってるんはランと弁天だけで、ラムは普段のしとやかで優しいお雪しか知らんねん。
そこで生まれるすれ違いの可笑しさとか表現したかってんけど、どんなもんスかねえ…?

それにしても最近、うちの絵描きPCは末期。
直線ツールが使えない。
何故か直線ツールで縦の線を引くと必ず強制終了食らってしまう。
横だと落ちないのに何故だ縦線!!!
仕方ないので縦線が必要な時はまず横線引いて、90度回転させて使ったヨ…トホー
そんな事情(だけじゃない)があって、こんな『ソノ為だけ』みたいな部屋になっちゃったんスが、どーなのヨ…

それでは最後に、スッカリ恒例となりましたコチラをどうぞ★
あと、どうでもイイんですが画像クリックでラブラブ・ピンク・フィルターなしの画像も観られる様になってたりして…

2006 02 21