この詩編は「最も偉大な詩編」とも「最も難解な詩編」とも言われます。それと同時に、スコットランド信条を記したジョン・ノックスが、その信条の最後に、この詩編の2節を引用したことも有名な話です。ノックスの場合は祈祷文で、しかも後半は自分自身の言葉になっていますが、下記のとおりです。「主よ、立ち上がってください。そしてあなたの敵を滅ぼし、あなたの神の御名を憎むものを御前から遠ざけてください。確信を抱いて宣べ伝える力を、あなたの僕たちに与えてくださり。そしてすべての国民に、あなたを知る真の知識を与えてください。アーメン」。
ノックスは、スコットランドの宗教改革のとき、フランス軍に捕らわれてガレー船で奴隷のように虐げられました。釈放されたのちにはエドワードY世のもとで説教家、伝道者として働きましたが、メアリーU世の時には彼女がカトリックに改宗したため、国外逃亡を余儀なくされフランスに逃れました。そのような幾多の困難の中にあってスコットランド信条を書きましたが、主なる神は御心を成し遂げてくださるために必ず立ち上がってくださるという信仰に支えられて、上記のような祈りを献げたのです。
また、この詩編6節以下には、主がみなしご、やもめ、孤独者、捕らわれ人を助けてくださると記されていますが、それもノックス自身が経験したことに重なり合います。その経験が、主なる神は御心を成し遂げてくださるために必ず立ち上がってくださるという信仰を、より強固にしてくれたのです。
わたしたちも、どのような状況に置かれてもそのような真の主権者の御支配のもとに置かれていることを忘れることなく、主よ、立ち上がってくださいと祈り、その主をたたえ、主にほめ歌をうたっていくのです(20,33,36参照)。
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