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ヨブ記28章は《知恵の讃歌》と呼ばれています。しかし、それは人間の知恵を称えているのではありません。人は、猛禽類や猛獣も「あの誇り高い獣」(8節、ベヘモット、レビアタン、ラハブなど、人間の力を遥かに超える架空の怪物)も捜し出すことが出来ない金、銀、鉄、銅(1,2節)、サファイア、金の粒(6節)等を探し出し、掘り出すことが出来る知恵を持っています。それほどの才知がありますが、その知恵を賛美する訳にはゆかないのです。
何故なら、わたしたちは真の知恵を見いだすことが出来ず、真の知恵についての分別を持っていないからです。「では、知恵はどこに見だされるのか/分別はどこにあるのか」と12,20節は繰り返していますが、それがわたしたちの現実なのです。その知恵は、純金、銀、縞めのう、サファイア、宝玉、サンゴ、水晶、真珠、トパーズなどと比べることが出来ないほど価値ある物なのですが、わたしたちはその知恵のあるところを知らないし、どこにも見いだすことが出来ないのです。それほど人間は無知であり、愚かなのです。
そのように、わたしたちは神の知恵について無知なのですから、御前にどれ程正しいと思ったとしても、自分の苦難を正当化できないのです。自分は正しいのになぜ苦難を受けるのか、神が間違っているのではないかと主張してきてきたヨブですが、神の知恵と愛の深さを知り得ようはずがないのです。「深きかな、神の知と旨」「聖きかな、神の知と愛」「高きかな神の知と業」と、東京神学大学の校歌は歌いあげますが、正に然りで、その神の知を究める者はいないのです。ただその知恵そのものである「主を畏れ敬」いつつ、遜ってその知恵を賛美することが、わたしたちにできるひとつのことなのです。
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