歴代誌上の初めの部分には、イスラエル12部族の系図が記されていますが、全部族均等にではなく、圧倒的にユダ部族に偏っています。ユダ族の中でもダビデに関心が集中していて、2:15には早くもダビデの名が出てきます。それを受けて3章からダビデ、ソロモン、そしてバビロン捕囚迄の南ユダの王たちの名前が出てきます。4章に入ってからようやく他の部族に言及されますが、主にレビ族について言及され、他については簡単に終わっています。
この系図を見ていて気が付くのは、イスラエルでは《長子の特権》が重んじられたと一般には言われていますが、決して長子が後を継いでイスラエルの歴史が作られていったのではないということです。既に1章34節には、イサクの子であるエサウとヤコブ(イスラエルと表記)が出てきましたが、次男のイスラエルが《長子の特権》を受けています。またイスラエルの長男はルベンですが(2:1、又5:1参照)、彼ではなく、最終的には四男のユダが後を継ぎますが、ユダの長男エルも主に背き家督は別の者が嗣ぎます。その子孫にダビデがいますが、ダビデは父エッサイの七男で末っ子であり、長子の特権にかすりもしない位置にあります(2:15)。ダビデの跡を継いだソロモンも、異母兄弟も入れると10番目の男子で、ダビデと同様、末っ子です(3:5)。しかし、彼が正当なイスラエルの血筋とされるのです。
そのように、この系図は、長子によって受け継がれていったのではありません。「この人々は、血によってではなく、…神によって生まれたのである」(ヨハネ1:13)という言葉を思い起こすことができるような系図になっているのです。肝心な事は、血肉ではなく神の恵みの選びであることを、このことを通して知り得ます。わたしたちも、恵みの選びによってキリスト者として立ち得ていることを覚え、恵みの主を称えていきたいものです。
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