「呪われたダビデ一族!」。〈文春砲〉なら、そんな見出しを付けてもおかしくないスキャンダラスな事件が、ダビデ家に起こります。
ダビデの長男アムノンは、腹違いの弟アブサロムの実の妹タマル(容姿端麗、
明眸
皓歯
の女性)を、憂き身をやつすほど好きになります。アムノンは父ダビデに、タマルが見舞いに来るようにしてほしいと願い、その願いが叶います。彼は、あろうことか、見舞いに来たタマルを辱めます。タマルは、関係を持ったからにはアムノンの所に留まれるようにしてほしいと願いますが、彼はゴミでも捨てるようにタマルを追い出します。タマルは帰宅後、すべてを兄に話します。アブサロムはこの事は誰にも話すなと命じますが、彼自身の心には、アムノンへの憎悪の念が満ちてゆきます。
そして、二年の月日が流れ去ります。羊の毛を刈る時期で、人手が必要な時です。アブサロムは、父ダビデにアムノンの同行を願い出、許可を得ます。作業後の食事での飲酒により、ほろ酔い状態にあったアムノンを、アブサロムは自分の従者たちに命じて殺させます。その時、彼は従者たちに「恐れるな。…勇気を持て。勇敢な者となれ」(28節)と言いました。聞いたことがある言葉です。イスラエルがカナンに入っていく時、主なる神がヨシュア語った言葉によく似ています(ヨシュア1:9)。
しかし、ここには神はいません。アブサロムが神になっています。アムノンの行為も
傍若無人
ならぬ傍若
無神
の、
瀆
神
的行為でした。これらの一連の出来事を聞き及んだ父ダビデも、神の御心に基づく対応はしていません。アムノンの死を嘆き、逃亡したアブサロムには愛着を抱くだけでした。
神が御子をお遣わしになった世は、そのような神無き世であったのです。
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