異名の中から面白いものをいくつか紹介しておこう。
・我立杣:伝教大師初めてこの山に中堂を建立したとき、諸仏に「我立杣に冥加あらせたまへ」と詠じたことから。
・鷲の山(鷲):慈円(1155~1225。『愚管抄』を著す)が、この山を釈迦ゆかりのインドの霊鷲山に擬して、「鷲の山有明の月は巡りきて我立杣の鏡にぞすむ」と詠じたことから。
・山:拾玉集に慈円の歌に「世の中に山てふ山は多かれど山とは比叡のみ山をぞいふ」とある。
・艮岳:平安京の艮にあたり、根本中堂を王城鎮護の霊場として鬼門を守ることから。慈円の歌に「我山は華の都の丑寅に鬼いる門をふさぐとぞきく」とある。・天台山:伝教大師が開創した天台宗にちなみ、中国の天台山に擬したもの。
・台嶺:台嶽とともに天台山の略称。
・北嶺:奈良の諸大寺を南都とするのに対して。
・都の不二(富士):後水尾上皇が比叡山を見て「みよやみよ都のふじの空はれて月もうへなき秋の光を」と詠んだことから。 |