伝わる温もり
少女の手を引き影が現れないか辺りを窺いながら歩いていると、目の前の重くて自分の力では絶対に開けれそうにない大きな門が開いていて、向こうの方に森があるのが目に映る。
「門が開いているよ。この城から出られるよ!」
まるで自分に言い聞かせるかの様にそう口にする。やっとこの城から出られる喜び、それしか頭の中にしかなく城から出てからどうやって町まで帰るか、少女をどうするかなんて少しも考えていなかったが、今のイコにはその喜びだけで充分だった。
少女の手を強く握り、走り出す。するとまるで門は自分で意識を持っているかの様にイコ達を出さない様閉まり始めたのである。
「急ごう!」
少女の方に肩越しに振り返り早口でそう言う。そしてイコは更に速度を上げるが、少女は唐突な行為についていけなかったのかそれとも地面にあった小石につまずいてしまったのか、門まであと少しというところで大きな音を立てて転んでしまった。自然と動かしていた足は止まり、少女の方を振り返るが立とうとする様には見えず、こけた体制のまま俯いている。門の方を見ればだんだんと閉まっていき、今ここで走れば自分一人は出られるかもしれない。しかし、今のイコにはそんな考えが少しも浮かばなく、ただ重い音を立てて閉まる扉を見守る事しか出来なかった。
再び少女の方を向くと少女の後ろに黒い塊みたいなものが現れ、その中から全身漆黒な女性が現れた。「……お前だね、私のたった一人の愛娘を連れまわすのは」少女を守る為、木の棒を持つ手に力を入れるが、まるで氷の様に冷たい女性の声を聞いて、戦う気はない事を知る。
それから女性の口から、この白くて今にも消えてしまいそうな少女の名前は“ヨルダ”といい、直にこの城を受け継ぐ者だと知った。「お前の様な頭に角が生えた者とは違うんだよ」冷たく言い放つその言葉が自然と耳に入り、視線を逸らして唇を強く噛む。
ここから立ち去れ。そう言い放つと、女性は再び現れた時の様に黒い塊に包まれ、まるで影の様に消え去ってしまった。そして後に残ったのはただ重い沈黙と、鳥達の羽ばたく音のみ。取り敢えずこのままこうしている訳にもいかず未だに俯いている少女――ヨルダに近寄ると、ヨルダは顔を上げ重い口を開きイコに話しかけてきた。しかしイコにはその言葉の意味を理解できず、答える事が出来ない。だが、
そっと、木の棒を持っていない手を差し伸べる。ヨルダは最初戸惑ったのかただ差し出された手とイコの顔を交互に見ていたが、次の瞬間には迷いが消えたのか白くて綺麗な手を伸ばし、しっかりとイコの手を握り返してくれた。握った事を確かめたイコは手を引っ張り、ヨルダを起こしてあげてさてこれからどうしようかと考える。
立ち去れといわれても、門は閉ざされたままなのだから出るにも出られない。ならイコはどうすればいいのか? 答えは簡単だ。ヨルダと共に城に戻る事。自分が無事脱出できるのか、小さなこの力で少女を守りきれるのかは分からない。だが、今やれる事はそれしかないのである。
例え全てが闇に閉ざされても、この細くて白い手からは考えられないほどの心地良い温もりがこの自分の手に伝わる限り、ヨルダが共に行動してくれる限り自分はヨルダを守り続ける。ただその事だけを考えて。
ヨルダとの小さな、けれど自分にとってはとても大きな旅は、まだ始まったばかりである。
イコ、すごくいいゲームだと思います(まぁ見づらかったり操作しにくかったりと色々不満もありますが;)。何がいいって、やはりこのゲーム自体が持っている雰囲気でしょう。大きな城、イコとヨルダの謎多き冒険、緊張感溢れる影との戦い…ドキドキが多くて心臓がもちません;(苦笑)ある意味とても怖いゲームです。こんな大きな城の中、たった一人で何も出来ない少女を守って城を脱出する為に冒険するのですから。
最近またスランプに陥ってますね…。何が言いたいのかさっぱり分かりませんわ;;
イコの口調覚えていなくて断念;
04年11月4日