6 帰ろうぜ

 

 

 

 

 

 

任務で現世から帰ってきた私を待ち受けていたのは

 

 

「ざ、残業…?」

 

 

――何の仕打ちだ!!
そう心から叫んだのは言うまでもなく
他の隊員は何処へ行ったんだと聞けば
現世だの何だのと理由をつけて出払っているらしい
案の定、戻ってそこにいたのは副官の檜佐木だけだった

 

 

「しかも修兵と二人で?」

「ま、言ってもあと少しだけだから手伝えよ」

 

 

確かに机の上には多くの書類が片付いており、
残るは三分の一と言ったところだった。
これぐらいなら一人でやれ、と言いたいところだが
相手は彼氏と言えど上司なのだから迂闊にそんなことを言ってしまえば後が怖い
は黙って仕事の手伝いをするのが賢明だと思い、
檜佐木と向き合うように椅子に座ると書類の整理に入っていく

 

 

「………」

「あんま怒んなよ?が現世から帰ってきて疲れてるのは分かってる…だから―――」

「いいよ、修兵のほうがもっと疲れてるって分かってるから」

「…ありがとな」

 

 

そこで会話が終わってそれっきり喋ることもなく
ただ二人の前にあった書類の一山が減っていく
流れる沈黙に黙々と書類の整理をしていく檜佐木の姿に
――やっぱり副隊長なんだな
そう思ったは手元にあった墨を零してしまった

 

 

「っげ!!」

「何色気のねぇ声出して…って書類の上に墨零すんじゃねぇよ」

「うるさい、大丈夫だって書類の一枚や二枚」

「見逃してやるからさっさと洗ってこい」

「はーい」

 

 

席を立って手洗い場まで走っていくの後姿を見送った檜佐木は
溜息を吐きながらそっと笑いを零す
書類も残るところあと一枚となり、時計に目をやれば既に夜中の一時過ぎ
――どおりで瞼が重いワケだ
檜佐木はそう思いながら最後の書類の整理を終えると、
引き出しから煙草を取り出し火を点ける
一口吸い込み、上を向いて吐いてやると紫煙が空と混じる

 

 

「あれ、もう終わったの?」

が遅いんだろ」

「手に墨が付いたんだから簡単に取れないに決まってるじゃん」

「そーだな…とりあえず残業ご苦労さん」

 

 

言って開けたままだった引き出しから何かを取り出しそれをに投げる
慌ててキャッチしたは手をひろげて見ると

 

 

「あめ?」

「それ、俺のお気に入りの味なんだぜ?」

「蜜柑味が好きなんだ?」

「まぁな、ほらさっさと帰る用意しろよ」

「あ、うん」

 

 

橙色の包みを開けてその小さな飴玉を口の中に放り込む
ほのかに香る蜜柑の匂いに広がる甘み
舌の上で転がしながら自分の机の整理をして帰る用意をする
檜佐木はまだ吸ってすぐの煙草を灰皿の中で潰すと鍵をもって扉の前に立っていた

 

 

「閉めるぞー?」

「待ってよ」

 

 

隊室の電気を消して出てきた
修兵はゆっくり扉を閉め、鍵をした。


帰り道、は晴れた夜空に瞬く星を見上げ立ち止まる
先を歩いていた檜佐木は後ろから足音がしないことに気づき
月明かりの下、振り返って見てみれば星空を見上げているの姿があって
何故か今にも消えてしまいそうに見えてしまった。

 

 

「おい、

「何ー?」

「帰ろうぜ」

 

 

――星なんて歩いてでも見れるだろ?
そう言って檜佐木はの元へ行くとそっと手を掴む
は思わず目を星から檜佐木に移すがそこは暗く、
唇に違和感があり、声を出そうとすれば舌が滑り込むように入ってくる
まだ口の中に残る蜜柑の味がして充分に堪能されると唇は名残惜しく去っていった

 

 

「ふ、不意打ちなんて卑怯な!!」

が星なんか眺めてるから悪いんだよ」

 

 

そう言って手を繋いだまま家路をゆっくり帰ったのは二人だけの秘密

 

 

 

 

 


FIN...


無理矢理お題にしましたって感じですねコレ…
久しぶりの檜佐木修兵と一緒に帰り隊!!!ですね(笑)

飴玉ネタは2回目です(しかも二つとも修兵からサンへw)

ありがとうございました!!!