第4回戦! アルル VS シェゾ
とうとう大会も次で半分! 早いなぁー……選手宣誓をしたのがついさっきの事のように思えるよ。でも、ここまで来たからって油断は禁物。更に気を引きしめて頑張らないと!
「頑張ろうね、カーくん」
右肩につかまっているカーくんの頭を右手で撫でながら自分にも言い聞かせるようにそう言うと、「ぐー」カーくんも気合いバッチリみたいだ。小さな右手をぴょこっと上げながらそう答えてくれた。
さーってっと。次のボクの相手は誰かなー? カーくんの頭に乗せていた手をボクの額にくっつけ、未だ来ない相手を探す。と、そう遠くない所で、思わずボクの目を疑ってしまうような光景が目に入ってきた。
辺りを見回す事でさらりと流れる銀髪から覗く青いバンダナ、膝裏まで届きそうなマントをなびかせながら髪とは対照的な漆黒の服を着こなし、右手には向こうまで見渡せるほど透き通った透明の剣を持つ男。これはボクがあまりにも元の世界を思う気持ちが見せた幻だろうか。あっちの世界にいた時にはあんなにうざったく感じた――だって、ねぇ――彼の存在を視界に入れて一つ瞬きをした後、それでもこちらに近付いてくる彼の姿があったのでこれは現実だという事を実感したボクの心には、言葉では表現しようのない温かいものが広がっていく。
その温かさに押され、向こうの世界では彼の姿を確認したら絶対にしない事を、思わず口にしてしまった。
「シェゾっ!!」
両手を口の横にそえ、もうすぐ春だというのにまだ冷たさを含む空気をたっぷりと吸い込んで、もう“叫ぶ”という表現が近いほど大声で彼を呼んだ。別にそんな遠い所にいる訳ではないのに思わず“叫んで”しまったのは、この世界に来て初めて見た元の世界の住人に、ボクだけではないという安堵感があったからだと思う。
ボクから見てもはっきりと分かるほど肩を震わせ、弾けるようにこっちを見たシェゾ――全くボクに気付かなかったのは、見知らぬ世界に来ちゃったから取り敢えず状況判断していたせいだね、きっと。でもシェゾが驚くなんて、珍しいもんみーちゃった――。吸い込まれそうなほど深い藍色の瞳と視線がぶつかった時、その瞳が大きく見開かれた。
前に進みだそうとしていた足が止められて、口がわずかに動く。しかしそれっきり固まってしまってシェゾは動かなくなってしまったので、ボクの方から走って彼に近付いていった。ボクの心は知り合いに会えた嬉しさに満ち溢れていたので、何か行動を起こさずにはいられなかった。
「シェゾ、久し振りっ!」走りながら再び声を掛けるが、相変わらずシェゾは何も喋らない――この顔、写真に撮って見せてあげたいなぁ――。なので、シェゾの前で足を止めると、嬉しさのあまり体がむずむずするボクは感情のままに言葉を吐き出した。「元気にしてた? 皆の様子はどう? 何か面白い事あった? それにしても何でシェゾがここにいるの? ぷよ勝負中に飛ばされた? 他にも誰か来てる? これからどうするつもり? ……相変わらずヘンタイ?」
それでもやっぱり無反応というのは面白くないのでシェゾが絶対に反応を示してくれる単語をさり気なく入れてみれば、案の定、呆然とボクを見詰めていた彼はその言葉にぴくりと眉を動かし、見開いていた目をすっと細めて眉間にシワを寄せる。
「オレは“ヘンタイ”ではない。大体お前はいっぺんに質問をしすぎだ。それでは答えられるもんも答えられん」
否定を入れるのを忘れずに、ボクの質問はその言葉で片付けられてしまった。まぁ、シェゾが律儀に答えてくれる訳ないしそんなのシェゾじゃないから――うっ、考えたら鳥肌が立った――、答えに期待はしていなかったけどね。もちろん全部知りたい事ではあったけれど、それよりも今はこうやって喋っている事に心が満たされていた。
ここの世界に飛ばされてもう随分と日が経つ。皆優しいしここでもぷよ勝負が出来るから毎日満喫はしているけれど、やっぱり心の奥底には心細さと不安感がいつまでも住み着いていた。
ただこうやって知っている人が傍にいるだけでそれらの感情から解放されて、ボクの顔は自分でも分かるほど自然と笑みを浮かべる。
「でもまぁシェゾでも会えて嬉しいよ」
文句を言わないボクに違和感を覚えたんだと思う。シェゾは相変わらず、せっかく整った綺麗な顔を歪めて探るような視線を送ってきていたけれど、急に目を閉じて小さく笑い声を漏らしたかと思えば、
「オレもお前に会えて嬉しいぞ」
てっきりまた何だかんだと文句を言われるもんだとばっかり思っていたので、意外な返答に反応が遅れてしまった。
「お前はオレのものだからな。勝手にいなくなられては困る」
更にはお馴染みの台詞の応用編までもが投げ付けられて、いつもなら条件反射のように出てくる言葉が脳裏をかすめすらしなかった。一瞬頭の中が真っ白になってしまったので、改めて一つ一つの単語を頭の中に思い浮かべて意味を飲み込むには、意外に時間がかかる。
そんな無反応なボクを見て一体シェゾは何を思ったのか――、分からない。分かったらボクの思考回路はある意味お仕舞いなような気もするけど――だってヘンタイが考えるような事だよ――、取り敢えず今は分からない。
再び藍色の瞳が姿を現し、そして口端を吊り上げて、笑う。
「お前が欲しい」
「ヘンタイー」
「うるさいッ! “ヘンタイ”言うな!!」
まるで合言葉かのように会えば、間髪を入れずに言葉が飛び交う。さっき浮かべたばかりの笑みもすぐに消え去り怒りに満ちた表情をするのも、毎度の事だ。なのに何で繰り返すんだろうねぇーこの人。癖かなぁ? だとしたら末期症状だね。ゴシューショーサマ。
いつも通りの会話。ただ少し違ったのは、全く変わっていないシェゾに呆れていつもは叫んで言う台詞に力が入らない事と、当たり前だった会話を久し振りに交わせた喜びで思わず頬が緩み、口元を左手で押さえながら彼の視線から目を逸らした事。本っ当、変わらないなぁ。そう思いつつも心に出来た隙間は確実に埋まってきていて、そう実感すると更に笑いが込み上がってくるので、少し後退りシェゾから距離をとる。いくらヘンタイでも実力は確かだし、怒らせると怖いからね。
「とにかく、だ! 今日こそお前の全てをもらう!」
少し離れたせいか、シェゾは右手をすっと上げて剣を天に向けたかと思うと、勢い良く振り下ろして切っ先をボクに突き付けてくる。
うーん、これで抜けてなかったらとってもシリアスな展開なんだけど……。そろそろ自覚を持って欲しいよね。こっちはその抜けた台詞のせいでどれだけ苦労してると思ってんだか。ボクの魔力を狙う前に、もう一回学校行き直した方が良いんじゃないかと本気で思う、うん。……とか思いつつも、今のシェゾがボクにとっての“シェゾ”だから、変えて欲しくないと思う矛盾した事を思うボクもいるんだけど。
まぁ、シェゾの国語力がどれだけ乏しいかなんて今はどうでも良い事。元の世界では日常と化していたシェゾとの久し振りのぷよ勝負! 気合い入るなぁー。こっちに飛ばされてから皆と一緒にいる事で色々学べたし、何よりぷよ勝負をしていたら帰れるんじゃないかって思っていっぱい勝負を繰り返した。ボクがどれだけ成長したか見せ付けてやりたい!!
「よぉ〜しっ。シェゾ、久し振りに勝負だ!」
Can you end by this....?
こっちも久し振りの小説…。ただでさえ語彙が乏しいのに更に訳分からなさに磨きがかかっているような気がします…ぐふ。
大会の進み方がどうなのか分からないのでもう初っ端から妄想の産物です(…)。
しっかし…これが私的シェゾだ!という事を主張する為に書いたはずなのに…ただヘンタイな彼が書きたいだけになっている;(失意体前屈)ちょっとどこか抜けてるけどかっこいいのかっこいいが抜けてるよ、一番大事なのに。
…はっ!大事な部分抜かすなんて、私もシェゾと同じ!?(…)
アルルに関しては大変な事にシェゾを貶しすぎだ、心の中で…。貶す、っていうよりはバカにしている、って感じを出したかったのに…。うーん…難しい。
……ま、まぁ…アルルはともかく、シェゾは大体こんな感じだ。やる時はやる男です。あんなプラス思考妄想アホ子末期症状病みの魔導師じゃないです。
「お前が欲しい」は、どうしても言って欲しかったのでむりくりさせました(おい)。
おいおいそれじゃぷよ!と同じシェゾじゃん…;;や、そう思って抜かそうと思ったんだけど……自分の欲求には勝てなかったという、ね………。
07年3月31日