ここから眺める青い空
ある週末、は一護の部屋にいた
久しぶりにゆっくりできるような、そんな感じがした二人はただ
静まった部屋の中で自由に過ごしていた。
はベッドの上に寝転び、そこから見える青い空がどことなく好きなのだ。
そんなを見つめる一護は座ったままベッドに近寄り、の髪を弄りながら
――どうした?
そう言った
はその一護の問いに
――ここから見る空が好きなんだ
そう答えた
「どこから見ても一緒なんじゃないのか?」
「そんなことないよ、一護の部屋から見る空は格別!」
「そうか?」
一護はそう言って覗くように空を見上げると
何ら変わりない青い空に雲が流れている。
しかしにとってはこの空が格別に違うという。
一護は疑問符を浮かべながら先程から弄っている手を離し、
その手をさり気なくの頬に擦り寄せた。
少し強張った反応をしただったが、その優しく骨ばった手はとても心地が良い。
は空から視線を外し一護を見る。
当然目が合い、二人は暫し見つめ合うとどちらからでもなく笑い出した。
「こういう沈黙苦手」
「ぷっ、あぁ…ダメだな、こういう雰囲気」
「一護が真剣な目で見るから面白いんだよ」
「それじゃ俺は真剣な目をしちゃいけねぇみたいじゃねーかよ」
「ち、違うって」
必死に笑いを堪えているつもりなのだが、
出てくるのは笑い声ばかり、何気ない沈黙が巻き起こした笑いの風は一時止むことはなかった。
しかし、
――ガタガタガタッ…
強い風の所為か窓が揺れて一瞬にして笑い声は消えた。
は起き上がり、お互い目を合わすと沈黙の所為か二人はゆっくりと絵に描いたように引き合うキスをした。
「久しぶり、だよな?」
「そう、だね…一護が帰ってきてまだ少ししか経ってないもんね」
「あぁ、」
振り返ってみれば尸魂界での死闘、
もしかしたらもうこの幸せを噛み締めることすらできなかったかもしれない。
そう思うと、この些細な時間がとても貴重で大切なものなんだなと感じられる。
一緒に戦った仲間、新たにできた戦友、なにより現世で待っているがいる、
そう思うと死んでも死にきれなかっただろうな、
心の中で苦笑いを浮かべながら一護は思った。
「…」
「なに?」
「今だけは、本当に幸せって言えるような気がする」
真剣な目でそう言う一護の姿、
目は交じり合っているのにどこか遠い目をしているように思ったのは気のせいだろうか
はそっと心の中で思ったことを口にする。
柔らかなその微笑は心なしか脆く、哀しい表情に見える
「今だけなんて、言わないでよ」
「…ずっと、だよな?」
不安に思うのは当たり前なのかもしれない
いつ、死んでしまうかなんて誰にも分からない話なのだから、
ここから見るこの青い空のように永久に続く幸せがあってほしい
―――そんなの在りえないのに、
そう分かっていても人間はそう願ってしまうモノなんだろう。
一護は自分の持つ不安を隠すようにを抱き寄せ、顔が見えないようにと顎を肩に乗せた。
こんな情けない顔はいくらなんでも好きな女の前では見せられないという意地があって、
一護は普段見せないような、縋りつくようにを抱き締める。
「一護、」
「どうした?」
「ここから見るこの青い空はね」
「ん?」
「一護みたいに大きくて、心が清らかで、太陽のように暖かいんだよ?」
「…俺みたいにか?」
「うん、だからね…ここから見る青い空は大好きなんだ」
そう言っても一護の背中に手をまわして抱き締め合って
それを見守るかのように青い空は二人を見下ろしていた。
今更なネタですが…(偽一護注意報発令されましたよー!!)
微妙なシリアスですよね?(聞くな)
読んでいただきありがとうございました!