10 隣にいろよ

 

 

 

 

 


ずっと傍にその笑顔があって欲しいなんて思ったのはいつからだったんだろう
この込み上げてくる思いは四方八方へと飛び散って
感情のコントロールができていないわけじゃない
ただ、抱いてしまった感情を自分で認めたくなかっただけ
そして、その感情が膨張していくのを自分でもよく分かっていた
いつ、破裂してしまうか分からないほど膨張しきっている感情は未だ胸の内に隠したままで
相手に悟られないように今日も平然を装っている
この時までは

 

 

が異動…?」

 

 

その届を開いた瞬間、
目に映る全ての文字を否定したかった。
横にいた松本の声すら聞えない
が何故に異動なのか、分からなかった。
本人が希望したはずがない
そう確信していた日番谷は自問自答に陥る
――長、隊長!!
松本が強くそう言った後、我に返った日番谷は返事をした

 

 

「なんだ?」

、呼んできたほうがいいんじゃないですか?」

「そう、だな…頼む」

 

 

部屋を出ていく松本の後ろ姿を見ながら
日番谷は椅子の背凭れに身を委ねた。
大きな溜息を無意識に出る
見上げれば白い天井が遠く見えた
思うようには上手くいかない
そう思いながらもう一度溜息を吐いた時だった。

 

 


「失礼します」

 

 


その声は紛れもなくのもので
そのあとに続いて入ってこようとした松本は
急に足を止めてこの境界線を越えてはいけないような気がした。
日番谷の気持ちを知っての上で、
自分がここにいては何かと言いにくいこともあるだろうと
松本は軽く鼻で息を吐いた。

 

 

「私は残りの仕事を済ませますので失礼します」

「…あぁ」

 

 

 

 

「隊長、話って…」

「松本から聞いてねぇみてェだな」

「…はい」

「お前に六番隊へ異動命令が届いた」

「え…冗談きついですよ」

「冗談で言ってるように見えるか?」

「いえ…すいません」

 

 

俯いたに異動届を差し出した日番谷、
その内心は腸が煮え返りそうなぐらいで、
どうせなら何もなかったように届を燃やしてしまいたいほど
しかし、感情だけで動いていいはずがなく、日番谷は自分としての
隊長としての立場を遂行した。

依然、椅子に座ったままの日番谷は両肘を付いて顔の前で手を重ねる
その目はの心を見透かそうとしているような、そんな目をしていた。

 

 

、お前はどうしたいんだ?」

「私は、私は……出来る事なら十番隊にずっと、死ぬまでいたいです」

 

 

その言葉を聞いて今までの苦心が一気に流れていくのが分かった。
聞いた瞬間の安堵感、嬉しさが心を満たしていく中、
ここが正念場と言わんばかりに扉の向こうから感じる松本の霊圧。
恐らく気づいているのは日番谷だけだろう。
日番谷は未だに言葉を切り出せない、一体何を血迷っているのか、
自分に自信がないワケじゃない、だがあると言えば嘘になる。
もどかしさが体中を奔っているような感じがしてならない。

そんな中、この沈黙の中で音を発したのは日番谷ではなく、だった

 

 

「隊長?」

「あ、あぁ…悪いな。」

「いや、体の具合でも悪いのかと」

「そうじゃない、そうじゃ…」

 

 

いつの間に自分は頭を下げていたのだろう、
の声が頭の後ろから聞えてきた。
日番谷は瞬時に顔を上げてを見る。
どうも心配そうに自分を窺うその表情に少しだけ、
ほんの少しだけ罪悪感を覚えながら日番谷はとりあえず何でもいいからと
言葉を続けるようにこう言った。

 

 

「ここに居たいっていうなら俺から直談判してやるよ」

「本当ですか!?」

「あぁ」

「ありがとうございます、隊長」

「…――なぁ、

「はい?」

 

 

少し、涙目になっているのは気のせいだろうか
はとても嬉しそうな表情で日番谷に返答し、
日番谷はそっと見上げて、その真剣な瞳にを焼き付けた。

 

「『十番隊』じゃなくて、俺とずっとってわけにはいかないか?」

 

言い終わった直後、
これで何もかもが終わったような
そんな瞬間を迎えた日番谷
どうもこういうのは心臓に悪い
酷く自分が小さく脆く、弱く見えた。

 

 

「信じ、られない、…ホントに、言ってるんですか?」

「あぁ、好きなんてもんじゃねぇんだ…を、を愛してる」

「隊、長…っ」

 

 

両手を口に当てて、
目からみるみると涙を流して
の、その潤った瞳に映る自分。
信じられないのはお互い様だ、なんて今言える科白じゃなくて
日番谷は席を立つとそのままの状態での頭を包み込むように抱き締めた。

 

 

「ずっと、


 

 

そう耳元で囁いた

 

 

(ずっと隣にいてほしいんだ、ずっと)

 

 


FIN...


む、無駄に長ェよ!!

古い産物を掘り出して使ってます(新しいの書けよ!)←いや、ネタがね…
日番谷クンでした!

ありがとうございました!!!