今思えば、彼女との出会いは『運命的な出会い』と言えるかもしれない。何故なら、彼女と出会ったことで僕の人生は大きく変わってしまったから。

それは、良い方にも悪い方にもだけど・・・・・・。とにかく、彼女のお陰で僕の人生は楽しいものになった。そんな彼女は今・・・・・・

「いませんね、ツチノコ」

なんて言いながら、草むらの中をガサガサやってたりします。

「・・・・・・委員長。僕等が見つけれるようなら、既にほかの人に見つけられている気がするのは僕だけでしょうか?」

彼女、翠風(みどりかぜ)高校図書委員長の『神楽 玲命(かぐら れいな)』は、僕の言葉なんてお構いなしで、さらに先へと進んでいく。

「他の人に見つけられていないなら、そっちの方がいいじゃないですか。相楽、私達が第一発見者になってやりましょう」

そう言って、笑顔でこちらを見る委員長。彼女と出会ってから、僕、『相楽 双夜(さがら そうや)』の日常は楽しいけれども、滅茶苦茶なものになっていた。

「そもそも、何で僕等がツチノコ探しなんて・・・・・・」

「それについては、今日の昼休みに説明したでしょう。もう忘れましたか?」

覚えてますよ。一応記憶力には自信があるし。覚えてはいるけど・・・・・・

「はあ・・・・・・」

僕は空を見上げながら、大きくため息を吐くのであった。そう、事の始まりは今日の昼休み――――――





「と、いうわけでツチノコを探したいと思います」

昼休み、委員長は図書室のホワイトボードにでかでかと『ツチノコ探し』と書いていた。どういうわけなのか全く分からない。

「もっと詳しく教えてくれない?さっきのじゃ分らないわ」

僕の代わりに委員長に意見してくれたのは、一年生図書委員の『久遠 御影(くおん みかげ)』だ。

「そもそも、ツチノコってどんな形してるの?」

今度は僕のクラスメートで幼馴染の『七瀬 清音(ななせ きよね)』が手を挙げて言う。・・・・・・清音よ、ツチノコ探しには疑問を感じないのか?君は。

「あの、いつやるんですか?まさか、今から?」

次に手を挙げたのは、御影と同じ一年生の『星雲 耀(ほしぐも あかる)』。時間よりも他に気にする事があるような気がするのだが。

「順番に説明します。まず、ツチノコを探す理由は、ツチノコを捕まえれば有名になれます。そうすれば、この図書委員会も、もっと有名になるはず、だから、ツチノコを探すわけです」

まあ、宇宙人とか未来人とかじゃないだけましかも・・・・・・。人に迷惑かけない分。宇宙人、未来人探しじゃいろんな人に確かめなくちゃならないからね・・・・・・。

「ツチノコの形は多分こんなのです」

ホワイトボードに謎の生命体を描く委員長。うん、正直言って下手だ。委員長全科目一〇〇点なのに・・・・・・。しかも、美術とってたはずだけど。

「時間は今日の放課後です。善は急げ」

・・・・・・善なのか?これは、善なのか?少なくとも、僕にとっては悪な気がする。

「では、放課後、図書室に一旦集合してくださいね。サボりは許しません」





こういう理由で僕等はツチノコ探しをしているわけだ。いくら廃れた図書委員会をもう一度有名にする為だからって、ツチノコは・・・・・・

「おーい、ソウ君、神楽さーん」

僕を『ソウ君』と呼ぶのは、この世で恐らく一人であろう。清音が手を振りながら走ってきた。

「七瀬、どうしました?」

「耀ちゃんが、ツチノコっぽいのを見たって!」

「っぽいのって・・・・・・」

「行ってみましょう。・・・・・・ほら、相楽も」

「はーい・・・・・・」

僕はやる気のない返事をすると、走っていく委員長の後を追いかけた。ああ、僕の人生、かなり狂わされてるなあ・・・・・・。



「星雲、ツチノコっぽいのは?捕まえましたか?」

委員長、ツチノコだって思ってないんだ・・・・・・。あくまで、ツチノコっぽいものだと思ってるんだ・・・・・・。耀が少し可哀そうだ。

「それが、その・・・・・・」

耀はこちらに視線を合わさずに、もじもじしている。・・・・・・これは、失敗した時の耀がよくする態度だ。と、いうことは・・・・・・

「この子が見たのは太った蛇よ。ほら」

耀に代わって、御影が網にかかった蛇をこちらに差し出す。ほら、って、渡されても困るんですけど。

「ふう、まあそんなことだろうと思ってましたけどね」

「ひどっ、委員長ひどっ」

もう少し耀の事も信頼してあげましょうよ・・・・・・。あ、耀泣きそうな顔になってるし・・・・・・。

「ごめんなさい・・・・・・」

「いいんですよ、星雲。次頑張ってくれれば」

慈愛に充ち溢れた笑顔を耀に向ける委員長。なら、何でさっきあんなこと言ったんだろう。

「さ、ツチノコ探しを再開しましょう!」

『おー!』

僕以外の四人が声を合わせる。皆元気だなあ・・・・・・僕なんて、何だか頭痛がしてきたっていうのに。病院、行こうかな・・・・・・。



それから、しばらくの間探し回ったが、当然見つかるはずもなく・・・・・・。

「あー!!」

「どうしました?七瀬。ツチノコですか?」

「ツチノコはなかったけど、タケノコを見つけたー」

・・・・・・もう、何と言っていいのやら。

「駄目ですよ、勝手に取っちゃ。そのままにしておいてください」

「はーい」

「あっ・・・・・・」

今度は御影が何かを見つけたらしい。僕も御影の近くに行く。結構離れてるから、少し走る。

「ツチノコはいないけど、タツノオトシゴが・・・・・・」

「いるわけないでしょ!?ここ山なのに」

「ふふ、楽しいわね。双夜」

御影が僕を見て不敵に笑う。こいつ、僕をここまで走らすためにわざとやったな・・・・・・。僕と御影が視線をぶつかり合わせていると、

<ジリリリリリリ・・・・・・>

委員長が持ってきた目覚まし時計が鳴った。・・・・・・本日の活動はここまでの合図だ。

「もう時間ですか。結局見つかりませんでしたが・・・・・・。まあ、次回に期待するということで」

次回、あるんだ。・・・・・・できれば、僕は巻き込まないでほしい。

「今日はこれまで。明日また学校で」

委員長の言葉を合図に、皆帰り支度をする。僕もさっさと・・・・・・

「相楽」

「はい?」

帰ろうとしたら、委員長に呼び止められた。他の皆はもう帰り始めている。・・・・・・何だろう?

「あ、その。今日は夕ご飯食べないでください」

「はい?」

夕ご飯を食べるな?意味がわからない。委員長は僕を空腹によって苦しめたいのだろうか?

「絶対ですよ!委員長の命令です。破ったら、包丁持って暴れますからっ」

「え?あ、ちょっ・・・・・・」

そう言うと、委員長は走って行ってしまった。

「・・・・・・どうなるんだろう、僕」

果たして、僕はこれからも安全な高校生活を送れるのだろうか?激しく不安だ・・・・・・。





「うあー、死ぬ。餓死する」

帰宅してから四時間。僕は自宅のアパートで、テレビを見ながら、ごろごろしていた。ちなみに、解散したのが五時だから、現在の時刻は九時。そして、普段の食事は七時だ。

「ま、まさかこんなにつらいとは思ってなかった・・・・・・」

今まで、一人暮らしながらも、食事だけはきちんとしようと思い、毎日一日三食食べてきただけに、今のこの状況はかなりつらかった。体が普段とは違う状況に追いつかないのだ。

「うう、委員長は一体何をしたいのか・・・・・・」

あ、やばい。何だか眠気が襲ってきた。ここで寝ると、危ない気がする。・・・・・・死にはしないだろうけど。と、そこで。

<ピンポーン>

「誰だ?」

こんな時間に誰が訪ねて来たのか。確かめようにも体が動かない。

<ピンポーン>

くっ、動け僕の体!最後の力を振り絞って!

<ピンポーン、ピンポーン>

「は、はーい。今行きます・・・・・・」

<ピンポン、ピンポン、ピンポンピンポンピンポンピンポンピンポ――――――>

「だぁっ、うっさい!!」

僕が半ばキレ気味に扉を開けるとそこには、

「あ、相楽。こ、こんばんわ」

委員長がいた。何故か、少しだけ頬が赤い。

「委員長?こんな時間に何をしに?・・・・・・まさか、僕が苦しんでいる様を近くで見ようと?」

「そ、そんなことしません!それよりも、ご飯食べないでいてくれたんですね・・・・・・」

逆らうとどうなるか分かりませんから。とは口には出さない。そんな事を言えば、本当に何をされるか分らないからね。

「あの、その・・・・・・」

珍しく委員長がもじもじしている。一体何の用ですかと訊こうとした時、

「タ、タケノコご飯です。余ったので、おすそわけです」

委員長が風呂敷に包まれた重箱を突き出してきた。結構重い。

「あ、ありがとうございます」

「その、タケノコを見たら食べたくなったので・・・・・・。け、決して相楽と一緒に食べたいから作ったというわけではないですからね!」

「はいはい、分かってますよ」

そう言いつつも、重箱の中身を開けてみる。中にはタケノコご飯と、色とりどりのおかずがたっぷり入っていた。

「うわー、おいしそうだな。あ、でもこれを一人で食べるのは結構きついかも。委員長、手伝ってくれます?」

これが、余りものなんかじゃないことは分かっていたけど、この人は素直じゃないから。

「し、しようがないですね、相楽がそう言うなら・・・・・・」

そう言って、僕の部屋に入る委員長。・・・・・・本当に素直じゃないなあ。

「な、何ですか?」

「いえ、何でもないです」

委員長の顔を見てくすくすと笑う僕。それを見て委員長は頬を膨らませていた。彼女のこんな表情が見れるのは、本当に数少ない人間だけだ。

・・・・・・その中に僕も入っていることが少しだけ嬉しかった。

「ほら、早く食べましょう。せっかく作・・・・・・わ、分けてあげたんですから」

本日の成果は、ツチノコではなくタケノコだった。・・・・・・まあ、たまにはこういうのも悪くはないかも。少なくとも、委員長は嬉しそうな顔をしてるし。

ふと、空を見上げると、満天の星空が広がっていた。・・・・・・明日も、楽しくも滅茶苦茶な一日になりそうだ。