- ①国衙の官人や郡司・百姓が、課税を逃れることを禁ずる
- 官人や郡司・百姓が、寺社領荘園の荘官(荘園管理人)や荘民となり、課税を逃れること、無許可で土地を寺社に寄進すること禁ずる
- ②下記の諸社、神人の暴行を国司に命じて禁ずる
- 伊勢大神宮・石清水八幡宮・鴨御祖社(下賀茂社)・賀茂別雷社(上賀茂社)・春日社・住吉社・日吉社・感神院(祇園社)
神人には定数があるのにお構いなく爆発的に増えている。平民が賄賂を贈って神人の身分を買っているためだ。今後の増員は永久に禁止する。
- ③下記の諸寺諸山、悪僧の乱交を国司に命じて禁ずる
- 興福寺・延暦寺・園城寺・熊野・高野金峯山寺
悪僧は凶暴である。これらの寺の夏衆・彼岸衆・先達・寄人(以上は行人の様々な呼称)が高利の金融を営み、公私の財産をかすめ取っている。彼らの父母・師匠・縁者に命じて出頭させよ。
- ④国司は国内の寺社の乱交を停止せよ
- 数千にも及ぶ神人が諸国で猛威を振るい国司の職務を妨害し村々を横行している。
以上、『寺社勢力の中世』P59
【行人とは】
③で非難されている行人も神人と同様の仕事である。仏教の教義など知らないし、そもそも髪を剃っていないものが多い。神人と実際上区別しがたい。
【神人とは】形式上、
下級神官の地位にあり境内の雑務を行う。雑務の中心は警備であり武器を携行する。宗教者のイメージはほど遠い。出家しているものが多い。 以上『寺社勢力の中世』P61
・
平安時代の院政期から室町時代まで、僧兵と並んで乱暴狼藉や強訴が多くあったことが記録に残っている。
武装集団としてだけでなく、
神社に隷属した芸能者・手工業者・商人なども神人に加えられ、やがて、神人が組織する商工・芸能の座が多く結成された。
・京の五条堀川に集っていた祇園社の
堀川神人は中世には材木商を営み、丹波の山間から保津川を筏(いかだ)流しで運んだ材木を五条堀川に貯木した。祇園社には、身分の低い「犬神人」と呼ばれる神人が隷属し、社内の清掃や山鉾巡行の警護のほか、京市内全域の清掃・葬送を行う特権を有していた。
・日吉大社の
日吉神人は、延暦寺の権勢を背景として、年貢米の運搬や、京の公家や諸国の受領に貸し付けを行うなど、京の高利貸しの主力にまで成長した。
・石清水八幡宮の
石清水神人は淀の魚市の専売権、水陸運送権などを有し、末社の離宮八幡宮に属する
大山崎神人は荏胡麻(えごま)油の購入独占権を有していた(大山崎油座)。下剋上の代表として著名な斎藤道三は、石清水八幡宮寺の神人出身で、石清水の主力産業であった灯明に使う荏胡麻油の販売商人であった。
・上賀茂神社・下賀茂神社の御厨に属した神人は
供祭人(ぐさいにん)と呼ばれ、
近江国や摂津国などの畿内隣国の御厨では漁撈に従事して魚類の貢進を行い、琵琶湖沿岸などにおける独占的な漁業権を有していた。