情報教育と人権教育

情報教育について

 「総合的な学習」の時間の創設や、高校における必修科目「情報」の新設など、情報教育をめぐっての議論があわただしくなってきました。また、その中においては、インターネットの活用を含むコンピュータスキルが中心となっています。確かに今後の社会の中で、インターネットの活用やコンピュータスキルは必要なものと考えられますが、イコール情報教育ではないとわたしは考えています。
 情報教育における中心的課題は、次のようなものではないでしょうか。

 それぞれにおいて、コンピュータやインターネットを活用することは非常に便利です。しかし、それだけになってはいけないでしょう。例えば情報を収集する手段としては、

というような、様々なメディアが考えられます。これらの1つにコンピュータやインターネットの活用があるというように理解した方がいいのではないでしょうか。それぞれに長所も短所もあるのですから、補完しあう関係として捉えておきたいと思います。


人権教育と情報教育の関係性

 いわば「垂れ流し」の情報の中には、人権侵害にあたる内容のものも多く含まれています。BBSにおける「差別発言」など、悪質なものも数多く目にします。これらを防止することももちろんですが、もう少し広げて、人権という枠組みで考えると、個人情報の保護や著作権の保護の問題など、様々な人権の問題に突き当たります。これらを「権利と責任」というアプローチの仕方などで学習していくことは、今後の非常に重要な課題として捉えておく必要があるでしょう。


基礎・基本の学力としてのメディアリテラシー

 ケルンサミットにおいて、ICT(情報コミュニケーション技術=情報活用能力)が「基礎・基本の学習」とされました。このことの持つ意味は非常に大きいものがあります。
 多くの学校や多くの教師たちは、基礎・基本の学習というと「読み・書き・計算」をイメージしていると思います。それは確かにまちがいではありませんが、これらに並ぶ学習の基礎・基本として情報活用能力がグローバルに認知されたということは、学校教育とりわけ義務教育において保障しなければならない学力として捉える必要があります。
 いわゆるデジタルデバイドの問題は、日本においても非常に気になる問題です。メディアリテラシーの中におけるコンピュータリテラシーは、学校教育で保障しなければ、確実に貧富の差に直結してしまいます。
 さらにITに関わる問題としては、携帯電話の問題があります。中学校入学祝いのトップ品目が携帯電話という時代にあるわけですが、このことと人権・同和教育との関連を考えると、非常に興味深い報告を大阪市立大学助教授の鍋島さんがされています。
 鍋島さんの調査は少し時代を遡るので、当時はポケットベルなのですが、「持っている子ども」は、むしろ家庭の教育力が厳しいと考えられる家庭の方が多いのです。足元の子どもたちを見てみましょう。厳しい状況にある子どもたちが携帯電話を所有していて、Eメールを多用している実態はないでしょうか。
 とても簡便なインターネット端末としての携帯電話ですが、たくさんの事象を例に挙げるまでもなく、犯罪や青少年の育成に明らかに問題のあるコンテンツが多く含まれているのも現実です。メディアリテラアシーを基礎・基本の学力として保障していかなければ、子どもたちは安易に情報端末を用いてしまい、いわゆる「有害サイト」や悪意に満ちたEメールによって、さらに厳しい事態へと向かっていってしまうのです。
 すべての学校で、すべての子どもたちに、基礎・基本の学力としてメディアリテラシーを保障していく必要があるのです。


中学校技術家庭科の情報の必修化や高校の情報科の新設必修化と小学校の教育内容の関連性を持つ

 いわゆる「新学習指導要領」において、中学校の技術家庭科で情報の領域が必修となりました。また高校においても情報科が新設されました。小学校の「新学習指導要領」では「インターネットの活用」という文言になっていますが、中学校や高校、そして小学校間でのとの教育内容における連携を考えていく必要があります。
 IT関連技術の進歩は言うまでもなく非常に速く、すでに学習指導要領が記述された時と現在ではすでに状況が変わっています。当時のネットワークのインフラは、アナログモデムもしくはISDNであり、ADSLやCATV、FTTHというようなブロードバンドを前提としたものではありません。また、これだけ急速に家庭からのインターネットへの接続が一般化するとも考えられていなかったのではないでしょうか。こう考えると、指導要領に記述されている内容を、「現代のインフラ」というフィルターや「子どもたちの将来」というフィルターを通して読み解く必要がありそうです。
 長期的な展望に立って、どのようなリテラシーが子どもたちに必要なのかを考えていきましょう。

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