同和教育を人権教育に再構築する

 いよいよ「法無き時代」に突入しました。特別措置法による財政の特別支援は無くなったものの、一般対策の中で部落問題をはじめとする様々な差別や抑圧の問題への取り組みは、行政施策としても継続して進められます。もちろん行政上の扱いが変容する部分もかなりありますから、今までどおりというわけにいかない部分もたくさんありますが、一方で、同和教育を軸に人権教育を創造する機会として、前向きに取り組みを進めたいものです。
 「同和教育を人権教育に再構築する」という言葉だけを耳にすると、どんどん同和教育が大切にしてきたものが薄まっていくような気がします。そう捉えずに、「同和教育は日本を代表する人権教育である」という前提に立って、「これまでの同和教育の歴史から何を継承していくのか」そして、「何を改革していくのか」を明らかにし、さらに優れた人権教育へと発展させていこうというものです。

 大切にしたい視点として

という4点を挙げておきます。


差別の現実に深く学ぶ

 同和教育の不変のスローガンとして大切にされてきたこの言葉は、他の人権教育には見当たらない優れたものだと考えています。
 差別や抑圧を受けている人々の思いや願いに寄り添い、そこに立って教育実践を積み重ねていくスタイルは、これからの人権教育においても、常に大切にしていきたいものです。自分自身の実践を振り返る時の「ものさし」として、差別の現実に深く学んでいるかどうかという視点を持ちたいものです。


「人権教育のための国連の10年」

 「法なき時代」を迎える中で、追い風として活用したいものに、「人権教育のための国連の10年」があります。すでに中間年を迎えているのですが、「国内行動計画」等、具体的な行動計画や推進計画が策定されています。
 特に、重要課題とされている9つの個別の課題については、これまで同和教育が積み上げてきたものと合わせて、教育内容に位置付けていく必要があります。

《重要課題の9項目(順不同)》


第7次学習指導要領と授業改革

 子どもたちが自ら考え、自らのあり方を振り返り、自ら発信していくという学習スタイルは、第7次学習指導要領によって後押しされ、これからの同和教育の実践のあり方を考えていくのに非常に重要な視点です。そのためには、子どもたちが興味関心を持つ内容をどのように提示していくのかということがまず必要です。その上で、学習を深めていくためには、様々なスキルの獲得と教師の支援が必要です。また、興味関心を維持していくためには、適切な評価が必要です。
 また、教師からの一方的な投げかけによる学習でなく、まさしく子どもたちが活動することによって獲得する学習であることが必要です。調査や体験による学習、ディベート、シミュレーション、ロールプレイ、フォトセッション、構成的エンカウンター等々、これまでの取り組みに加えて、多様な学習スタイルを組み合わせていくことが求められます。


差別意識を無くしていく取り組みを大切に

 差別の原因は、あくまで「差別する側」にあることは、水平社宣言を引用するまでもなく絶対に崩れることのない前提です。これまでの取り組みは、被差別の実態としての「較差」が生活実態や進学率に代表されるようにあまりにも大きく、特別法における財政支援を必要としてきました。もちろん、この実態的差別が解消されたわけではありません。しかし、この実態的差別も、差別意識から生まれてきたものだと考える必要があると同時に、このことに積極的に取り組むことも大きな課題とされる時代となったと考える必要もあります。
 校区に部落を有しない学校や、個別の課題としての差別の現実が目に見えにくい学校や地域でこそ、同和教育に根ざした人権教育を推進する必要があるわけです。差別の現実と出会い、心を震わせ、差別を憎み、憤り、差別を許さないことを自らの生き方として選択できる力をすべての子どもたちに保障していくことが大切です。
 そのためには、「差別はいけない」という心掛け主義で無く、地域教材をはじめとする、現実と出会い、自らの生活と重ね合わせる取り組みを大切にしていく必要があります。参加体験型学習がダメなわけではありません。参加体験型学習等の新しいスタイルの取り組みと、これまで大切にされてきた取り組みを組み合わせ、より心に迫ることができるものとしていきましょう。

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