季節のひとこま vol.1

 播州獅子どころ

 10月といえば秋祭り。播州は祭りが盛んなところですから、自分も血が騒ぎますが、すこし気を落ち着けて、獅子舞のことなどを。(民俗芸能としてのことはわからないので、見た感想を....)

 播州は獅子所、各地の祭りに有名な獅子が登場しますが、私の住む旧揖保郡あたりで一番有名なのは、やはり龍野市神岡町、県の無形民俗文化財に指定されている梛(ナギ)八幡神社の獅子舞、「沢田の獅子舞」でしょう。しかし、今では忘れられてしまったかの感がありますが、往事は沢田の獅子舞と同じか、あるいはそれ以上に有名だったのが、太子町石海神社で行われる竹広の獅子舞。この地域の獅子舞は、ほとんどこの二つの獅子舞の系譜にあり、沢田と竹広は獅子の先生と呼ばれていました。

 

 まずは竹広の獅子舞。ここの獅子舞は、数年来途絶えたような状況でしたが、若者の声で、再び祭りに奉納されるようになりました。ここの特徴は、素朴でリアルな動作を残していること、本来の壇尻芸として行っていること。

 壇尻上の舞台で行われる獅子舞のため、楽の人数が少なく、音が身近い。獅子が落ちないように、四方に目印の提灯を持った人がつきますが、舞っている人にはほとんど見えないのではないでしょうか。

写真は、1998.10.18.

 本来の神事のなごりを強く残す「神勇」。ここでは本当の神主さんが壇尻に上がります。
 獅子舞の終盤のクライマックスへ続く「餌取り」。座布団のような鞠を手に遊ぶ姿はリアルでユーモラス。思わずにんまり。

 舞い手に子役がいないので、獅子を舞う男子が代役を務める。

 石海神社秋祭りの子供神輿。昔は大人の屋台もあったが、今は神輿の渡御と子供神輿のみ。    

 

 

 次は龍野市の梛八幡神社の獅子舞。「沢田の獅子舞」として知られるていますが、獅子舞は氏子の16ヵ村が交代で受け持ちます。沢田は氏子の村の一つ。しかし、獅子を受け持つ順番が複雑で、沢田は4,5年に1回は必ず舞い、また、他の村へも指導に行きますので、獅子舞の中心になっています。

 ここの獅子舞は、村によって雄獅子・雌獅子・神楽獅子の3つに分けられるそうですが、2/3くらいの村は沢田と同じは雌獅子。残り1/3が雄獅子で、1村だけが神楽獅子を舞います。写真は寄居という村で、雄獅子。獅子がダイナミックな動きをみせます。

 梛八幡神社は、山麓付近にありますが、そこから一段下がったところに舞台を作り、そこで舞います。ちょうど野球場のスタンドのように舞台を見る観客席があり、その一番上に社殿があるわけです。楽の人数も多く、オーケストラの雰囲気。舞いも様式化され、洗練されています。舞う村の人たちにとっては数年(〜二十数年)に一度の晴れ舞台、華やかに盛り上がります。

 写真は、1998.10.20.

 最初に舞う「神勇」。ここでは村の若者が紋付き袴で神主役を勤めます。
   「餌取り」。座布団のような鞠で遊ぶ姿に「型」を意識した様式美がうかがえます。
  今日は小さな子役にとっても晴れ舞台。この次ぎ獅子舞の当番の年には、男の子は獅子カバチ(頭)を振っているのでしょうか。女の子は、お弁当を作って、応援でしょうか。

 

 次ぎに、竹広や沢田の獅子の子供を。

 まず、津の宮・魚吹八幡神社で奉納される朝日谷の獅子舞。竹広から教わった獅子舞。お旅所での奉納の様子を拝見しました。

 奉納されたのは「神勇」のみ。お旅所の拝殿前にしかれたござの上で、数分間の舞い。神主役は中学生の男の子。楽も中学生中心で身近な音。ある人は、「津の宮の祭りといえば、宵宮の提灯練りや、屋台・壇尻が有名だが、その祭りはうちが獅子を舞わないと始まらない」、と自慢気。

 人垣に囲まれた中での獅子舞は、他所と違った熱気があって、おもしろかった。

  
 写真は1998.10.22.        
   もちろん、屋台もたくさん登場。その数は播州一(ということは日本一)。
 
 
 つづいて、新宮町越部八幡神社(市野保)で奉納される、井野原の獅子舞。沢田の系統の獅子舞で、一時途絶えていましたが、三年前に復活。
 写真は 1997.10.10.と 1998.10.10. 
 

 継ぎ獅子。上に子供が上っての三段継ぎ。

 
      
   楽の人たち。沢田同様、大人数で盛り上げる。

 

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