「え、じゃあ・・・」

「ま、疲れと血の出しすぎだね」



監督はそう言うと、俺に薬を渡してきた。
その薬を一気に飲んで、俺はまた監督の方を見た。



「ほら、体調も結構大丈夫でしょ?」

「え・・あ、まぁ」

「ね?」



ニパと笑う監督。
そんな監督の笑顔につられて俺も笑ってしまった。

っていうか・・・。
あの足の痛みも消えてるんだけどさ。
これはどういうことかな。



「監督?」

「ん?」

「足の痛みとかって・・・」



言いずらそうにそう言った。
すると、監督は何かに気付いたように手を打ち合わせた。



「多分、疲れが溜まって痛みが消えにくかったんじゃないかな?」



あ、微妙にこの人適当に言ったよ!!
監督なのに、この適当さ!!
何で、これが俺等の監督なんだろうなっ。



「あーあと、桧野君にお礼言っといてね?」



そう言って、監督はさらに笑い始める。
今度はニパとかじゃなくてニヤけてる気がする。

うわぁ、何か嫌だな・・・。



「って、そうですよ!!ジッ・・・桧野はリタイアしたんですかっ?!!!」



バッと布団を放り投げて、俺は監督の顔に自分の顔をズズイと近づけた。
監督は少し驚いた顔だった。
だけど、すぐに元の顔に戻した。



「桧野君に、全部聞いてね?」



鬼だぁああああああっ!!
この人、俺が桧野に聞きづらいの知ってて言ってやがる!!
生徒が苦しんでる姿見て、そんなに楽しいのか?!!
何か、この性格誰かに似てるんだけど・・・。



「まぁ、午前中はココで寝ときなよ?」

「え、でも・・・」

「ブっ倒れられたら困るの」



あー、そうですね。
只でさえ狭いコノ部屋に何日間も寝られちゃ困りますよね!!



「特に、最終日には出てくれなきゃ困るし、ねぇ」



ニヤリ、と監督が笑んでいたような気がする。
何だか合宿最終日になってほしくない気がした。
だって、監督があんな楽しそうに笑ってるなんてさ・・・。
あー。怖い。



「そうそう」

「・・・」



まだ何かあるんですか。
そういう風な目で監督の顔を見た。



「午後からは全体練習で、明日はポジション別練習ね」



全体練習は毎日部活でやっていることをやるのだろう。
ポジション別も、部活でやっているが軽くだ。
多分、明日のポジション別練習はかなりの練習量なんだろうな。
先が思いやられると言うか、何と言うか。



「病み上がりなんですけど?」

「もうすでに元気な巵にはちょうどイイんじゃない?」



酷い!!
酷すぎます・・・っ!!
いつから、こんな性格の監督になったんですか。
俺が入部したときは、まだもっと優しかったのにさ。

俺がそういう風に脳内で愚痴を言っていると、ドアがノックされた。
その瞬間に、監督は返事をした。



「入ってイイよー」

「失礼しま・・・あっ!!」



ドアを開けて入ってきたのは翔己だった。
翔己は俺の顔を見るなり、すぐさまドアを閉めて俺の真横まで来た。



「良かったー、死んでない!」

「誰が死ぬんだよっ!!」



縁起でもねぇこと言うんじゃねぇよ!!
折角、俺の様子を見に来てくれた優しい奴だと思ってたのに。
何この仕打ち!!



「今日の午後から練習入れてあげてね」

「あ、わかりました」



監督は翔己にその言葉を言うと、そのまま部屋を出て行ってしまった。
翔己は再び俺の方を見た。



「でも、一時はどうなるかとおもったよー」



洸とか吃驚してて大人しくさせるの大変だったんだよー、と翔己が言った。
どんなに大変だったのか、物凄く気になる。

だけど、そんなことよりも俺は・・・。



「なぁ、翔己?」

「ん?」

「ジンってリタイア、した?」

「・・・・は?」



俺は凄く真面目な顔で翔己を見た。
最初は吃驚した顔の翔己だった。
だけど、途中から爆笑し始めた。



「なっ・・・まじ、でコイツ覚えて・・・ないよーっ」

「う、うるさい!!覚えてねぇんだから、仕方ないだろ!!」

「でもさ・・・あっはははは!」

「笑うなぁああっ!!」



何だよ、笑う理由なんかどこにもないだろ。
っていうか、俺が悪かったんだよな。
翔己なんかに聞いた俺が悪かったんだよな!!



「も、イイよ・・・」

「あはは、ゴメンってばー」



笑ってる奴に謝罪されても、なぁ。

はぁ、と小さく溜め息をついた。
それから翔己を見たけど、まだ微妙に笑ってる。



「ま、ホント無事でよかった、よかったー」



ニコと翔己が笑った。
その顔を見ると、本当に心配してくれていたんだなって思って俺も仕方なく笑った。


それから数分もしないで、翔己は時計を見ると立ち上がった。
多分、もう午前の部活が始まるんだろう。



「じゃ・・・待ってるから、来いよ?」

「・・・当たり前だろ」




















「そうそう、陽平の午前中のメニューを夕方からするから」

「え、嘘だ?!!!」