「・・・ジーンー」 「ん?」 「今、どこだと思う?」 「分かるかよ」 そうだよな。 解ったら苦労しねぇよな。 只今、俺たちトウ高テニス部は合宿に来ている。 合宿メニューの記念すべき1つ目は、宿舎へ向かえということだ。 ルールは簡単。 2人1組で11時までに宿舎に着けばイイ。 ちなみに、ゴールするときは2人一緒でなければならない。 そして、7時までにゴールできれば夕飯は豪華になり、リタイア等しようものなら夕飯と布団が抜きだ。 「今、何時?」 「・・・8時、すぎ」 あー。もう豪華夕食が抜きじゃん。 はぁ、と小さな溜め息をついた。 そして、ジンの後ろをトボトボと歩く。 俺的に足は限界に近かった。 と、言うのにもかなり馬鹿げた理由がある。 「(・・・くそっ)」 この間の、学校行事の球技大会。 それに俺はバスケットボールで参加した。 その時に、A組と試合をやったときに足を引っ掛けられた。 その時の打ち所が悪かったのか、痛みが数日間引いてない。 ちなみに、引っ掛けられたのはワザとかどうかは判明していない。 まぁ、そんなことどうでもイイけどな。 あと、ついでに・・・。 先ほど、俺は木の根に引っかかってこけました。 右足から結構な血が出ています。 一応、止血はしてるけど・・・。 少し血が足りないような気がしなくもない。 「・・・って、聞いてんのか?」 「えっ・・・ご、めん。聞いてなかった」 「・・・ったく」 はぁ、とジンが溜め息をついた。 只でさえ会話が無いのに、さらに会話をなくした気がする。 あぁ、俺の馬鹿。 「・・・で、今からじゃちょっと危ねぇし、走るか?」 「え、」 確かに8時という時間からしてヤバいと思う。 ゴールは地図の中心を指していた。 もし、宿と逆の方向へ行っているのであれば俺たちはかなりの時間をロスしたことになる。 そうだとすれば・・・。 「確かに、ヤバそうだもんな」 コクリ、と頷いてみせた。 その瞬間にジンは走り出した。 俺もその後に続いて走り出す。 足は確実に痛みを増してきているが、そんなこと知っちゃこっちゃねぇ。 今は己の足腰を鍛え、宿に到着するのみ。 「上手い飯食うためだぁああっ!!」 そうだ。 俺は早く宿に戻って飯を食わなきゃならん。 でなきゃ、もうこの空腹にも耐えられそうにねぇんだよ!! フと、視界が一瞬黒くなった。 何だ、と思ったけども、深くは考えなかった。 ましてや、それが今後どんな影響を与えようとか考えもしなかった。 「・・・はぁっ・・はっ・・・」 ジンの後を必死に走っていた。 だけど、次の瞬間に俺の足はコントロールできなくなった。 ヤバイと感じたのと足の力が抜けたのはほぼ同時だった。 「・・・ようへいっ?!!」 自分が立っていないと気付いたのはジンの顔を見たときだった。 ジンは今まで見たことない焦った顔で俺を見てた。 「おいっ・・・嘘だろ」 「・・・ごめ、ん」 額からは大量の汗が出てきている。 あと、微妙に寒いんですけど。 体温が汗でどんどん低くなっていってるのが解った。 自分の体ながら、コントロールできないのが情けない。 「大丈夫か?」 コクンと小さく頷いた。 だけど、大丈夫なんかじゃなかった。 スっとジンの手が伸びてきて俺のおでこに触れた。 ジンの手は凄く冷たかった。 「・・・っ、すっげー熱じゃねぇかよ!!」 あ、ジンが叫んだ。 頭ガンガンするから叫んで欲しくはなかったよ・・・。 つーか、ジンの手が冷たかったんじゃなくて、俺のおでこが熱かったのか? 「兎に角、リタイアか・・・」 「・・・っ!!」 『リタイア』と言う言葉に何かが引っかかった。 その瞬間に、俺はジンのジャージの裾を掴んだ。 「・・・?」 「や・・・だ」 何故だか分からない。 だけど、俺の目からは確実に何かが溢れ出していた。 多分、涙ってやつなんだろう。 「リ・・・タイア・・・しな・・い、で」 「ばかっ、お前熱あんだぞっ?!!」 「歩く・・・から」 「・・・だから!!」 「ある、く・・・から、・・・」 自分でも解ってた。 歩くことさえ今は困難となっている。 多分、歩くにしてもジンに迷惑をかけるだろう。 だけど、俺はリタイアしたくなかった。 「馬鹿」 「・・・ごめ、」 「馬鹿すぎんだよ」 はぁ、とジンが溜め息を付いた。 そして、俺の頭をフワリと優しく撫でてきた。 「明日までに治したらチャラにしてやるよ」 そう、ジンが言ってくれた。 それからの記憶は全くない。 俺がそのあと何時に宿に着いたのか、リタイアしたのか、何もわからないまま・・・。 「・・・朝?」 「あれ、巵起きてた?」 「え、ココ監督の部屋ですか?!!」 |