「不可抗力」

「何やねん、それ」



部室の鍵を取りに職員室へ行った。
そこで俺は郁と遭遇してしまった。
それから今は、鍵を持って2人で部室に向かっている。



「だーから、イロイロあったんだよ」

「そのイロイロが気になるんやん。陽平先輩がジン先輩を『ジン』って呼ぶやなんて・・・」

「うるせっ」



そうだよ、あれは不可抗力っ!!
俺だって呼びたくねぇんだよ。
だけど、仕方がねぇんだよ!!



「別に減るもんちゃうやんかー」



な?と言って、俺に擦り寄ってくる郁。

何つーか・・・。
ウザいって、こういうことを言うんだな。



「・・・はぁ」

「何やねん、そ溜め息」



俺の頬をつつきながら郁は話しかけてくる。
う・・・うっとおしいっ!!



「なつ・・・めと先輩?」

・・・ん?



俺と郁は同じに後ろを向いた。
そこに居たのは東雲だった。

うっわ、まさかの東雲じゃん。
東雲は結構遅めに部活来るはずなのに、今日は早めだ。



「あれ、小鳥遊は?」



東雲は俺に少し憎らしい挨拶をしたあと、郁の隣にいつも部活は一緒に来る人物の名を出した。

そう言えば、今日は最初から見てない。
俺が郁を見たときから槐人の姿は居なくて、郁一人だった。
何、今日は槐人は休みか?



「んー、翔己先輩に言われて健ちゃん監督のとこに行っとるー」

「はぁ?何で?」

「メニュー貰いにに決まっとるやん、ついでに俺は鍵を取りに行ったら陽平先輩と会ってん」

「そこまで聞いてない」

「えぇやろ!!」



うわぁ・・・。
何か、ホント。

郁ってつくづく可哀想な奴だよな。

槐人にも東雲にもイジられてるっぽいし・・・。
頑張れ、郁。



「ちゅーか、柳太早いやん?」

「まぁな」



あっさりしてるな、コイツラの会話。

っていうか、郁が会話の80%をしめてるよ。
何だよ、この不釣合いな会話のキャッチボール。
見てるコッチがそわそわするっつーの。



「あっ、忘れとった・・・っ!!」

「ん・・・ぅわっ?!!!」



グイ、と身を引き寄せられて、俺は郁に捕まった。
逃げる予定もなかったのに、捕まった。



「さぁ、白状しぃや?」



ニィと笑う郁の顔が俺の顔の真横にあった。
っていうか、近い近い近いっ!!
顔近すぎるんだっつー・・・。



「何か、隠し事・・・ですか?」



ずい、と俺等の間に割って入った東雲。
だから、何故こうも顔が近いんだ。
謎だ。
謎すぎる!!



「否、陽平先輩がジン先輩のことをとうとう『ジン』って呼んでん」

「・・・で?」

「そこに何か・・・あると思えへん?」



ニタリ、と笑った郁が見えた。
最初から郁から逃げれるとは思ってはいなかった。

否、嘘。
少しは逃げれるとは思っていた。
だけど、今は逃げようとか思わない。
だって、郁サイドには・・・・東雲が、いる。



「や・・・でも、マジ、不可抗力なんだよ、うん」



間違ってねぇよ。
俺は何も間違ったこと言ってねぇよ?



「その不可抗力が何やねんって聞いとるんやんか!!」

「イロイロだよ、いろいろ!!」

「それを教えろっちゅーんが、わからんのかーっ!!」



ウガウガ、と互いに叫びながら言う俺と郁。
ていうか、微妙にデジャブ・・・?
うん、これ数分前にも見た光景だよな。



「まぁ、どうせ桧野先輩に迫られたりでもしたんでしょうけどね」

「・・・っ!!」



バッと思い切り東雲の方を向いた。

ちょっと待て。
何故お前がそれを知ってい・・・るわけがない。
ってことは・・・。



「あ、図星」

「し、しののめっ・・・!」



賭けやがった!!
コイツ、先輩を試しやがった・・・!
怒った俺は東雲の手を掴んで脅迫しようとした。
だけど、そんなことをする前に俺はまたもや郁に捕まった。



「せーんぱーい・・・詳しく教えてぇな?」

「い、い・・・嫌、だ」

「別に俺はジン先輩みたいなことせーへんし」



イヤイヤ、今現にそれに近いことしてますけど!!

思い切り首を横に振りつつ、俺は東雲の姿を探した。
だけど、いない。



「って、東雲・・・っ!」

「あー、俺は部活に遅れたくないんで、先に行ってますねー」



遠くの方で手を軽く振る東雲。
部活時間、覚えとけよ。
絶対スマッシュ決めて、当ててやっからよ!!



「んー・・・まぁ、ココでは何やし、部室行こか。部室!!」

「・・・え?」



郁は自分の手を俺の首に回して、そのまま部室までダッシュ。

って、ちょっと待てよ。
部室に行ったら他の奴もいるんじゃね?
そんな中で説明なんて出来るわけがねぇ!!



「ちょっ、マジ嫌だぁああああ!!」




















「洗いざらい喋ってもらうさかいな」

「最低だっ!!」