「・・・なぁ、翔己?」 珍しく、今日は雨なんか降ってる。 久しぶりの雨だからか何か知らないけど、土砂降りだ。 降り過ぎだっつーの。 「んー・・・?」 フと翔己が頭を上げた。 只今、翔己と俺は部日誌を書いている。 まぁ、俺はボールの数を数えてるだけなんだけどな。 「俺、やっぱ桧野は嫌だ」 「・・・」 黙るなよ、翔己!! 俺だって決心して言った言葉なんだぞっ!! これを言ったことにも理由がある。 4月後半だと言うのに、日野は部活にまともに出てきゃしない。 俺たち3年にとって、6月前半の地区予選が最後の大会。 そこで勝たなければ俺たちの部活が終わってしまう。 それなのに、桧野は来ない。 俺は3年でテニスを始めた。 だから負けても悔しくないと思われてるのかもしれない。 だけど、思う。 俺、負けたらきっと悔しいって。 俺なりに練習をイッパイしているから・・・。 「なぁ、翔己・・・」 「駄目」 キッパリと言われた一言に俺は翔己を睨んだ。 その俺の顔を見てか、翔己は一度だけ溜め息をついた。 そして、翔己はすぐさま立ち上がって俺の目の前にいた。 ふいに翔己は真面目な顔になった。 「陽平・・・それ、本気で言ってんの?」 ゾクと背筋が凍るような状態になった。 俺は動く事もできなくて、何も言う事も出来なかった。 「・・・解ってるんでしょー」 フと翔己が笑った。 そして、俺の頭をポンポンと撫でた。 そう。俺は解ってる。 桧野と何度か組んだし、他の奴とも数回は組んだことがある。 そんな中で、一番組みやすいと思ったのが桧野なんだ。 あんなのと組みやすいと思っただなんて・・・思いたくなかった。 ペアが決まってまだ3週間もたってない。 なのに、俺には解ってた。 「・・・だって」 不安なんだ。 まだ入って少ししか立ってない部活。 なのに、残りの部活の生活も少ない。 「解ってるよー、俺も・・・不安だよ」 俺が言葉を言う前に、翔己が言った。 パと顔を上げた。 そこに居たのは笑顔の翔己で・・・。 俺はその笑顔に涙が出そうになるのを堪えた。 不安になってる気持ちを話したのは初めてで・・・。 否、話してもいない。 だけど翔己は知っててくれたんだ。 そう思うとなんだか少し気持ちが軽くなった。 「・・・ありがと、な」 「いいえー」 何だかんだで翔己はイイ奴だ。 その事に最近気付いた。 「じゃー、早いトコ終わらせなきゃね」 そう言った翔己は先程まで自分が座っていた場所に戻った。 そして、部日誌を書き始める。 俺はまたボールを数えなおす。 うん、何球まで数えたか忘れたからな。 「1から、か・・・」 そう言って数え始める。 外からは雨の音しか聞こえない。 そんな中、俺と翔己は2人で部室に残って仕事をする。 「あー、そうそう」 「ん?」 「ジンが部活に来れない理由、補習以外にもあるんだよー」 その言葉に俺は顔をあげた。 そして、翔己に詰め寄った。 「どういうことだよ!!」 大きい声で俺は叫んだ。 俺が叫ぶと見込んでか、翔己は耳を塞いでいた。 「んー・・・ホントはねー。ジンから直接聞いてほしかったんだけど」 「・・・桧野から?」 俺は頭にクエスチョンマークがついた。 桧野から直接聞けっていう理由が解らなかった。 それに、桧野から直接聞いて欲しいと言ってるのに、翔己が今から話す理由も解らない。 「ジンさ。あれでもバイトしてるんだー」 「・・・え?」 翔己の言葉に自分の耳を疑った。 高校での部活はハードだ。 テニス部は俺だって解ってる、難しいってことぐらい。 なのに、それでも部活もバイトもしようってのか? 「バイトなんか・・・!」 「辞めれないんだよ、それが」 そう、翔己が言った。 そのときの顔は真剣だった。 「ジンは授業料稼いでんだよ」 その言葉すら耳を疑った。 授業料を稼いでる? いや、そんなことをしなくてはならないのならテニス部なんか・・・。 「ダブった分だけ、稼ぐんだってー・・・馬鹿だよね」 クスクス笑う翔己。 そんな翔己の笑い声なんか聞こえない。 あいつはそんなに頑張ってるのか・・・。 そう、思った。 「それでも、テニス部辞めないのは・・・陽平がいるから、だよ」 「・・・?!!」 翔己の言葉にまた俺は驚いた。 何故。 何故俺がいるからテニス部を辞めないんだ? 意味が解らない。 「ペア出来たの、陽平が初めてなんだよ・・・ジンはね」 そう言うと、翔己は立ち上がった。 そして、俺に日誌を渡した。 「あと、ボール数だけ記入して、監督んトコ持ってってね」 「・・・え?!!」 「んじゃ、おつかれー」 「はぁあああ?!!」 俺が翔己の話に気を取られているうちに、気付けば翔己は日誌を書き終えていた。 残ったのは俺だけ。 1人て・・・寂しいじゃん。 「あ、鍵も閉めてよね」 「解ってるっつーの!!」 |