「まだ、4月だぜ・・・」



今年の気温は異常だ。

そう感じているのは俺だけじゃないと思う。
帰宅部の奴等はきっと、毎年通りなのだろう。
だけど、運動部の奴等的にはきっと違う。



「まだ暑くはねぇだろ」

「俺は暑いんだよ、俺はっ!!」

「・・・へぇ」



余裕な顔で飲料水を飲む桧野は何かムカつく。
休憩が入る前は前衛の練習をしていたから、俺等の方が疲れてるのは当たり前だろう。
後衛はボール出しだけだったしな。



「にしても、よーへい先輩のスマッシュ率上がったよねー」



ニパっと笑った洸が俺にそう言った。


確かに、ココ最近のスマッシュがコートに入る確率は上がりまくっている。
もう、2球に1球ぐらいは入ると思う。
まぁ、実践でそれが使えるかどうかは別だ。
それに入ったと言っても、全部が決まるようなボールってわけじゃないしな。



「あ、もしかしてガット変えたからかな?」

「・・・へ?」

「え、あ・・・ち、違った?」

「否、確かに・・・」



ガットは変えたんだ。
この前、礼緒に言われたからガットもグリップも変えてみた。
そしたら滅茶苦茶打ちやすくなった。

だけど、何で洸がそのことを知っているんだ?
礼緒もそういうことわざわざ言いそうにないし・・・。



「ガットの色が真っ白だからさー・・・間違ってたらどうしようかと思った」



ヘラ、と笑った洸。

確かに前のガットは凄い色だったもんなぁ。
だから洸は俺が買い換えた事に気がついたのか。



「・・・陽平。ラケット貸してみろ」

「え・・・?」



返事をする前に、桧野に俺のラケットは取られた。

あぁ、俺のラケット・・・壊されなきゃイイけど。



「へぇ・・・」



俺のラケットのガットを触ったり、グリップを握ったりしている。
そして、何だか少し・・・嬉しそうだ。

え、ちょっと気持ち悪い。
桧野が笑うとか気持ち悪いっ!!



「へい・・・陽平っ」

「ぅえあっ?!!」



あまりの桧野の気持ち悪さにボーっとしてた俺。
桧野に呼ばれてやっと我に返れたって感じだ。



「よーへー先輩、ボーっとしすぎだよ」



ケラっと笑いながら洸が言った。
ていうか、お前まだ居たんだな。
てっきり礼緒とかのところへ行ったかと思ってたし。



「・・・で、何?」

「コレ、どこの店でやってもらったんだよ?」

「・・・は?」



訳が分からずに、俺は眉間にしわを寄せた。
そんな俺を見て桧野が溜め息をついていた。
・・・そんなに説明が面倒かよ。



「どこの店でガット張りとグリップ巻きやってもらったのかって聞いてんだよ」



それぐらい解れよ、とも言っていた。

くっそ、しょうがねぇだろ。
俺だって解らないことは解らないんだからなっ!!



「俺ん家の近くのスポーツショップ」

「・・・お前の家とか知らねぇし」



そりゃぁまぁ、知ってたら凄いよな。
俺等まだ知り合って間もねぇし。
しかも、遊んだことすらねぇし・・・。
桧野と遊びたいとも思わねぇけどな!!



「北区だよ」

「何、じゃぁ近いじゃん」

「っ?!!!」



自分の目がカッと見開いたのが解った。
何、俺の家と桧野の家が近いだって?!!!



「ジンの家って・・・北区と東区の間なんだっけ?」

「お前、よく覚えてんな」

「当たり前じゃん、何回行ったと思っての!」



お前等仲イイのかよ・・・っ!!
何かタイプ違うから、あんま話さないと思ってたけどそうでもなかったみたいだ。

俺は少し意外だなとか思いながら2人を見た。



「・・・で?」

「は?」

「『は?』・・・じゃねぇよ。店の名前」



ビシっ、と俺を指差した。
そして俺は数秒考える。



「・・・多分、『スポーツ吉井』」



だったと、思う。

そんなに多い回数行ってるわけでもない。
だから名前なんかはっきり覚えてないんだ。



「何だよ、やっぱあそこの店イイんじゃん」



はぁ、と溜め息をついた桧野が俺にラケットを返してきた。

それにしても、一体コイツは何をしたいんだ。



「あ、ついでに」

「ん?」

「グリップも巻いてもらったんだよな?」



そう言って桧野は俺のラケットを指差した。

確かに、グリップも店で買った。
だけど、グリップを巻いたのは、あの店の人じゃない。



「あ、これは礼緒に巻いてもらった」



翔己に頼んだら礼緒のほうが上手いって言われたからさ。
誰だって上手いやつにやってほしいじゃん?



「・・・礼緒?」

「あー、有栖だよ。ほら、前衛のあの黒髪の・・・」

「・・・それぐれぇ、知ってる」



何なんだ・・・っ!!
俺が「礼緒」って言って、知らない風な顔つきになったからわざわざ説明してやったのに!
説明損だよ、全く。



「礼緒・・・なぁ」



パッと桧野の顔を見ると、微妙に笑んでいた。
珍しいと思う前に気色悪いと思った。
つーか、今日は笑ったの2度目?
・・・そう考えるとさらに気持ち悪いな、オイ。

そして、その後すぐに桧野は俺にラケットを返してきた。



「んー・・・俺、帰ぇーる」

「はぁ?!!」

「陽平。翔己に言っといてー」



何か楽しい事でも考えたような顔の桧野。
そんな日野は俺が止めるまえに、自分のラケットなどを持って、部室の方まで歩いて行っていた。


あいつ・・・本気で帰る気か?
つーか、今日の練習とかまだまだ残ってるんだけどっ!!




















「・・・で、陽平は止められなかったんだー?」

「ごごご・・・ごめんなさいっ!!」