「珍しく全員揃ったんで、試合しよーと思います」



ニッコリと笑んだ翔己がそう言った。

その言葉にテニス部の一部は呆然とした。
残りの奴等は結構嬉しそうだった。
まぁ、試合をやると言って嬉しがらないやつは高校のテニス部には入らないだろう。



「・・・で?」

「・・・御免、俺ジャンケン強いから」

「否、謝る意味が解んねぇ」



キッパリと言ったのは桧野だ。

にしても、第一試合かよ・・・。
まぁ、隣のコートでも試合やってるけどさ。
四コートあるうちの一つで俺等は試合をする。
しかも、対戦相手が・・・。



「・・・よーへい先輩じゃーん!」

「宜しくお願いします」



・・・まさか、だよな!!
何故に洸と礼緒のペアと試合なんぞせにゃならんのだ!!



「僕と礼緒のコンビネーションなめないでねーっ」



ピースをしてきた洸に溜め息が出た。


お前等のコンビネーションをなめようとか思っていない。
むしろその逆だ。
こいつら、仲イイからコンビネーションは抜群だろう。

それに比べて、こっちはコンビネーションとか悪いに決まっている。



「・・・ん?」

「・・・否、何でもねぇよ」



桧野を見てから、すぐに目線を外して溜め息をついた。

そりゃー溜め息もつくっての。
だって、俺の相方・・・コレだぜ?

そんなことを考えてると、俺の肩に重みが感じられた。
それと同じに逆の肩に手が現れたかと思うと、少し抱き寄せられた。



「・・・・・・ま、俺等のコンビネーションもお前等にゃぁ負けねぇし?」



耳の近くで聞こえた言葉。
それは日野が洸と礼緒に言っていることだってのはすぐに解った。
だからって、何も俺の肩に顔置いて言ってんじゃねぇよ!!



「ちょっ・・・何・・すん、だよっ!」



無理矢理、日野から離れた。
離れた瞬間に桧野を睨み上げたけど、桧野は口角を上げた。



「コミュニケーション取っただけじゃん」



詫びも入れずに桧野は俺に背を向けた。
・・・絶対、俺で遊んでるだろ、あいつっ。



「・・・つか、お前はどっち専門なわけ?」

「・・・襲われるように見えるか?」

「そんな話じゃねぇよ!!」



何言ってんの、こいつ!!
誰が性的行為の話したよ!!



「前衛なのか、後衛なのかって聞いてんだよっ!!」



ギリッと睨みながら言った。
その言葉を聞いた桧野は、疑いの目で「へぇ」と言った。
俺はコイツとペアを組んでてイイのか?
本気で考え直せよ、監督!!



「・・・どっちでもいけるぜ?」

「・・・は?!」

「ま、後衛よりだけどな」



ニィと桧野が笑んだ。
俺はその笑みを見ながら考えた。



「・・・両、ほう?」



俺は、未だにポジションの話を聞いていなかった。
あれからも、練習は前衛後衛両方のメニューをこなしてきた。
体力製作にゃぁ持ってこいだけどよ・・・。
それにしても、ペアが決まったのにポジションが決まらないのはおかしいとは思っていた。
だけど、おかしくなかったんだ。
監督は俺と桧野のペアに前衛後衛を無視するテニスをしろと言いたいんだ。



「・・・っ」



俺は頭をグシャグシャとかいた。
俺にそんな事ができるのか?という不安と、桧野とテニスができるのか?という不安を消すために。



「つか、監督から聞いたけど、お前も両方いけんだろ?」

「はぁ?俺は前衛だし」

「・・・へぇ」



間違ったことは言ってない。
俺は一応前衛希望で、前衛の方に力を入れている。
後衛の仕事も並にはできるが、並止まりだ。



「じゃ、とりあえず・・・」

「・・・えっ?!」



俺の方に桧野が寄ってきたかと思うと軽々しく俺を抱き上げ・・・た!?!
え、ちょっ・・・これは男として嫌だ!!
こんなに軽々しく抱き上げられる男がいるかー!!
否、今ココにいるんだけどさ。



「ひ、桧野っ!!」

「ジンって言え・・・」

「・・・じ?!!・・・い、言えるかっ!!」

「翔己のことは翔己っつーのにねぇ」



だからと言って、桧野は桧野だ。
何か・・・言えない。



「・・・っと」



サービスラインまで来ると桧野は俺を下ろした。
そして、俺の顔を見てくる。



「今日は後衛やれ」

「・・・は?!」

「はい決定、俺命令絶対なー」



グルングルンと腕を回しながら桧野はネットの方へ歩いて行った。
ちょっと待て。
俺・・・何で。



「後衛するんだよ・・・」



はぁ、と溜め息をついた。
そこで審判が始まりのコールを言った。
ここまで来れば逃げれない。
俺はボールを真上に上げた。




















「ミス多い方がオゴリな」

「嘘だろ・・・っ?!!」