桧野壬 それは俺のパートナーの名前だ。 「・・・ジン、ね」 うーん、と唸り始めた俺。 確かに聞いたことのあるような名前だ。 だけど、何故だか思い出せない。 そんな状態で1日が終了した。 そして、今日ももう部活の時間だった。 「・・・翔己」 「ん?」 「いい加減・・・教え」 「ないよ。自分で見つけなきゃ面白味ないじゃーん」 ケタケタと笑う翔己。 俺はそんな翔己を横目に苛立ちが募る。 俺が教えて欲しいのは勿論、桧野壬のことだ。 翔己は確実に知ってるくせに教えてくれない。 最低だろ、こいつ。 「ま、今日は来るよー?」 「どこからそんな根拠があるんだよ・・・」 はぁ、と溜め息をついた。 確かに昨日は来ていなかった、だからと言って今日は来るとは限らない。 「だいた・・・」 ガチャ、と部室のドアが開いた。 俺と翔己は一斉にドアの方向を見た。 そこに居たのは・・・とりあえず背の高い男だった。 多分、礼緒と身長の大きさは変わらないと思う。 「・・・あ」 「こんにちわー」 ヘラヘラ笑う翔己とは対照的な男。 ていうか、こんな不良初めて見た・・・! こんな奴、この学校に居たんだ? 「ほらほら、陽平も挨拶!!」 「あ・・・こ、こんにちわ」 「・・・」 おいおいおいおい! 俺の挨拶は無視か?!! 俺等の目の前を通って、一つの籠の前に立った。 そして、何も言わずに着替えを始めた。 ・・・ていうか、こいつテニス部? 「・・・てに、すっ?!!!」 ガバッと翔己の方を見た。 翔己の顔は憎らしいほどニコニコしていた。 昨日見たことのないテニス部。 そして、翔己の憎らしいほどの笑顔。 そこで俺の頭の中で確実に解った事がある。 今、この部屋で着替えをしている男・・・。 これが桧野壬、だ。 「陽平君、告白でもしてくればー?」 「はっ?!!」 「『僕は、キミのパートナーなんです』ってさ!」 「・・・っ」 確かにペアになってしまっている。 だけど・・・。 だけど、俺にはこんな怖い奴に話しかける勇気がねぇ!! あ、でも・・・。 俺は最上級生だし?! え、ちょっ・・・むしろ、えばれるのは俺なんじゃねぇ? 「・・・あ、のー・・・・?」 「・・・何?」 俺のほうも見ないで返事をする。 ううっ、何なんだ。コイツは・・・。 「俺、お前とペア組むことになったんだけど?」 そう言うと、桧野は初めて俺の方を向いた。 桧野は一瞬俺を見たかと思うと、すぐに目線を逸らした。 「・・・何で、翔己とじゃねぇの?」 「さぁ?」 「あーもうっ、前も前で奇数だったからってハミられたっつーに・・・」 「それはお前が部活に来ない所為でしょー」 ケタケタと笑う翔己。 はぁ、と溜め息をつく桧野。 ・・・え、二人はどういう関係? 俺は一瞬、二人が会話している事にビックリして開いた口がふさがらなかった。 「・・・ーい・・・・・襲うぞ?」 「ひぃっ?!!」 びくっ、と体が震えた。 そりゃぁ当たり前だ。 桧野が俺の耳元で「襲うぞ」とか言ったんだからな。 っていうか、声がマジに聞こえたんだけど!! 「・・・お前、反応イイな」 「お、男に褒められたって・・・嬉しくねぇんだけど」 少しだけ後ずさりしながら俺は言った。 そんな俺の言葉を聞いた桧野は爆笑していた。 否、笑うなよ。 「にしても、マジ・・・喰ってみてぇかも」 ジッと俺の目を見る桧野の目。 その目は獲物を狙う狼のような目だった。 俺は目線を逸らす事が出来なかった。 「はいはーい、そういうのはトイレでやってよねー」 「うぇっ!」 桧野の首を掴んだのは翔己だった。 そして、グイっと引っ張って俺から離させた。 「なっ・・・冗談だっつーの!!」 「お前の90%は冗談じゃないでしょー」 桧野をパっと離した翔己がそう言った。 それから2人の口喧嘩が始まっていた。 俺は少しの間、2人の喧嘩を聞いていた。 だけど、途中でフと思い出した。 「つーか、お前等の関係って何?!!」 「「・・・は?」」 俺が大声でそんな質問をしたから、2人は喧嘩を止めてコチラを向いた。 しかも、顔。 物凄い呆れた顔してるんだけど・・・。 「何、お前知んねぇの?」 「ま・・・陽平だからねー」 翔己が言った言葉はこのさい無視だ。 酷い事を言われようが、今は2人の関係の方が気になる。 「俺、コイツと幼馴染なんだよ」 「・・・へ?」 桧野が翔己を指差してそう言った。 その言葉に、俺は驚かざるをえなかった。 「ついでに言うけど、ジンは1年留年してる2年生だからねー」 「2年なの?!!」 |