目の前にいる奴をぶん殴りたい。

だけど今、ぶん殴るわけにはいかねぇ。



「・・・と、言うわけです。監督」

「そうだな・・・」



と、監督が唸り始めてから数分。

一体俺のポジションはどうなるんだよ!!
ていうか、悩むなよ!!



「確かに陽平はこの数日間練習してきました、だけど俺は後衛向きだと思っています」

「え、マジで?」

「・・・あたりまえじゃん」



翔己は俺が後衛向きだなんて思ってたとか初耳だ。

それにしても、翔己は監督の前だとキャラ違くねぇ?
うん。絶対猫被ってるよな。



「僕も後衛向きだとは思ってた」

「え、マジですか?!!」

「あ。うん」



監督まで俺が後衛向きだと思ってたのかよ・・・!

何俺って本当は後衛じゃないと駄目だったキャラ!?!


・・・否、違う。
これは罠だ。
俺を後衛に行かせたいがための、罠だ!!



「ほら、巵は際どいボールに強いだろ?」

「・・・『際どいボール』?」

「例えば・・・コーナーギリギリの逃げるボールとかでも結構」

「あー、取ろうとは必死ですね」



うん。
俺ってば結構必死にテニスやってるからさ。

まぁ、コーナーギリギリのボールは取れてもロブしか上げれねぇけどな!
そこはテニスをやってなかった俺だからしゃーねぇと思う。
うん、そうしておこう!!



「その根性がイイんだよ」

「・・・は?」

「まぁ、前衛にも言えることなんだけどね」

「・・・はぁ」



何か知らんが、話が進められてるぞ。
何、この場合俺はどうすればイイんだろう。

とりあえず、2人の話を右耳から受け入れて左耳から出してあげる。
いわゆる聞いていないってやつだ。



「確かに前衛にも必要なことだけどさ」

「後衛ほど根性の必要性を感じるヤツはいないんだよ」



・・・ぉおおう、意味が解んねぇ!!


監督も翔己も、もっと俺が理解できるような日本語で放して欲しい。
いや、理解出きるような単語なんだろうけどさ・・・。



「・・・でも、まぁ決めたよ」

「何を、ですか?」

「巵の相方」

はぁああ!?!!



俺と翔己の声がハモった。

前衛後衛決める前に、相方が決まったのか?!!
何故、うちの監督はこうも滅茶苦茶なんだよ・・・っ!!



「まぁ、きっと・・・上手く・・・・・・・・・・・・できるよ」

「何その微妙な間っ!!」



しかも、目逸らしましたよね?!!

凄い不安。
不安すぎるっつーの!



「・・・で、どの1年と組ましたんですか?」



苦笑した翔己が監督に聞いた。


確かに、気になっていた。
だって監督のあの言い方・・・。

気にならない方がおかしいと思う。



「んーん、1年生じゃない」



ニコ、と監督が笑った。
その顔を見た瞬間、俺と翔己は固まった。

そして、少しの間があいた。



「・・・・っ、て、ペア総入れ替えですか?!!」

「はぁっ?!!なんで、陽平なんかのために!!」

「『なんか』って言うなよっ!!」



翔己も何気に酷い事言うんじゃねぇよ!!
俺だって頑張ってるんだぞ?!



「落ち着け落ち着けー」

無理ですよ!!



本日二度目だ、俺と翔己の声がハモったのは。



「・・・順おって話すから、とりあえず座れ」



そう言って、監督は俺と翔己の頭を押さえて座らせた。


何だかんだで、俺等をココまで大人しくさせる監督は凄いと思う。



「まずは総入れ替えの話」

・・・・

「確かに総入れ替えはする。だけど、これは巵のためじゃない。
 今度入ってきた1年の中にとんでもないのが数人いる。
 そいつ等を使って可能性にかけたいんだ。」




そう言ったときの監督の目はキラキラしていた。

確かに、ここ数年は地区予選を勝ち抜くのがやったのチームだ。
そのチームを変えて、地区予選から大反乱したいんだろう。

だって、この監督だし。



「お前も、咲原とペアじゃなくなるから」

「・・・マジですか?!!」



翔己とか直に言われてる。


確かに、総入れ替えとは言ったが、心の準備ってのがある。
それに、変えれないヤツとかもいるかもしんねぇじゃん。

洸と翔己のペアは最強って言われてたからなぁ・・・。

まさか、それも変えるとは・・・。



「で、巵のポジションなんだけど」



ゴクン、と生唾を飲んだ。


俺が待っていたのは、これだ。
これだけのために今日はこのクーラーもない部屋に1時間近くいたのだ。



「・・・あとで教えてあげる」

「はぁ?!!」



いきおいよく立ち上がった。
そして、監督を睨むような目で見た。



「だってさ、面白くないでしょ。今聞いたって」



いやいやいや。
面白いとか面白くないの話じゃねぇの!!
俺は、今ココで聞きたいの!!
でなきゃ、1時間近くもこんな部屋に・・・っ!!



「部活終了後、皆にペア発表するからその時に教えるよ」



ニコリ、と監督が笑った。
この時ほど、監督を恨もうと思ったことはない。

・・・ホント、気になるじゃん。




















「あ、でも僕今日は早いから明日のミーティングで発表しよう!」

「・・・え?!」