「ヤダ」




キッパリ、と言った。

今、俺と翔己は部室に居る。
2人きりで。
内容は『俺のポジションについて』だ。



「べっつに、陽平が受けになれって言ってるわけじゃ」

「おーれーはーなーにーもーきーいーてーねぇええええ!」



パっと耳を塞いだ。
俺はこの手の話は苦手だ。

つーか、好む奴の方が少ないんじゃねぇのか・・・?



「あーもういいから」

「お前の所為じゃん」

「・・・後ろでイイんだ?」

「嘘です、ごめんなさい、逆らいません」



何て弱いんだ、俺!!
しくしく、と泣きまねをしながら俺は翔己の話を聞く。



「まぁ、お前も背はそこまで低くはないけどさ・・・テニス初心者でしょ?」

「んー、そうだけどさぁ」



そう。ポジションはテニスのポジションについてだ。
俺的には前衛が魅力的だった。
だって、スマッシュとかボレーとか・・・惚れるじゃん?
女にモテそうじゃん?!!
否、それだけじゃねぇけど・・・。



「俺的には、人数の少ない後ろ・・・つか、後衛に入って欲しいんだけど」

「ヤダ」

「あーもう・・・っ!」



さっきからこれの繰り返しだった。

俺はどうしても前衛ポジションを譲らない。
逆に翔己は後衛ポジションを勧めてくる。
まぁ、最終的な判断は翔己が握っている。
だけど俺の意思もかなり強いってことが解ってくれてるからこうやって話をしているんだ。



「しょーきせんぱー・・・お取り込み中?」



ガチャ、とドアが開いたと同じに俺等の目に留まったのは可愛らしい顔。
否男だけども、童顔っつーのかな。
俺等の1個下の咲原洸だった。
ちなみにポジションは後衛。
見かけによらず結構なボール打ってくるから恐ろしい。



「大丈夫だよー・・・で、何?」

「ようへー先輩を説得できたかな、と」

「あー、無理無理、こいつ頭固いもん」

「翔己っ!!」



誰が頭固いだって、グォラァ!!
いつかブっ殺す。



「ようへー先輩も折れればイイじゃん?」



そう言って洸は俺と目線を合わせてきた。
そんな洸に俺は手を横に振った。



「無理無理、俺は前衛したいし」

「むーっ、後衛だって楽しいのにさー」



ブーっと頬を膨らます洸。
もうあれだな。
お前小動物としてペットショップで売られててもおかしくねぇと思う。



「そうだよ陽平、後衛は楽しいよー?」



ニヘラーと笑いながら俺の肩に顔を乗せてくる翔己。

ていうか、お前は前衛だろうが。
前衛の楽しさを知っているくせにその反応か?!!
俺、お前を殺しかねねぇぞ?!!



「うっとうしい、くっつくな」

「あ、そう後衛でイイんだね!」

「うそうそうそうそ!!」



俺からすぐさま離れた翔己を俺がすかさず翔己の服を掴んだ。

俺、やっぱ立場弱い!!
何これ、俺が反論したら、もっと凄い返事が帰ってきます。
何故こうも・・・!



「にしても、これじゃぁ拉致あかないじゃん?」

「だよねー、洸もそう思うよねー」

「あったりまえじゃん!」



何だ。
ここの団結力は何なんだ。

ていうか、ココのテニス部は仲イイよなぁ・・・。
先輩後輩なく話してるし。
まぁ、敬語をほとんど使わない洸にはビックリしたけどな。
否・・・もう一人敬語をほとんど使わない奴がいるけどよ。



「・・・ちーっス」

うっわ、槐人

「何スか、その全員の嫌そうな反応・・・つーか郁もいますから」



はぁ、と溜め息をついたのは小鳥遊槐人
こいつは1年生でポジションは後衛。
この前打ち方とか見たけど、テクニックが凄い。



「・・・槐人もよぉそこまで嫌われたもんやな」

「好き好んでねぇよ、つか嫌われてねぇし」

「本間かいな?」



ケラっと笑った関西弁が夏木郁
槐人と同じく1年生。
ポジションは前衛兎に角異常だ。
まぁ、試合やるやつにしか解んないって事かな。
そして、敬語を使わない奴のもう一人がコイツってわけだ


「そういや、陽平先輩のポジション決まったん?」

「それがさー、決まんないんだよね」



苦笑した翔己は郁を見た。

そんなに俺のポジション決まらない事が不服かっ!!
いや、まぁ・・・不服なんだろうけど。



「陽平先輩もイイ加減後衛になりゃぁイイじゃないっスか」

「うっせー、前衛の素晴らしさはお前に解んねぇよ!!」

「先輩も解ってねぇーっスよね?」



はぁ、と溜め息をついた槐人。

何、俺が前衛の素晴らしさを解ってないとか思ってんの?!!
すっげー殴りたい。
俺そこまで馬鹿じゃねぇし!!



「・・・っ、と・・・ちわっす」



ドアが開いたかと思うと、有栖礼緒が入ってきた。
礼緒は2年で洸と同い年。
ポジションはこの身長からしても解るように前衛だ。



「礼緒、今まで何してたの?」

「あ・・・まぁ、イロイロ」



テテ、と洸が礼緒の方へ走って行った。
この2人は本当に仲がイイ。

・・・・・・・・・・・・うん、仲がイイんだよ。



「あー・・・部長」

「ん、何?」

「今日のメニューを監督から預かってきました」

「はいはーい、ドモ・・・」



と、そこで翔己が固まった。

俺等はその固まったのが気になって翔己の周りに集まった。



「『陽平は前衛練習に参加』・・・だってさ」



代表で洸がその内容を音読した。
その言葉に俺は少し首を傾げた。

・・・え、今・・洸・・・・。



「お、俺・・・前衛?!!」

「みたいだねー」

ぃやったぁああああ!!」



握りこぶしを右手に俺はジャンプした。
これで、俺は今日から晴れて前衛だ。
自分の目指す前衛になれる日が、楽しみだ。




















「『前衛でフザけた事すれば即後衛』・・・だってさ」

「矧ト督っ?!!」