「まだ、だけど?」
19.実行時刻は7時30分のちょっと後
カラン
「ただいまー」
午後7時30分。
父さんが帰ってきたらしい。
玄関の方で声がした。
「ねぇさーん・・・帰って来たけど?」
「んー・・・」
何だかんだで恥ずかしいんだろうなぁ。
まぁ、確かに十数年ぶりの再開だもんな。
恥ずかしがらない方がオカシイ。
「ちゃーん、ご飯食べるわよー」
「はいはーっい」
適当に答えを返すと、俺はねぇさんの腕を握った。
そしたら、ねぇさんが俺の顔を見た。
あー、マジマジ見られたら恥ずかしい。
「夕飯、だとさ」
「う・・・ん」
「行くよ?」
「っぁあ!見捨てないでっ!!」
ねぇさんはまだ心の準備ってやつが出来ていないんだろう。
座ったまま、俺の服の裾を引っ張った。
あー・・・、服の裾伸びる。
これ、お気に入りの服なのにさ。
「見捨てるっつーか、夕飯」
俺は部活やってきたから、腹が減ってる。
しかも、かなり。
今も腹がグルグルなってる。
それなのに、ねぇさんは俺を止めるのか?!
「うん・・・でも!!」
「どーせ、後にでも言うんなら早い方がイイじゃん?」
ぎこちなくだが、ねぇさんの首が動いた。
ガチャ
それから部屋を出てキッチンに着くまでの時間が物凄く長く感じた。
いつもなら走っていくところを歩いて行った所為もあるのかもしれない。
「うー・・・きんちょー、する」
「いつも通りでイイんじゃね?」
多分、ねぇさんの手は震えてると思う。
まぁ、声が震えてるんだから、手も震えてるんだろうなぁ。
そんなことを思ってたら、キッチン前のドアに着いた。
ドキドキと俺の心臓の音が高まった。
「って、何で俺の心臓が高まってんだよ!!」
「・・・何言ってんの?」
「ひ・・とりごと、です」
うわー。俺馬鹿。
何、声に出して言ってんだよ。
あのねぇさんから変な目で見られちゃったじゃねぇか!!
「っし・・・開ける、ぞ」
ギィ
・・・奇妙な音がなるなぁ。
いい加減、このドア修理した方がイイんじゃねぇ?
「ちゃん、遅いわよー・・・」
入った瞬間、母さんが俺の顔を見ずにそう言った。
母さんは今机の上に夕飯をのせているところだ。
御免、と誤った後に俺は席に着こうとキッチンの中へと入って行った。
俺のあとをゆっくりとついて来るねぇさん。
そういうところはカワイイって思うんだけどなぁ。
そして、母さんが俺の方を振り向いた。
「ちゃん・・・」
言葉が詰まってた。
多分・・・ねぇさんに気付いたんだと思う。
うん、ねぇさんは俺の後ろに居たからなぁ。
「お・・・かぁ」
「お風呂、入ってないでしょ!!」
「「へ?」」
俺とねぇさんの声がハモった。
はぁ?今母さんは俺が風呂に入ってない事に気付いた・・・?
っていうか、風呂は後々入ろうと思ってたから入ってないのは当たり前だけど・・・。
って、そうじゃねぇよ!!
「汗かいてるんだったら、やっぱりお風呂入っちゃってよ?」
ニコニコと笑っている母さん。
「え・・・ちょっ、いつもと違うくねぇ?」
俺は母さんに問いかけた。
だけど、母さんの顔はわけがわからないといった風だった。
「うーん・・・何、が?」
「・・・っ、おかあさんっ!!!」
俺が言葉を言う前にねぇさんが母さんの目の前に出た。
そして、何度も何度も「おかあさん」と呼んでいたけど、母さんはそれに返答はしなかった。
だから、ねぇさんは父さんの方へ言って、「お父さん」とも呼んでいた。
それでも、返答は・・・無かった。
「あー・・・もう、ちゃんは、お風呂入ってきてね?」
ニッコリとした母さんの笑顔は俺だけに向けられていた。
ねぇさんが、キッチンから出て行くのを見た後、俺も出て行った。
「何が、どう・・・なってんだよ」
俺は走って自分の部屋へ行った。
けど、もう部屋の中にはねぇさんが居て、ベッドの上で泣いていた。
そんなねぇさんが見てられなくて、俺は風呂に向かった。
「・・・意味、わかんねぇ」
★後書★
サードアクシデント終了です。
今回は親に言うはずのシーンだったんですが、結局見えず終いってわけです。