「おはよーっ」





が見つけたのは柳生と仁王だった。
朝練のために早く来たと思っていたが、案外部員も早く来るものだ。





「おはよう御座います」

「おは・・・」





柳生はペコリと丁寧にお辞儀をした。
だが、仁王は朝に弱いのかまだ頭の方が起きていなさそうだ。
目も半開きで喋っている言葉も小さい。





「今度・・・柳生君はシングルスっぽいよ」





仁王に話しかけては話が続かないだろうと感じたは柳生に話しかけた。
柳生は自分と仁王との間にを招き入れた。
その行為に、はありがと、と言った。





「仁王君が丸井君と組むとは聞きましたが・・・」





とても吃驚した顔で柳生はを見た。
そんな柳生を見て、はハハと軽く笑った。





「まぁ、今回は幸村部長がダブルスで来るからね」

「真田君と?」

「もちろん、柳君と」





キッパリと否定したは、再び笑った。
それは柳生の言ったことが面白かったのか何なのかは解らない。
しかし、笑ったことは確かだった。




















第四弾

朝の通学





















「くぁっ・・・」





欠伸を噛み殺して、朝の道路を歩く。
現在の時刻は6時32分。
交通量も言うほど多くも無い、かと言って少ないわけでもない。





「あ・・・青だ」





信号が青に変り、は横断歩道を渡る。
信号からは音楽が流れているが、今のにはその音楽が聞こえない。
何故なら耳にはヘッドフォンをつけていて、自分が好きな音楽を聴いているからである。





「・・・おは、ござ・・す」

「ん・・・?」





小さな声が聞こえた。
はヘッドフォンを外して周りを見回した。
見回す前に、右隣に人が居た。
その人は見た目からしてもとてもきっちりしてそうで、眼鏡をかけているあたりどこか大人の雰囲気がある。
そいつの、名は柳生比呂士。
だが、は名前を思い出すことが出来ずにいた。





「うーん・・・と、えーっと」

「柳生です、柳生比呂士ですよ」

「ぁあっ!」





手をポンと打ち合わせて、は柳生を指差した。
柳生は自分の事が解ってくれていた事に安心して胸を撫で下ろした。





「おはよう御座います・・・柳生君」

「おはよう御座います、さん」





お互い、お辞儀をした。
だけど、ここは道路だ。
道行く人が少しだけ不思議そうに2人を見て歩いて行った。





「私の名前、知ってるんだ?」





マネージャーは14人もいる。
そんな人数の多い中で、しかも短期間で、自分の名前を知ってもらえることは嬉しい。
同じ歳でもやはりクラスが違うと名前もろくに覚えてもらえない場合があるから特に嬉しい。





「えぇ・・・」





柳生にとっては、と言う名を覚えるのは容易い事であった。

理由は簡単だ。
あの、真田や幸村が一目置いているというマネージャー。
真田や幸村は1年ながらもかなりの実力者だ。
3年や2年のレギュラーには負けはするものの、他のヤツラは敵では無さそうだ。
そんなやつらが気にしているマネージャーとなれば、気になるに決まっている。





「知ってなければ声もかけませんよ」

「そっかそか」





はケラリと笑った。
そうして、学校まで2人は一緒に行こうと言う事になった。
まぁ、言わずとも2人の目的地が同じわけだから同じ場所についてしまうんだが・・・。





「ところで、さんは丸井君と同じクラスだとか・・・?」

「あー。丸井?」





ハイ、と柳生は首を縦に振った。
は柳生の言葉にあまり楽しそうな顔はしなかった。
逆に、眉間にシワがよっていた。





「何か、丸井君とは悪い出会い方でも?」

「うーん・・・私ね、丸井のこと先輩だと思ってたのよ」

「・・・は?」

「髪の毛赤いじゃない?」





エヘヘと苦笑して、は入学式の事を柳生に話した。
柳生は興味深そうにその話を黙って聞いていた。





「凄い・・・ですね」





が最後まで喋り終わると、柳生は感心したような声をだした。
は柳生の声にアハハと笑うことしか出来なかった。





「でも、今思えば馬鹿だなぁ・・・と」

「まぁ、中学生で染めてる人ですから、ねぇ」





フフと柳生が笑った。
はそんな柳生を不思議そうな顔で見ていた。





「・・・何か?」

「え・・・否、やっぱ柳生君も笑うんだ、なぁって」





エヘヘとは笑った。
だが、柳生はの言ったことに首をかしげた。
『柳生君も』と言われれば、他の誰かも自分と同じように思われていたという事だ。





「・・・あぁ、柳君も笑わない人だと思ってた」





はあっさりと白状した。
その答えに柳生はビックリしていた。
もちろん、がすぐに白状した事もそうだが、柳が笑うことにビックリしたのだ
そりゃぁ、人だから笑うこともあるだろうとは思っていたが、今まで柳の笑った顔を見たことが無かったから。





「アハハ、やっぱ柳生君もビックリしてるか」

「それは・・・」

「っと、時間・・・ヤバイんじゃない?」





チラリとが腕時計を見た。
そこには時刻が6時49分と書かれていた。





「部長に怒られるよ?」

「きっと、さんも同罪ですよ」





それは勘弁だ、とは思った。
そうして、2人は学校まで軽いジョギング程度に走って行った。




























後書
柳生登場です。
会い方が部活内じゃないのってどうよ(笑)