大阪のひき逃げ事件


ひき逃げは犯罪なので事故ではなくて事件。それにしても、ここのところ大阪でひき逃げ事件が頻繁に起こっている。そして、その背景には大阪人のマナーの悪さ、自己中心的な傾向があるという発言も多い。

先日、実家に帰って世相の話をしていたら、父が大阪人のマナーは最低だからひき逃げ事件が頻発するのだ、と言っていた。

2つの問題点を指摘した。

1つは、話題性のある事件が起こると報道メディアが同種の事件を大きく扱う傾向があるということ。模倣犯が増えるという指摘もあるが、ひき逃げはそれはあてはまらないだろう。メディアへの露出度が増えるので、犯罪が多発しているかのような錯覚に陥る、と意見した。実際、少年犯罪の件数は減っているのに、メディアでの報道が多いので増えているかのように思っている人が多い。

もう一つは、ひき逃げは大阪人の交通マナーがは悪いせいなのか。マナーが悪いといっている父自身が大阪(この場合京阪神広域圏としての大阪)に住んで50年以上になるではないか。いったい誰をさして大阪人といっているのだろう。

その場で統計資料をあたることができなかったので、あらためて調べてみた。ところがネットで検索しても、ひき逃げに関する統計資料がヒットしない。警察庁のホームページ 内で検索してようやく下記の資料をあたることができた。

平成19年の犯罪

このなかの「第3 交通犯罪」に「94 府県別 ひき逃げ・無申告事件 発生・検挙件数」というのがあった。

     発生総数(検挙) 死亡(検挙) 重傷(検挙)
1. 大阪  2,972 (1,236)  15 (12)   126 (79)
2. 埼玉  2,628 (919)   17 (16)   232 (64)
3. 神奈川 2,398 (1,186)  12 (12)   94 (78)
4. 愛知  1,983 (542)   16 (12)   41 (25)
5. 東京  1,935 (504)   14 (12)   26 (17)
6. 千葉  1,555 (429)   15 (14)   143 (31)
  全国 24,727 (10,160) 190 (171)  1,657 (804)

ということで、残念ながら、実際に大阪でのひき逃げ発生件数は全国一だった。しかも昨年度の死亡件数が15なのに対して、ここ数週間で3件も発生している。やはり、異常だったのだ。

全国総数でみると、死亡件数は190で、平均すると2日に1件の割合でひき逃げ死亡事件が発生していることになる。それも異常な話だ。

そう考えると、大阪でばかりひき逃げ死亡事件が発生しているわけでもないと言える。(昨年の話)

しかも、この統計をよく見ると、死亡件数がもっとも多いのは埼玉、ついで愛知、大阪は千葉と並んで第3位。また重傷の件数でも1位は埼玉で、2位は千葉、大阪は3位である。

今年になって、大阪での事件が増えたのかもしれないが、同様の事件が埼玉、愛知、千葉で起きている可能性は高いということだ。報道しないのは、なにか大阪への恨みがあるのだろうか。

ちなみに、検挙率は全国平均で41%。上記の府県中では、神奈川49%、大阪42%、埼玉35%、千葉28%、愛知27%、東京26%となっていて、やはり逃げ得という感が拭えない。事故をおこしても6割の確率で逃げ通せる。

もっとも、死亡事件に関しては検挙率が高い。それでも大阪で15件中3件も未検挙のまま。5分の1の確率で逃げ通せることになる。

事故を起こして逃げた方は、被害者がどうなったのかわからないまま。未検挙の3件のひき逃げ犯人にしても自分が殺人を犯したかどうか分からないままなのかもしれない。昨年も今回のように報道すれば未解決の3件を解決できたかもしれない。

そう考えると、やはり、この間のひき逃げ事件報道は、異常な加熱ぶりのように思える。おかげで犯人検挙につながったので、結果としてはよかったのかもしれない。

大阪人のマナーが悪いかどうかの検証は、また今度。ただし、今回のひき逃げ犯は、無免許の女子中学生をのぞいた2名は飲酒運転常習犯だったことが最大の要因に思える。これはマナーの問題とは別問題で、飲酒運転撲滅が優先すべき課題だと思われる。


金 - 11 月 21, 2008   01:05 午前