<福岡3児死亡事故>の地裁判決に思う


<福岡3児死亡事故>今林被告に懲役7年6月 地裁判決 」と毎日新聞が配信していた。焦点になっていた危険運転致死傷罪が適用されなかったということだ。不審に思って記事をよく読むと、疑わしきは罰せずという司法の理念は理解できるものの、科学的検証を怠った判決のようにも思う。

毎日jpの記事によると、
川口宰護(しょうご)裁判長は「酒酔いの程度が相当大きかったとは認定できず、飲酒の影響で正常な運転困難だったとは認められない」と述べ、直接の原因を脇見による前方不注視とした。
川口裁判長は危険運転致死傷罪の成否について、脇見運転だったとする今林被告の供述の信用性を認め「酒に酔った状態だったのは明らかだが、運転操作や、水の持参を頼んだ言動などから、判断能力を失ってはいなかった」と認定。その上で量刑を「飲酒での高速走行は危険極まりなく悪質で、今回のような重大事故を起こすべくして起こした。厳しい非難を免れず刑事責任は誠に重大。法定刑の上限をもって臨むのが相当」と述べた。

ということだが、脇見運転が直接の原因だったとしても、飲酒による判断力の低下がこのくらいの脇見なら事故を起こさないと判断せしめたと思うが、ちがうのだろうか。そもそも、脇見運転は正常な判断力の範囲内にはないだろう。

無罪を主張して、酒に酔った状態が明らかなのに判断能力を失っていない、のを立証するのは難しい。ただし、これは刑法なので、被告が証明する必要はない。むしろ、酒に酔って判断能力を失っていたと、検察側が立証しなければならいということのようだ。

ところが、いちどひき逃げして戻ってきてからしか飲酒検査をしていないので、事故当時のアルコール濃度がわからない。だから罪に問えないといことになっている。

ならば、飲酒運転をしても正常な「判断能力」があれば罪に問われない。また、飲酒運転で事故を起こしたら、いったんは逃げて、酔いが冷めてから出頭すればよい。ということを認めていることにならないか。

酒に弱い私にはわからないが、アルコール摂取によって正常な判断ができなくなるのは、既存のデータから明らかなのではないだろうか?
だから飲酒運転を取り締まっているのではないか?

事故を起こした時点でどの程度のアルコール量であったかは、簡単に実験できるだろう。同じ量のアルコールを摂取させて、事故後の飲酒検知数値と同じ値になるのにどのくらいの時間を要したかを計測すればいい。そのうえで、事故を起こしたのと同じ経過時間時点での判断力が正常かどうか実験すべきだろう。

毎日jpの記事には、
危険運転致死傷罪 東京・世田谷区の東名道での飲酒運転による幼児2人の死亡事故(99年11月)を機に、01年12月の刑法改正で新設された。(1)正常な運転困難な飲酒や薬物摂取(2)制御困難な高速走行(3)割り込みや急接近などの妨害(4)信号の殊更な無視−−が原因の事故で、死亡させた場合は1年以上20年以下、けがをさせた場合は15年以下の懲役が科せられる。06年の適用は全国で380件。

とある。裁判官自身の言葉として、(1)と(2)を満たしているようにおもうけど。釈然としない判決だ。


火 - 1 月 8, 2008   10:02 午後