笹田剛史先生が亡くなられた


CGをつかった建築・都市プレゼンテーションの先駆者。もう20年ちかくも前まえのこと、CG制作現場を見たくて、友人を頼って一度研究室を訪れたことがある。もっとも先生にお会いしなかったが。

1990年前後、まだCGアニメーションはワークステーションでしか制作できない時代だった。しかもレンダリングした静止画を1フレームずつビデオ録画していた。3次元建築CAD自体がパソコン向けのものはなかった。かろうじてLINKSというソフトが文字コマンドベースで3DCGを作成できた。スクリプト書いてコンパイルして実行させてやっと画像が表示されるというものだった。

そういう時代に建築空間をCGアニメーションにしていたのが笹田研究室だ。はじめて見たときの衝撃は大きかった。模型とはちがう空間表現力。質感などのリアリティはなかったが、丁寧にモデリングされた空間の現実感は圧巻だった。わたしのCG体験の原点だ。

研究室から誕生したCGアニメーション会社は、独自のスタイルで建築・都市空間を現していった。安藤忠雄の作品のCGアニメーションもよく目にした。業界がみな追随したように思う。すでに研究室から独立していただろうから、笹田先生とはもう関係なかったのかもしれないが。どうなったんだろう、あの会社。

CGアニメーションは高価なマシンでしか実現し得ない。そのころ建築CADの販売会社に転職した私は、システムをカスタマイズしながらもワークステーション用建築CADが高価なことに、普及へのあきらめ感があった。2千万円以上したのだ。しかし技術の進歩は著しく、1991年にMac用の建築3次元DCADソフトが国内発売された。Macintosh Quadora700と、3DCADソフトで100万円しない。私は安価は個人用パソコンで建築プレゼンテーションとしてのCGアニメーションを実現する方法を模索しはじめた。

笹田先生の訃報は西村先生のブログで知った。まだ64歳だった。これから円熟期の研究活動が始まろうというときに、残念です。ご冥福をお祈りします。


日 - 10 月 2, 2005   12:04 午後