NHK「被曝の森はいま」はどうしてもっと話題にならないの


BSで放映されたとき(5/10~12)に話題になったそうだが、6月2日の深夜に総合テレビでチェルノブイリ関連のドキュメンタリー「永遠のチェルノブイリ」「被曝の森はいま」「見えない敵」が3本連続で放送された。(頭痛と目眩で倒れた日の深夜だったが、たまたま目覚めたので録画できた。)

「永遠のチェルノブイリ」ではチェルノブイリ原発をモチーフにしたテレビゲームがあることを知った。しかも立ち入り禁止区域を「ゾーン」、その案内人を「ストーカー」と呼ぶ。そっくりそのままタルコフスキーの映画『ストーカー』ではないか。あれは原発事故の前の作品だったように思うが、たしかに共通点がある。さらに笑ったのは、ゲームの到達点に登場する「モノリス」。まあ、ゲームだからどうでもいいんですが。

「被曝の森はいま」がとても印象的だった。人間がいなくなった立ち入り禁止区域は野生動物の楽園と化しているらしい。まさに「ゾーン」の景観。映像としてはCGを多用して実写に被せているのがとても気になる。実写とCGの見境がつかなくなる危険を孕んでいる。しかし、特筆すべきは、「ゾーン」に生息するネズミには放射線に対する耐性ができているとした研究(テキサス工科大学ブレンダ・ロジャーズ、2008年)を紹介していることだ。

いわゆる低線量放射線のホルミシス効果を実証した実験結果だ。通常の放射線量の1000倍(「1000倍でも科学者にとっては低線量」というナレーション)の「赤い森」地域(「ゾーン」)に籠に入れて45日間放置したネズミと、汚染されていない地域に置いたネズミとを比較。双方のネズミに1.5Gyの放射線を数分の1秒(なんで正確な数値を述べられ)照射すると、24時間後「ゾーン」のネズミはDNAの損傷レベルが低かったことが判った。放射線が作り出すフリーラジカルがDNAを損傷する前に抗酸化物質がフリーラジカルを消滅させるメカニズムが発生しているとのこと。(「フリーラジカルへの対抗システムをコントロールする遺伝子とそのシステムに変化が生じた」)

ネズミを放置した「ゾーン」の放射線量が具体的に述べられていないが、通常の1000倍ということは、年間1mSv(0.114μSv/h)を基準被曝量とすると、年間1000mSv(114μSv/h)! 45日間で被曝量は123mSvにもなる。

そのネズミに耐性ができる。他のほ乳類は? 人間は? 

どうしてこの研究成果はもっと話題にならないのだろう。もし人間にも耐性ができるなら、いま話題になっている年間20mSvなんて問題にならない数値ではないか!

ネットを調べても誰も話題にしていない。上の計算は間違ってるのか?

話題にならないのは、実験研究の成果には放送していない落とし穴があるにちがいない。耐性ができるネズミは10匹に1匹くらいで、あとは通常のネズミ同様だとか。

実験結果から、単に低線量放射線ホルミシス効果の部分だけをとりあげただけなのかもしれない。

このドキュメンタリーはフランス製。フランスは原発推進国。

テキサス工科大学ブレンダ・ロジャース博士
Dr. Brenda Rodgers(http://www.biol.ttu.edu/faculty/brodgers/default.aspx)


日 - 6月 5, 2011   08:54 午前         |