今年の紅白歌合戦は「おふくろさん」がよかった


森進一の「おくふろさん」は、子どもの頃から紅白歌合戦でもよく聞いたが、今年の「おふくろさん」は特別だった。

ゲスト審査員の松本幸四郎が次のように述べていた。

人の悪口をいったり非難したりするのは簡単だが、人に感動をあたえることはむずかしい。われわれはそれを商売にしていることをあらためて感じさせてくれた。

まさに森進一は、ひとに感動を与える歌を歌い続けてくれている。

「おふくろさん」に関してはいろいろあったのだろう。きっと傲慢になっていたに違いない。しかし、今日の紅白では、初心に返ったように、気負いも傲慢さも感じない、素直さがあった。

真摯に歌うその姿勢には、まだ新人だったころの森進一を見るようだ。

なんども聴いて、なんども歌った歌なのに、歌詞のひとことひとことが身にしみる。


その直前に、天童よしみが「道頓堀人情」を熱唱して感動した。天童よしみは、ビジュアルで損をしているが、歌は上手い。浪花節の典型のような歌詞だったが、人の暖かみを感じさせるのはふるさとであり、その想いがあるから頑張ることができるということか。いつでも戻ることができる場所があるということが心の支えになっている。

天童よしみの「道頓堀人情」が、場所としての拠り所なら、森進一の「おふくろさん」は心の拠り所。

天童が歌うことによって作られた気分の高揚が「おふくろさん」をさらに盛り上げた。心憎い演出と言えよう。

カメラは、ずっと森進一の顔をアップで撮り続けた。

会場から見たステージはどうだったのかわからない。他の曲、とくに若者向けの曲では、ステージ後方の大スクリーンに映し出される映像が派手な演出をしていたが、森進一のときはそのような演出を一切廃したようだ。

傲慢になってはいけない。そんなメッセージを受け取った。


水 - 12 月 31, 2008   11:55 午後