『篤姫』の無血開城は、ちょっと史実と違うような気がする


NHKドラマの『篤姫』も終盤、佳境に入った。龍馬暗殺のあと、西郷らが蜂起して江戸城引き渡しに至るまで、非常に興味深く見ている。いわゆる歴史上のヒーローたちからとは異なった視点で描かれていて、ドラマとしてはおもしろい。

そう、これはフィクションだ、ということは分かっていても、やはり気になる史実。

それにしても、幕末の史実が、淡々と扱われている。大奥から見ると世相はこんなものなのか。

それに、少しばかり篤姫の存在を強調しすぎて、歴史上の人物像を歪めているような気がしてならない。

とにかく西郷隆盛の風格がなさすぎる。若い頃から人の上に立つ資質を持ち合わせていたということが、まったく感じられない。その西郷の扱い方がひどいから、ここ「無血開城」に来て不満が爆発した。

仮に、いままで語り継がれてきた西郷隆盛像が虚像だったとしても、また、篤姫に対して頭が上がらないということがあったとしても、このドラマの西郷には江戸まで官軍を率いていくだけのカリスマ性がない。

それに西郷の演技は最悪。ここ数回、何度も涙を流さずに嗚咽している。泣いてもいいけど、無言で涙するか、号泣するか、どっちかにしてほしい。

無血開城の場面。司馬遼太郎の小説では、もっと緊迫した空気があったように思うが、なごやかすぎる。それに天璋院の計らいがなければ、無血開城はなかったのように描かれている。西郷は勝を信頼して無血開城を決めたのであって、情にながされて、我が身を振り返った訳では何だろう。

あれじゃ、西郷も勝も浮かばれない。

ところで、次男の晃志は『篤姫』をみてて岩倉具視が大嫌いになった。実際、誰が見ても憎らしい人物に思える。岩倉具視は500円札にもなった人物だとは知らない。鶴太郎の名演技に拍手。


追記(081207)
天璋院は大奥を閉じるために招かれたというらしい。それならば、大奥が江戸城から出て行くということがどれほど大変であったかをもっと詳細に描いてほしかった。あまりにも、あっけなく城を出ていて、説得力がない。家族家族を連発して、連帯感を強調しているものの、ほんとうに家族が離散するかのように大奥は解体したけど、大奥の心(徳川の心)は残ったのだろうか。結局天璋院の涙(個人的感情)だけでドラマは終わっている。


日 - 11 月 30, 2008   02:42 午前