iMovie'08の不満点


iLife'08をインストすると古いiMovieは、「iMovie(以前のバージョン)」フォルダに残される。高度な編集はiMovieHDを使うようにと指示されるが、iMovie '08はユーザーインターフェースがまるっきり異なるので、どうやって使ったら良いか分からず、戸惑いを感じる。

そもそも、iMovie'08はPowerBookG4(1.25GHz)にはインストできなかった。

Intel-MacかPowerMacG5(2.0GHz Dual)またはiMac G5(1.9GHz)以上の機種でないとインストールできないそうだ。初心者向けのユーザーインターフェースと操作性を確保するためには、動画編集ソフトとしてはマシンパワーが必要ということだろう。

iMovieはOS9時代からの動画編集ソフトで、これが発売された頃は動画編集といえば、アドビ社のPremiere(プレミア)という高価なソフトしかなかった時代だったので、誰でも気軽にビデオ編集できる環境が得られたのは画期的なことだった。(大学では、今だにOS9を使い続けている。)

それがiMovie '08によって、マシンパワーのないユーザーは切り捨てられてしまった。これが一番の不満点だ。

そして、ユーザーターゲットがYouTubeやMobileMe(旧.Mac)への公開に絞り込まれてDVD作成のための便利な機能がなくなった。具体的には次のとおり。

マシンパワーを要求するくせに、従来はあった音声編集機能が一部できなくなるなど、大変不便になった。

用意されているタイトルインサートの種類やトランジッションが大幅に少なくなった。

チャプターインデックスが打ち込めない(これが一番の欠点)。つまりiDVDへ引き渡すときにチャプターメニューが作れない。

iDVDへの引き渡しは「共有」>「メディアブラウザ」で行なうが、従来の4:3画面のフルサイズ(640x480)で書き出すと、1.7Mbpsでの出力に固定されてしまう。それより上は4Mbpsになり、表示は720x540になる。DVD作成のために高画質にするにはこれを選ぶ必要があるのだが、そういう説明がない。



便利になったところもある。Final Cut XMLに書き出しできるようになった。しかし、以下の点の注意が必要。

すべてのトランジッションがクロスディゾルブになる。
タイトル、アフレコ、サウンドエフェクト、ミュージックトラックは書き出せない。
切り取り/Ken Burnsおよび色調整の設定は書き出せない。

要はビデオ素材を並べ替えたところまでしか書き出せないということ。


編集機能で便利になったのは、タイトルインサートで文字のサイズを指定できるようになったこと。ただし画面上にテレビセーフゾーンが表示されないし、種類によってはセーフゾーン外でタイトルが作られる。それではタイトルインサートの意味ない。

編集機能でもうひとつ。静止画との合成ができるようになったこと。既成フォーマット以外でタイトル挿入ができる。画像はPhotoshopなどで背景を透明にした画像をTIFFフォーマットか24ビットのpngで保存しておく必要がある。ただし画像合成の際、クリップ長だけの表示時間が設定されてしまうので、あらかじめ合成したい箇所を「クリップの分割」で切っておくべき。

以上、不満点たらたら書きましたが、せいぜい4~5分程度の簡単なムービーをつくってYouTubeに公開するのには、結構お手軽ソフトという印象。

しかしiDVDに引き渡すための前処理用のソフトと考えると、これでは中途半端すぎる。もっと魅力的にできなかったのだろうか。それとも、YouTubeにアップするだけなら十分に魅力的なのだろうか。



ハードウエアは常にソフトの進化を上回るスピードで進化するという考え方が、いつしかAppleにはある。だから、新しいソフトは、OSも含めて、古いユーザーを切り捨てても構わない。古いマシンのユーザーを気遣って、Macの過去を知らない新規ユーザーが使いにくい環境をあえて提供する必要はない。むしろ新しいソフトを魅力的にして、新しいマシンへの購買意欲を刺激するほうが大切だ。

iMovie '08はそれに応えていないように思う。


金 - 9 月 12, 2008   12:57 午前