「 ぶら〜り ひと〜り まちあるき 」 < その1 > サン・ジミニアーノ 〜 イタリア・トスカナ地方の中世丘陵都市 〜
トスカナの広々とした田園地帯にあって、密集する家々を従えるようにそびえる塔の群
いきなり海外、いきなり世界遺産、いきなり詩的な始まり・・・ 失礼しました。 サン・ジミニアーノは、イタリア・トスカナ地方の海抜300mほどの丘陵地帯にあり、遠景から見える10数本の塔が林立するシルエットは、一度でも目にした人にとっては、忘れられない印象的な風景でしょう。 この街が現在の形を整えたのは、12〜13世紀の、いわゆる「中世」と呼ばれる時代のことです。
言い伝えによれば、サン・ジミニアーノにはかつて72本の塔があったといいます。
街を南北に貫くメインの道は尾根筋にあたり、中世の当時はローマからアルプスの北へと抜ける通商の主要街道だったそうです。ここから東に2本の尾根が延びていますが、この尾根筋にも道が走っていて街が広がっています。 旅の日記には、この辺りのことを次のように書いています。(*^_^*) 「システルナ広場への上り道。軽く右にカーブを切っていく石畳の道は、シークエンスを保ちながら僕をシステルナ広場へと導く。かつての市門であったアーチを抜けると、ついにそこはシステルナ。井戸をその重心にすえた三角形の閉じた空間。 ドゥオーモへは塔と階段が導く。ファサードは平面的だ。雑多な時代において、風土と人間が作り出した水平的なシークエンスの中で、街のところどころみえる塔がフォーカスとしての役割を果たす。まっすぐ天にのびる線にハッとさせられる。すばらしい光景がそこらじゅうにある。尾根に沿ってアメーバ状に発展した街の形はとても有機的である。それがまた街の端から見たすばらしい風景を演出している。」 んー (*^_^*) 、書いていることがよく分からんし、「シークエンス」や「有機的」という言葉を使うところが建築学科の学生っぽいのですが、とても感激していたことは確かなようです。
中世の丘陵都市の空間の素晴しさは、「通り」を歩くにつれて風景が継続的に変化し、常に新しい視界が開けていくダイナミックさにあります。
現在でこそ「世界遺産」になり、世界的観光地であるサンジミニアーノですが、私が訪れた当時はまだ「地球の歩き方」に半ページ程度しか記載されておらず、A2サイズにイタリア全土が入ってしまうほどの縮尺の大きな地図と、いい加減で有名な「ミシュランの時刻表」を頼りに、ユーレイルユースパスを片手に鉄道に乗って旅行した記憶があります。たしか「ポジボンシ」とか言う鉄道駅からバスで20分ほどの距離。田園風景の続くなか、丘陵の上の塔群が見えたときの感動は忘れられません。
旅の日記には、「意外と観光地化されていて、みやげ物屋が何軒か並んでいる。」と書かれているので、観光地としては有名だったようです。街の大通りで日本人とすれ違ったのですが、お互いに、「おー、こんなところで日本人に会うとは〜」と驚き合った記憶があるので、当時の日本人にはそれほどメジャーではなかったと思います。 「ぶら〜り ひと〜り まちあるき」の第1回目として、いきなり、20年前の旅の記録という「禁じ手」を使ってしましたが、サン・ジミニアーノは、アン王女にとってのローマのように(古い!)、私にとって忘れえぬ街の一つすので、なにとぞお許しください。
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