仮性近視の治療と低濃度アトロピン点眼による近視進行抑制 | 治せるものは治します |
生まれたての赤ちゃんは、特殊な病気の場合以外はすべてわりと強い遠視です。 そして体が大きくなるに従って、眼球も大きくなり遠視はゆるくなっていきます。つまり近視の方向に変化していきます。具体的には眼軸長(目の奥行きの長さ=長いと近視になる)が伸びてくるのです。 体の成長が止まる20歳ごろに、遠視と近視の境目で変化が止まれば、正視という状態になります。 しかし、それが少々行き過ぎることがあります。標準身長で止まらずに背が高くなってしまうのと同じです。 近視になるかどうかは、遺伝的にほぼ決まっているのですが、遺伝的な要因以外に、環境による影響(ものすごく勉強するとか)も確かにあるのです。近業によって眼軸長を伸ばす物質が分泌され、ムスカリン受容体を介して眼軸長に影響すると言われています。 |
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以上が軸性近視の成り立ちです。残念ながら眼軸長を短くするような治療は存在しません。 しかし、眼軸長が伸びるのを抑制する、言い換えれば、近視の進行を抑制する薬があります。それがアトロピンなのですが、通常の処方薬であるアトロピン1%点眼は副作用が多く一般的ではありません。そこで登場するのがその100分の1の濃度、0.01%アトロピン点眼です。当院でも低濃度アトロピン点眼による近視の進行抑制を保険診療で受けられます。 日本以上の近視大国でもあるシンガポールの国立眼科センターの研究で、低濃度(0.01%)アトロピン点眼には、眼軸長を伸ばすと考えられるムスカリン受容体をブロックする効果が認められ、さらに、高濃度(1%)アトロピン点眼に見られるような厄介な副作用が殆ど無いということが、明らかになりました。 現在、低濃度アトロピン点眼による近視治療は、世界的に近視治療の主流になりつつあり、日本でも7大学(旭川医科大学、大阪大学、川崎医科大学、京都府立医科大学、慶応大学、筑波大学、日本医科大学)で臨床研究が行われております。近い将来、保健適応になる可能性もあります。 点眼方法 診療費及び点眼の価格 |
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話は変わって、近視とは全く違う病気なのに、同じ症状を起こす状態があります。それを調節緊張、一般的には仮性近視といいます。 近くにピントを合わせるために、眼内の毛様筋という筋肉が収縮し、それが十分にリラックスできなくなって遠くにピントが合わなくなる状態です。毛様筋の「こむら返り」とでも思ってください。 |
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河野眼科では、「治る可能性のある近視の状態つまり仮性近視」の患者様には、「点眼治療」、「機械を使った毛様筋の柔軟体操および望遠訓練」をすることが出来ます。 まず「点眼治療」は、毎日寝る前に毛様筋の緊張を取る目薬を点眼するだけです。点眼後30分から1時間で毛様筋の緊張は完全に取れ、その状態が3〜4時間続きます。それを毎日繰り返すことで、緊張しっぱなしにならない毛様筋をつくります。 |
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次に「機械を使った毛様筋の柔軟体操および望遠訓練」というのは、「ワック」という機械を使って行います。「ワック」をのぞいて、両目で遠近感のある写真を見るだけです。「おお、すごく立体的に見えるぞ」と驚きながら、写真が離れたり近づいたりするのを目で追っているうちに、毛様筋が伸びたり縮んだりを繰り返し緊張が取れ、水晶体も厚みの変化を繰り返し、仮性近視だけでなく、眼精疲労・老眼にも効果の出る場合があります。遠くにピントを合わせようとすることで、眼軸長を伸ばす物質の分泌を抑えることも期待できるでしょう。 |
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左の写真と中央の写真を平行法で見ればイルカが空中に浮かんで見えます。ワックではこのように見えます。 (平行法が不可能な場合は中央と右で交叉法で試してください) |
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当院の患者様には「ワック」を無料でご使用いただいております。初めてのご使用時は職員が説明しますが、2度目からは簡単に操作できます。仮性近視で点眼されている方は、あわせて「ワック」を続けることで、その効果が確実になります。診察の時にしてもいいですが、毎日でも無料でお使いいただけますので、ご遠慮なくお申し出下さい。 |
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また、待合室には「ワック」以外に、患者様ご自身でリモコン操作できる「視力表」も設置しています。ご希望の方にはリモコンをお貸ししますので、診察を受けないときでも裸眼視力を測定でき、効果の目安になるでしょう。もちろん操作方法は説明させていただきます。この使用も無料です。 |