本曲:尺八の本曲とは、基本的には尺八独管で演奏する曲を指します。
「鹿の遠音」のような掛け合い曲(合奏)は別格であるといえます。
流派によってはニュアンスは違いますが、一般的には音楽的な面よりも、精神的な修行を目的として吹奏する場合が多いようです。
外国では東洋哲学として尺八を学ぶ人も有るようです。
また、宗教的な読経(声明)として扱う場合もあります。
曲の伝来が比較的はっきりしているのは、江戸時代の一月寺吹合所の指南であった琴古の伝えた曲です。
今日、琴古流と称されている流派の曲です。琴古流では、特に霧海じ、嘘鈴、虚空の三曲を古伝本曲とも言う。(詳しくは古伝本曲の項参照)
明治期に中尾他山によって創立された都山流、あるいは大正期の上田芳憧、酒井竹保などは流祖の作曲されたもの等の尺八曲を本曲とされているようです。
明暗系統の虚無僧曲は古伝も有りますが、実際はどうも近代になってから創作あるいは編曲された物も”古伝”と称されているようです。
某虚無僧に教わったとか言うたぐいは、かりに教えを受けたとしても、教わった方の名前も定かでない程度の些細なものなので、本当に教わっていたのか疑問視せざるを得ないわけであります。
ひょっとして、”教わった”と言っているが実はその御仁の創作で有るのかもし分かりません。
(たとえ、そうであったとしても名曲はその、音楽性を否定されるものではありません。)
昭和31年刊行の「名曲解題」の古典尺八によれば、月刊「芸海」連載の高橋空山師の稿として、都山流は「慷月調、春風、岩清水、霜夜、ほか」。上田流は「五月雨、落葉、湖畔の夕、雪の夜ほか」。竹保流は「胡蝶の戯れ、千代の壽、保津の川船ほか」が記載されていいます。
明暗系は割愛します。