天気痛

2015年4月7日



 


































 天気痛が、NHKの「ためしてガッテン」で放映され、低周波音被害者がそれに反応した。天気痛についての説明がぴったりと低周波音被害による健康症状にも当てはまるからである。 "ためしてガッテン"「天気が悪いと痛み出す 肩こり頭痛関節痛古傷大解消SP」20151月21日放送分 (追記 youtubeで2015年11月13日公開されています)

天気痛は気象病で、「雨が降ると、古傷が痛む」といったものであり、このような言葉は日常生活でよく耳にする。天気痛に悩む人は日本人の3人に1人と多く、欧米各国では、「天気痛」の発生を予測する「天気痛予報」が、公共サービスとして放送されているそうである。以下、要約。

「天気痛を引き起こす原因は内耳にある。内耳には、リンパ液がたまっていて、体が傾いたときなどに流れが生じることで、 脳がそれを感知してバランスをとる。天気が下り坂になると、気圧が変化し、内耳にある気圧センサーが興奮し始め、体が傾いていないのにリンパ液の流れを生じてしまう。その結果、目からの情報とリンパ液からの情報に食い違いが起きるため、脳は混乱する。 このストレスが、持病や古傷がある場所の痛み神経につながっている交感神経を興奮させてしまうため、古傷が再び痛み出したり、 持病が悪化したりしてしまう。
天気痛の人の内耳にある気圧センサーに刺激を与えた場合、普通の人と比べ、3分の1程度の刺激で センサーが反応し、不快感は3倍も持続するので、普通の人ではなんともない気圧の変化でも、天気痛の人には大きなストレスになって、 交感神経や痛み神経を興奮させてしまう。
天気痛も車酔いと同じ内耳の混乱が原因なので、酔い止め薬が効果を発揮する。リンパの異常が脳に届いて交感神経が興奮する前に飲めば、痛みが強くなるきっかけをおさえることができる。」

以上のように天気痛とは内耳の気圧センサー(有毛細胞)が気圧の変化を感知することで症状が起こり、乗り物酔いの薬で症状が抑えられるという。天気が悪くなって古傷が痛んだり、持病が悪化したりしても、避ける方法はないと思い、天気のせいだからと諦めてしまっている人も多いだろうが、実はこのような症状にも「天気痛」という名前があって、予防策がトラベルミンだったとは・・・・。

 汐見文隆氏の著書「低周波音被害を追って」の中で、漁師である風車被害者が語っている。「長年、海で漁をしているが、今まで海上で舟に酔ったことが一度もない。しかし、家の中で船酔い状態になる。」と。
 低周波音被害者が苦しむ症状は船酔い(乗り物酔い)と一致するものも多く、その症状は振動感、ふらつき、めまい、吐き気、頭痛、肩こり、食欲不振等で、中にはメニエール病と診断されてしまう被害者もいる。

 低周波音の人体への影響が船酔いに似ており、内耳や脳に影響を及ぼすことは汐見医師以外にも海外の研究者による論文でも言及されており、これらの研究は環境省関連の報告書(*、**)でも引用されている。

@ ウインド・タービン・シンドローム Nina Pierpont.MD.Ph.D 2009年

「レーラー博士とブラック博士は、内リンパ水腫(EH)と呼ばれる内耳の病気の症状とウインド・タービン・シンドロームの症状群が似ていることに気がつきました。EH の中にはメニエール病や外リンパ瘻ろう・・・も含まれて・・・・・めまいや聴覚の問題だけでなく・・・・頭痛、睡眠障害、著しい精神機能の低下なども起こり得ます。」

 
AWind Turbines can be Hazardous to Human Health Alec N. Salt, Ph.D.,2013年

These patients suffer from repeated vertigo spells, fluctuating low frequency hearing loss, tinnitus and a sensation of fullness or pressure in the ear. Low frequency sounds, at levels that are not damaging and do not affect hearing, have been shown to cause endolymphatic hydrops.

メニエール病患者などではこの内リンパに腫脹が生じ、低音難聴、めまい、耳閉塞、耳の圧迫感の症状が繰り返される。低周波音の音圧レベルが聴覚に損傷や影響を及ぼすものではなくとも、内リンパ水腫を引き起こすことが明らかになっている(管理人訳)

 ゆえに天気痛も乗り物酔いも「脳の混乱」であって、天気痛が酔い止め薬で症状が抑制されるのであれば、低周波音被害者にもまたこの薬の効果があるのではないかと思われる。

酔い止め薬として市販されているトラベルミンは、平衡感覚に関わる神経を鎮静させる作用、脳の嘔吐中枢の興奮を抑制する作用があると説明がある。もし、酔い止め薬が低周波音被害の症状を軽減できるのなら、低周波音は内耳の(聴覚ではなく)平衡覚に悪影響を与えていることになり、長年、不明とされてきた低周波音と健康被害の因果関係の解明に一石を投ずることになる。 

                                 




















*
 風力発電施設に係る環境影響評価の基本的考え方に関する検討会報告書(資料編)
平成23年6月  環境省総合環境政策局

**「環境省請負業務 平成 24 年度風力発電施設の騒音・低周波音に関する検討調査業務報告書 平成25年3月」 
Alec N.Salt et al.  2012
概要:哺乳動物の聴覚は低周波数の音に対しては内有毛細胞(IHC)より外有毛細胞(OHC)の方が感度が高く、知覚できないようなレベルの低周波音にも反応するとの前提で、話声の領域に含まれるような高音域成分の有無によって低周波数の音に対する耳の感度が変化することを実験データによって示し、聴覚的に知覚されないような低周波数の音も耳は感知し、それによって人間に影響を与えている可能性があるとしている